プロローグ
ドゴォーーーン
稲妻の轟音が鳴り響く雨の中を彷徨っていた。
俺は35歳やせ細ったおっさんだ。
俺には行く宛も帰える場所もない、途方に暮れていた。
いつからだろうか俺がこんな状況になってしまったのは。
そうだあの時だ.....
あの時を思い出すと頭が痛くなる。
あの夜の日、いつものように家に帰えるとそこにはいつも元気で迎えてくれる妻と子供の姿があった。
その夜は寝汗をかくようなジメジメと熱い夜だった。
そのため、窓を開け風がとおるように寝ていた。
夜中の2時頃かすかに漏れる悲鳴のような声が聞こえた気がし、
目が覚める....
俺は眼の前の光景を理解できないで唖然としていた。
「は.......」
そこには子どもの生首が転がっていて、妻が黒い服を着ている男に首を絞められていた。
こっちに向かってくる....
気がつくと、
俺は今までにないくらいの声を上げそいつのことを殴っていた。
何度も
何度も
俺の手は赤黒く染まっていた。
周りはすでに明るくなり朝を迎えている。
俺は絶望の淵にいた。
その後のことはよく覚えていない....
気がつくと俺は刑務所の中にいた。
どうやら殺人の罪で逮捕されたらしい。
実にどうでもよかった。
あれから7年後...
俺は35歳になり、夢と希望、妻と子供、会社と家を失いホームレス生活をしていた。
生きていても仕方ない.....
楽しいことや幸せなことなんて何一つない。
今日は妻と子どもの命日だった。
「もう、終わらせようかな.....」
「もうすぐ逝くよ...君たちのところへ」
一つ心残りがあるとすれば、俺と似たような境遇でホームレス生活をしていた同じくらいの年齢の男の人がいた。
その人はなんだか毎日生きていることが楽しそうに笑っている優しい人だった。
こんな俺にも何度か声をかけてくれて気遣ってくれるような人だった。
刑務所を出た後に俺は一度橋から飛び降りようとしたことがあった。
橋の上....
目を瞑る.....
風を感じる....
......なにものかに手を引かれた。
「やめてくれぇ」
「俺にはなにもない、死なせてくれ」
「もうあきらめたんだ]
なき叫んだ......
その男は俺の顔を覗き込みこういった。
「死んで何になる、死んでどうする、すべてを失ってもなお....生きるんだ....」
俺はその言葉に腹がたった。
「お前に俺の何がわかる」
「生きろ!」
なぜだかわからないが俺は橋から飛び降りようとは思わなくなった。
引き止めてくれたことが、少なからず嬉しかった。
「ありがとう」
その男こそがホームレスの男だった。
俺はその人にもう一度お礼を言いたい。
心残りになるくらいだったらもう一度あって話をしよう。
おれは雨の中彷徨いその男がいつもいる場所へと向かった。
今思えば俺の妻と子供を襲ったのは誰なのか?
そんな事を考えながら
以前、俺が飛び降りようとした橋の上を通っているとき....
髪の毛がいように逆立つ
まるで空に浮かぶ島のように...
その途端、
俺をめがけて雷が落ちた。
俺は死んだ......ありがとうも言えずに