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足を引くキツネ2


「ウチら心配で…。」

自分たちが発光していることには誰も気がついていないようだ。

私は寝ている間に泣いていたらしく、心配で集まってきたと。

「大体さ、日直くらいであんなキレる方がおかしいんだよ。」

「そうそう。気にしなくていいからね。」

奴の悪口をいうほどに、みんなの赤色は濃く光っていった。

ーーーその視界、ちょっとだけ貸してあげる。

頭の中で、声が響いた。

先ほど花畑で聞いた女性の声だった。


数日たっても、この視界は変わらなかった。

発光する色についてわかったことは、私の味方が赤色、奴の味方が青色、どちらでもない人が黄色く光っているということだ。

また、視界だけでなくもうひとつ変わったことがあった。

「俺、ミズキほんと無理。マジで無理。」

聞こえるところで私の悪口を言われると、

「…っ…。」

すぐに涙が溢れてくるようになった。

こんな弱い自分になったのが嫌だったが、泣くたびに味方が増えていった。

それでも、奴が私に強く出る態度は変わらなかった。

どうしたら、あいつを黙らせられるんだ?


「アヤちゃん、ちょっといい?」

赤く光るアヤがこちらを向いた。

「んー?どしたの?」

「ちょっと教えて欲しいことがあって。」

内容を聞いたアヤは、少し驚いたようだったが笑顔で教えてくれた。

「ふふ、なんでそんなこと聞くの?」

「それは…まあ…。アヤちゃんは、なんであいつと仲良くできるの?」

「え?別に仲良くないよ。来るから相手してるだけー。」

この子が1番残酷なんじゃないだろうか。


金曜日の放課後。

「柳本。」

私は奴の机に、あるものをおいた。

「………は?」

理解ができないという顔。

「………あげる。」

「………なんで。」

「ビスケットアイス、好きなんでしょ。金曜日にいつも買って帰るって聞いた。」

「誰から。」

「アヤちゃん。」

「好きだ帰ってないけど…なんで…。」

目の前に置かれた好物と私の顔を交互にみる。

「あんたと話がしたい。」

「話って何。」

言いたくない。

言いたくなさすぎて、口が開かない。

ーーー頑張れ。

探るように私を見る奴。その目をまっすぐ見て、

「……………………………仲直り。」

と呟いた。


「何で、いつも私を目の敵にするの?」

「してねぇよ。」

「してるじゃん。少しでも何かミスすれば大声でみんなに言いふらしてさ。」

「直接言うなって言ったのお前じゃん!」

「みんなに言いふらされる方が嫌に決まってるでしょ。」

「だから!他のやつが気づいてお前に言ったらお前傷つくと思ったから俺が言ってやってるんだろ!」

「はあああああ!?それが優しさだとでも思ってたわけ!?ぜんっぜん違うから!!」

「教えてやってるのに何なんだよその態度!」

「あんたのは注意でもなんでもない、悪口なんだよ!その違いもわかんないの!?」

「言われるようなミスする方が悪いんだろ!?」

「別にミスしても困ってない!」

「だから!他の人がお前を責めるんだって!」

「責められてもいい!私がミスしたことで被害を受けた人から責められるなら、受け入れられる!それに私が責められても、あんたに関係ないでしょ!?」

「関係あるだろ!!友達なら!!」

奴が、泣いていた。

「言い方が悪かったのは謝るよ…。けど、教えようとしてたその気持ちはわかってほしい。」

ああ、そうか。

こいつなりに、友達として扱ってくれていたのか。

「…教えてくれてありがとう。」

私の言葉に柳本は少しだけ目を見開き、

「…ぅぅ…。」

声をこらえて泣き始めた。

柳本が少しずつ、赤く発光しはじめる。

「…次から言い方、気をつけるから。」

「うん。」

「無視すんの、やめて…。」

「わかった。」

グズグズと泣き続ける柳本と一緒に、アイスを食べる。

「泣き顔うける。」

「うるせぇよ。」

「食べ方汚い。」

「えっ。」


無性に絵を描きたくなった。

この心の中は、どんな色を見せてくれるのだろうか。

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