第28話 沼の罠
「…ビックフロッグか。こいつは、動きが鈍いから、楽勝だろ」
フィンは、依頼書の内容を読みながら、余裕の笑みを浮かべた。
俺たちは、冒険者ギルドで、「ビックフロッグ討伐」の依頼を受注した。
ビックフロッグは、その名の通り、巨大な蛙の魔物だが、知能は低く、攻撃パターンも単調なため、Eランク冒険者にとって、格好の獲物とされている。
依頼内容は、ルナリア郊外の沼地で、農作物を荒らしている、ビックフロッグを駆除すること。報酬は、銀貨2枚。リトルボア討伐よりも、少しだけ、報酬が上がっている。
「…でも、油断は禁物だぞ、セプティム。ビックフロッグは、体が大きい分、パワーがある。まともに食らったら、ひとたまりもない」
フィンは、念を押すように、言った。
「…ああ、わかってるよ」
俺は、フィンの言葉に、頷いた。
俺たちは、ギルドを出て、ルナリアの街外れにある、ビックフロッグが生息するという、沼地へと向かった。
沼地は、瘴気が立ち込め、腐敗臭が鼻をつく、不快な場所だった。水面には、毒々しい色の藻が浮かび、巨大な昆虫や、爬虫類が、這い回っている。
「…うわぁ…ここも、気持ち悪いな…」
俺は、思わず、顔をしかめた。
「…おい、セプティム。気を引き締めろ。ビックフロッグは、水辺に潜んで、獲物を待ち伏せする習性がある。油断すると、不意打ちを食らうぞ」
フィンは、警戒しながら、周囲を見渡している。
俺も、ブルーとスカイを、戦闘態勢に入らせた。
ブルーは、プルプルと体を震わせ、スカイは、鋭い爪を立て、威嚇するように、羽を広げた。
「…よし、行くぞ!」
フィンが、先頭に立ち、沼地の中へと進んでいく。
俺たちは、フィンの後を追い、慎重に、沼地の中を進んでいく。
しばらくすると、フィンの足が止まった。
「…おい、セプティム。あれを見ろ」
フィンが、指差した先には、巨大な蛙の姿があった。それは、まさに、依頼書に書かれていた、ビックフロッグだった。体長は、1メートルを超え、全身が、泥のような茶褐色をした、ずんぐりとした体型の魔物だ。その目は、虚ろで、知能の低さを物語っている。
「…ゲッ…気持ち悪ぃ…」
俺は、思わず、後ずさりした。
「…よし、行くぞ、セプティム!ブルー、スカイ、頼むぞ!」
フィンが、叫んだ。
そして、フィンは、先陣を切って、ビックフロッグに斬りかかった。
その時だった。
足元の沼地から、巨大な影が、飛び出してきた。
「グオオオオッ…!」
それは、ビックフロッグよりも、はるかに巨大な、毒蛙だった。体長は、1メートルを超え、全身が、毒々しい緑色をした、恐ろしい魔物だ。その背中には、無数のイボがあり、そこから、紫色の毒液が、滴り落ちている。
「…な、なんだ、こいつは…!? 」
俺は、恐怖で、体が硬直してしまう。
「…ポイズントード…!?なんで、こんなところに…!? 」
フィンも、驚きの声を上げた。
Dランク相当の魔物、ポイズントード。
依頼書に載っていたビックフロッグとは、明らかに違う。
俺たちは、予想外の強敵との遭遇に、言葉を失った。
ポイズントードは、巨体を揺らしながら、ゆっくりと、こちらに近づいてくる。その目は、冷たく、獲物を狙う獣のような、鋭い光を放っていた。
「…まずい…こいつは、Eランクの俺たちじゃ、相手にならねぇ…」
フィンが、呟いた。
彼の言葉に、俺は、激しく同意した。しかし、逃げるには、遅すぎる。ポイズントードは、すでに、俺たちの目の前に迫っていた。
「…行くぞ、セプティム!ブルー、スカイ、頼むぞ!」
フィンは、覚悟を決めたように、剣を抜き、ポイズントードに向かって、突進した。
「…ああ!」
俺は、ブルーとスカイに指示を出しながら、フィンを援護しようと、火の玉を放った。
しかし、ポイズントードは、フィンの剣も、俺の火の玉も、ものともせず、巨大な体で、俺たちを押しつぶそうと、襲いかかってきた。
「グオオオオッ…!」
ポイズントードの咆哮が、沼地全体に響き渡る。
俺たちは、絶体絶命のピンチに、陥っていた。




