第30話 魔獣魂石
俺たちは、息も絶え絶えに、ルナリアの街へと戻った。
ポイズントードとの死闘は、俺たちの体に、深い傷跡を残していた。
フィンの腕の傷は、深く、まだ、血が滲み出ている。俺もまた、全身が、痛みと疲労で、悲鳴を上げていた。
それでも、俺たちは、ポイズントードの巨大な死骸を、誇らしげに、魔族冒険者ギルドへと運び込んだ。
ギルドのホールは、いつものように、荒くれ者の魔族たちで騒がしかったが、俺たちが、ポイズントードの死骸を運び込むと、一瞬、静まり返った。そして、次の瞬間、どよめきが起こった。
「…おい、見ろよ!あれ、ポイズントードじゃねぇか!?」
「…まさか、こいつら、ポイズントードを、倒したのか…?」
「…Eランクのヒヨッコなのに…ありえねぇ…」
魔族たちの、驚きの声が、俺たちの耳に届く。俺は、少しだけ、誇らしい気持ちになった。
俺たちは、Eランク冒険者だけど、Dランクのポイズントードを倒すことができたんだ。
それは、俺とフィン、そして、ブルーとスカイの、チームワークの勝利だった。
俺たちは、受付カウンターへと向かい、ポイズントード討伐の報告をした。カウンターの中には、いかつい顔をしたオーガの受付係が座っている。
「…ご苦労だったな。これが、報酬の銀貨3枚だ」
オーガは、ぶっきらぼうに、俺たちに、銀貨を手渡した。
「…まさか、お前ら、Eランク冒険者だったとはな…。あのポイズントードは、Dランク相当の強さだったらしいぜ。なかなかやるじゃねぇか」
「…へぇ…そうだったのか…」
俺は、ポイズントードが、そんなに強い魔物だったとは知らず、少し、驚いた。
「…それと、ポイズントードの解体だが、少し、待ってもらえるか?この件は、ギルドマスターにも、報告する必要がありそうだからな…」
オーガは、そう言うと、奥の部屋へと、大きな体を揺らしながら、消えていった。
俺たちは、ギルドの待合室で、ポイズントードの解体が終わるのを待った。フィンは、傷の手当てを受け、少しだけ、顔色が良くなっていた。
「…なあ、セプティム。ギルドマスターって、どんな奴なんだ…?」
フィンが、俺に尋ねてきた。
「…さあ…俺も、会ったことないから、わからないけど…」
俺は、肩をすくめた。
その時だった。
「待たせたな、小僧ども」
重々しい足音と共に、部屋の奥から、一人の男が現れた。
漆黒の鎧を身に纏い、鋭い眼光を放つ、屈強なオーガ。
その圧倒的な存在感に、俺は、思わず息を呑んだ。
男は、俺たちの前に立つと、低い声で言った。
「俺がこのノクタリスギルドのマスター、ヴェルザー・ナイトメアだ」
ヴェルザーは、鋭い眼光で、俺たちを見据えた。
「お前らが、Dランクのポイズントードを仕留めたと聞いた。Eランクの分際で、なかなかやるじゃねぇか」
ヴェルザーは、少しだけ、口角を上げて、言った。
それは、彼なりの、賞賛の表現なのだろう。
その時、ギルド職員が、ヴェルザーに、小さな木箱を手渡した。
「…マスター、これが、ポイズントードから発見された、ソウルストーンです」
ヴェルザーは、木箱を受け取ると、ゆっくりと、蓋を開けた。中には、涙の雫が乾いて固まったような、小さな赤い粒が、置かれていた。
「…ほう…これは…」
ヴェルザーは、その赤い粒を、興味深そうに、見つめた。
「…魔獣魂石か…なるほど…これは、実に、興味深い…」
ヴェルザーは、魔獣魂石を、しばらくの間、見つめた後、俺に、鋭い視線を向けた。
「…小僧、お前、なかなか、面白いものを持っているようだな。また、何か、珍しいものを見つけたら、俺に見せてみろ」
ヴェルザーは、低い声で、そう言うと、俺たちに背を向け、奥の部屋へと戻っていった。
俺は、ヴェルザーの言葉の意味を、考えながら、フィンと共に、ギルドを後にした。
彼の言葉は、脅迫のようにも、そして期待のようにも聞こえた。




