表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生インプ、異世界で最強魔物メーカーへの道  作者: エピファネス
第一章 魔物メーカー、ルナリアに立つ
3/57

第3話 創造の調べ、最初の壁

「ぐおぉぉぉぉ…!」


 俺は、セプティム。イケメンインプで、最強の魔物メーカーを目指している。


 廃墟と化したダンジョンの一室を改造した、俺だけの秘密基地。


 薄暗くひんやりとした空気の中、ツンと鼻を突く硫黄の匂いが漂う。


 目の前の作業台には、魔導裁判所から支給された「魔物生成キット(仮)」が広げられている。


 黒曜石のような質感の台座の上で、禍々しいオーラを放つ魂石が、不気味に脈打つ赤い光を灯していた。


 俺は、生まれて初めての魔物創造に挑戦しようとしていた。


 目標はもちろん、最強の魔物だ。


 …と、意気込んでみたものの、生成可能なリストの中で一番弱そうなスライムを選んだのは、ほんの少しだけ弱気だったかもしれない。


 だって、失敗したら怖いし!


「でも、この雰囲気…意外とイケるんじゃないか…?」


 不安と期待が入り混じる中、俺は、床に描かれた魔法陣の中央に魂石をセットし、周囲に、魔界の沼地の泥と、腐った木の根っこを配置した。


 羊皮紙に記された呪文を、一語一句、丁寧に唱えていく。


「来たれ、混沌の淵より生まれし者…我が魔力をもって…汝に形を与えん…」


 魂石が、より一層赤く輝きを増していく。


 それと同時に、俺の体から、魔力が吸い取られていくような感覚に襲われる。


 心臓が、バクバクと音を立て、指先は、冷や汗でじっとりと濡れていた。


 しかし、次の瞬間。


「ぐわああああっ!?」


 魂石のエネルギーが暴走し、辺りを灼熱の光が包み込む。


 俺は、咄嗟に両腕で顔を覆った。


 耳をつんざくような爆音と、焦げ付くような匂いが、基地全体に広がっていく。


 しばらくして、光と音が収まった。


 恐る恐る顔を起こすと、そこには、ドロドロに溶けた泥と、黒焦げになった木の根っこの残骸だけが残されていた。


「……あれ? スライムは…?」


 辺りを見回すが、ぷるぷる跳ねるスライムの姿はどこにも見当たらない。


「まさか…失敗?」


 羊皮紙をもう一度確認する。


 手順は間違っていないはずだ。


 魔力の供給量、素材の配置、詠唱…。


 俺は、呪文を唱えるテンポを変えてみたり、ほんの少しだけ魔力の込め方を変えてみたり、試行錯誤を繰り返した。


 しかし、結果は変わらない。


 何度やっても、魂石のエネルギーは暴走し、素材は黒焦げになるだけだった。


「くそっ…何がダメなんだ…!」


 焦燥感が、セプティムの胸を締め付ける。


 額には、冷や汗が滲み、指先は、かすかに震えていた。


 最強の魔物メーカーになるという夢は、こんなにも高い壁に阻まれたのか…。


 落胆と疲労感に襲われ、俺は、力なくその場にへたり込んだ。


 その時だった。


 基地の入り口から、コツコツと足音が近づいてくるのが聞こえた。


「…誰だ?」


 俺は、警戒しながら、音のする方へと顔を向けた。


 薄暗い通路の向こうから、人影がゆっくりと姿を現す。


「おいおい、随分と派手にやってくれたみてぇだな」


 声の主は、鋭い眼光と、茶色の短髪が特徴的な、小柄なインプだった。


 彼もまた、俺と同じく、赤い肌と小さな角を持つ、れっきとした悪魔の一員である。


 しかし、ボロボロのローブ姿の俺とは違い、彼は黒曜石で装飾された、高級そうな革鎧を身にまとっている。


 腰には、鋭く研ぎ澄まされた剣が輝き、ただ者ではない雰囲気を漂わせていた。


「…誰だ、お前は?」


 俺は、警戒心を解かずに尋ねた。


「このダンジョンの主、フィン様と呼んでくれるぜ」


 フィンと名乗るインプは、ニヤリと笑って見せた。


 彼の瞳は、まるで獲物を狙う獣のように、鋭く光っていた。

数ある作品の中から今話も閲覧してくださり、ありがとうございました。


気が向きましたらブックマークやイイネ、気に入って頂けましたら

高評価宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ