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転生インプ、異世界で最強魔物メーカーへの道  作者: エピファネス
第一章 魔物メーカー、ルナリアに立つ
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第1話 イケメンインプ、爆誕!

「はぁ…また失敗か」


 俺は、ため息と共に、目の前の錬金釜から立ち上る紫煙を睨みつけた。

 部屋の中は、焦げた薬草と硫黄の匂いが充満している。


「一体何が間違っているんだ…?」


 俺は、この国の宮廷魔術師の中でも、トップクラスの実力を持つと自負していた。

 だが、ここ数ヶ月、錬金術の研究は全く上手くいかない。

 王立図書館に収蔵されているありとあらゆる文献を読み漁り、考えられる限りの配合を試した。

 それでも、この新たな触媒を生み出す実験だけは、成功には程遠かった。


「まさか、俺の才能も枯渇した…?」


そんな不安が頭をよぎった時、背後から冷たい声が響いた。


「相変わらず、役に立たない研究にうつつを抜かしているようだな、カス」


 振り返ると、そこには、憎々しげな笑みを浮かべた男――

 同僚の魔術師、アルノルトが立っていた。

 奴は俺の研究を邪魔するため、ありとあらゆる嫌がらせをしてきた。

 俺の集めた貴重な素材を盗み、偽の情報を流して俺の研究を混乱させ、挙句の果てには、俺の研究成果を自分のものとして発表しようとしたこともあった。


「アルノルト…お前、一体何をしに来たんだ?」


「お前を、この宮廷から追放しに来たんだよ」


 アルノルトは、勝ち誇ったように胸を張った。


「追放…? な、なぜだ!?」


「なぜって? お前の無能さが、ついに王様にバレたからさ。 俺が王様に、お前の研究は無駄な時間と金を使っているだけだと進言しておいたのさ。お前の研究成果は? 何一つないだろう? 」


 アルノルトは、偽りの同情を浮かべながら、言葉を続けた。


「可哀想に…才能もないのに、プライドだけは高かったからな。せいぜい、路頭に迷って、野垂れ死ぬがいいさ」


 アルノルトの言葉に、怒りがこみ上げてくる。 だが、反論する気力も、体力も残っていなかった。


「…好きにしろ」


 俺は、力なく呟き、錬金釜の火を消した。


 王の命令で、俺は全ての研究成果を取り上げられ、微塵の情けもなく田舎へと追放された。


 それでも俺は諦めなかった。

 荒れ果てた小屋を修復し、わずかに残った資金で最低限の設備を整え、錬金術の研究を続ける日々。

 孤独だったが、研究だけが俺の心の支えだった。


 夜遅くまで実験を繰り返し、空腹も忘れて没頭する。

 失敗と成功を繰り返しながら、少しずつ、新たな触媒の生成に近づいている実感があった。


 しかし、運命は残酷だった。過酷な環境と不眠不休の研究が祟り、俺は病に倒れてしまった。


「せめて、あの研究さえ完成していれば…」


その時、俺の脳裏に、一つの言葉が浮かんだ。


「魔物メーカー…」


 それは、錬金術の古文書に記されていた、禁断の技術。


「もし、俺が…魔物メーカーになれたら… もっと自由に、好きなだけ研究を続けられるのに…」


 その瞬間、強烈な光が俺を包み込んだ。


「もっと研究を続けたい……!」


 しかし、視界が暗転し、俺の意識は遠のいた。


 次に目が覚めた時、俺は魂の姿となって輪廻裁判所に向かっていた。しかし、魔王と人間の間の戦争が原因で、裁判所は人で溢れかえっていた。


「こんなにも混乱しているとは……」


 絶望感が押し寄せる中、何かに導かれるように裁判所の隅にある小道を見つけた。


 小道を進むと、そこには 石造りの重厚な建物、壁には奇妙な紋章が刻まれている「魔導裁判所」という別の裁判所が現れた。

 ここは魔族や魔物が転生するための場所だった。

 人気のない受付カウンター、埃をかぶった書類の山、あくびをしている退屈そうな鬼…

 人間の魂が来ることは珍しく、裁判所は閑散としていた。


「ここなら……チャンスがあるかもしれない。」


「おい、そこの! さっさと証言台に立て!」


 鬼のような形相の裁判官に促され、俺は、フラフラと証言台へと向かった。


「貴様、生前は人間だったようだな。なぜ、魔導裁判所に来た?」


「え、えっと…それは…」


 俺は、状況を理解しようと、必死に頭を回転させた。

 どうやら俺は、死後、魔界の裁判所に迷い込んだらしい。


「貴様、生前に『魔物メーカー』の知識を得たとあるが、本当か?」


「ま、魔物メーカー…? ああ、そういえば…」


 裁判官の言葉に、俺は、前世の記憶を思い出した。


「よし、決まりだ! 貴様は、魔族のために、魔物メーカーとして転生するのだ!」


「え、ちょ、ちょっと待ってください! 俺の意見は…?」


 俺の言葉は、裁判官の耳には届かなかった。


「100年前の魔王と六柱の魔王公が討伐されてからというもの、魔族の魂は激減している。 魂を持つものは貴重なのだ。ましてや魔物メーカーの素質を持つものなど滅多にいない! 転生を拒否する権利など貴様にはない!」


「魔物メーカーがそんなに貴重なんですか?」


「当たり前だ! 魔王軍の再建には、強力な魔物が必要不可欠なのだ!  貴様には、その一翼を担ってもらう!」


 次の瞬間、再び強烈な光が俺を包み込み…


「…ん? なんだか、体が軽いぞ…?」


 俺は、ゆっくりと目を開けた。


「え…? なんで、こんなに視界が低いんだ…?」


 恐る恐る、自分の手を見てみると…


「ちょ、ちょっと! なんで、手が赤いんだ!? しかも、この小さな角は…まさか…」


 鏡に映った自分の姿を見て、俺は、愕然とした。


「俺、インプに転生してるー!!!」


 しかも、鏡に映っていたのは、赤肌で黒髪、鋭い眼光を持つ、 驚くほどイケメンなインプの姿だった。


「…ま、いっか。イケメンなら、人生楽しめそうだし!」


 俺は、持ち前のポジティブ思考で、状況を受け入れることにした。


 こうして、俺の、イケメンインプとしての、新たな人生が始まった!

数ある作品の中から今話も閲覧してくださり、ありがとうございました。


気が向きましたらブックマークやイイネをお願いします。

また気に入ってくださいましたらこの後書きの下部にある⭐︎に高評価を宜しくお願い致します。


執筆のモチベーションが大いに高まります!



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