異世界系ロールプレイング風のタイトルをめっちゃ長くしたら人目を引くと聞いたのでやってみた件。
「自己紹介しまーす、ダークエルフ230歳、普段は王宮付の迷宮案内係をやってまぁす!今日はぁ、真剣に素敵な彼氏を探しに来ちゃいましたぁ、てへ☆」
……男どもの食いつきが悪い。せっかくこっちがぶりぶりに寄せてやったのに「そこまでするの?」なんて引いているような雰囲気、エルフが来るぞ!と聞いていたのに来たらダークエルフだったなんてよくあることなのに慣れているヤツは一人もいない。それが常だからこっちも別のアプローチを仕掛けているのに、今日は負け戦だ。勝ったことがないから負け戦じゃない合コンがどんなものかは知らない。
ダークエルフちゃんはみんなのリーダーで、仕事のときすごくかっこいいんだよぉ!なんて言って幹事のハーピーが傷を広げる。今の光景を見ていなかったのだろうか、あるいはキャラじゃないのがはっきりして痛手を負うとわかってて言っているのだろうか。反対側にいるゴルゴンがアイコンタクトで止めようとしているが目を見せるとまずい体質なので常にグラサン、そもそも向こうに目が見えていないとわかっていないらしい。そろいもそろって、こいつらと来たら。本当は同じ職場にいるエルフを誘おうとして用事があるからと断られ「ダークエルフちゃんならぁ、美人だからみんな喜ぶよねぇ!」とエルフ推薦でお鉢が回ってきた。自軍はそろいもそろって知力が初期値なので向こうに期待したのに、敵軍も大して変わらない。
ライカン。敵軍の幹事。男は狼なのーよ、気をつけなさい♪と言われなくてもわかる肉食系、遊びはするが女には逃げられるタイプの典型的三枚目。狼になったときのオレの、イケメンなこと!と自慢しているが狼のイケメンがタイプの女がいるはずもなく「狼だなあ」で流される。狼の彼女を作ればいいのに、と言われたら守ってあげたくなるような可憐な女の子が好みだとこだわりを語る。狼の中に入ったら弱いんだな。
人間族。王宮で案内をしていたらよく来る「勇者見習い」といった風情、こういうのが来ては死ぬので死体を引っ張り出して生き返らすのが大変だ。「生き返らせてさしあげましょう!」なんて言い張る悪質な詐欺がたくさんあるから自分で生き返らせていると蘇生魔法が上手くなってしまった。次来るときは死なないように、毒消しを持ってくるのは基本だから!と何度叱りつけたことか。この手のボンクラはこっちが願い下げだ。
リザードマン。お金を見せて女性にイタズラする連中が多い。なにせそもそも生殖腺みたいな種族だからスケベに突っ走るとなると速く、てめーここまでしてやったのに○○を××させないのか!とダンジョンでトラブった人を何回か追い返した。大して強くもないから弱い相手とみると食ってかかり、「ちょうどいい、てめーで××してやるぜ!」と口走ったヤツを火だるまにしたことがある。魔法耐性が全然ない。蘇生させたかどうかは覚えてないけど、思い出す必要ないや。
ライカンは私がダークエルフだと知っていたから後の二人が狙い、ゴルゴンに言い寄ろうとしてサングラスに手をかけ石になったから大騒ぎしていた。人間族はハーピー相手に毛並みの話をしている。私の羽っていいでしょ、きれいでしょ!なんてハーピーは図に乗っているが傍から見たらバカみたいだ。私には、余り物のリザードマン。というか、リザードマンが最初から私狙いだったらしくべったづきで離れない。だから後の二人はこっちに行こうという流れになり、この構図。私の魅力がわかる人は少ないから、リザードマンの相手をしているのもやぶさかじゃなかったけど、ちょっと疲れた。一次会終わったら帰ろかな。そう思っていたら、リザードマンに呼び出された。
どうだい、この後二人で。いきなりそんなことを言い出すあたりがやっぱりリザードマンだなあ。明日仕事だから、って適当に流したら、手をつかまれた。払おうとしたけど、ふらつく。どうしたんだろう、そんなに酔ってないはずなのに。効いてきたみたいだな、とリザードマンが笑った。
「借りを返させてもらうぜ」
こいつ、あのときの……誰かが生き返らせて、さっきお酒に盛られた?こんな相手に襲われるのはごめんだ、まして食われるのではなくそういう襲われ方は絶対に嫌。でも体が言うことを聞かず、壁にもたれないと立てない。朦朧とする意識の中で、誰かが来たのがわかった。
「どうしました?」
……人間族だ。二人で席を立ったから、ハーピーをほったらかして様子を見に来たらしい。リザードマンって、普通は強いんだっけ。魔法使わないと勝てないってみんな言ってたような……でも、人間族の目にギュッと力がこもり、私もリザードマンもそろって飛び上がった。こいつ、ドラゴニアンなんだ。
古代種ストロングドラゴンの末裔。何人か人間族の中に血を引く者が混じっているって、聞いたことがある。めちゃくちゃ珍しいし、一族だからってみんななるわけじゃないから滅多に見れない。もちろん竜王の系譜とそんじょそこらのトカゲが比べものになるはずがなく、リザードマンは縮こまって何もできずにつまみ出された。席に戻ってライカンの石化を解除し、「飯も食ってない!」と嘆いているのをゴルゴンとハーピーに任せて牛丼屋に連れてってもらい、人間族だと思っていたドラゴニアンと帰った。全然気がつかなかった、ありがとう。人間族は「こんくらい当然」と言っていた。ドラゴニアンってすごいのね、と持ち上げると、憮然としていた。ドラゴニアンがすごいなんて、思ったことはないという。
「ドラゴンはな、いばらないからえらいんだ」
……そっか、納得。ドラゴニアンはすごくない。あんた、かっこいいのね。そう言ってやるとすごくないドラゴニアンは顔を真っ赤っかにして目を伏せた。もう一杯飲みましょう、二人で。あんた家どこ?終電なくなったら泊めてよね!夜はまだ始まったばっかりだ。
この手のタイトルつける人ってたまにいて、はたから見たらスベってるけど自分でもやっちゃうんだよなあ。てへ☆