くいしばり 2
何もしないやつほど偉そうで、何の責任もないやつほど態度が悪い。叩くところがあれば叩く。なんの生産性もない、猿の集まり。
俺は毎日そこに出勤して、叩かれて、帰るだけの日々を過ごしている。
そんな職場が、目の前にあった。
「…最悪だ。」
さっきまでの気分を返してくれ。
「ここなら、何でも出来ますよ。」
山田が俺に言う。
「夢の中ですから。」
職場の奴らは、いつも通りに動いている。いつも通り会話して、仕事して、俺にウザイことを言う。そして俺は頭に血が上り、胃がしくしくと痛む。
向こうでウザ同期がクソ上司に話しかけている声が聞こえる。
「あの資料ですけど、木村でもいいですか?」
「え、ああ。いいよ別に。」
「じゃ、やらせとくんで。」
ウザすぎる同期こと千賀が俺の方に来た。
「木村、これやっといて。今日中。」
参考資料を机に放り投げた。
こんな細部まで再現すんなよ。
千賀の頭を掴み、全力で机にぶつけた。
「お前に命令される筋合いねぇんだよ!!!!いつもいつも、何様だよ!!!!」
そのままガンガン頭をぶつけまくる。
「俺でもって何?俺が下って意味?本当にその言い方キショいんだよ!!!」
右ストレートを叩き込む。
「見下してきやがって!俺が優しくしてやってるだけで!お前が偉いわけでも優秀なわけでもねぇよ!態度と声がでけぇだけだろ!?」
痙攣する千賀の首をしめていく。
「下を作ることでしか自分を保てねぇんだろ?だから必死に俺を下げるんだろ?認めろよ、弱いのはお前だよ!!!!」
近くでお局が、
「なんなんですか!?木村さん、やめて!」
と声を荒らげる。俺はお局の胸倉を掴んだ。
「お前こそ、なんなんですか!?何でいつも態度がデカイんですか!?そんなに偉いんですか!?悪気がなければ何をどんな言い方してもいいと思ってるんですか!?今までの人生で何を学んできたんですか!?」
「何ですって!?」
そのうるさい口に渾身のアッパーを叩き込む。
天井にめりこむお局。
「とり抑えろ!!!」
俺を取り囲むように、俺をいつも嘲笑してくる同僚達が並んだ。
全員まとめて右ミドルキックでなぎ倒す。
そして残ったクソ上司をにらむ。
「こいよ。」
「木村…。これは庇えないぞ。」
「最初から庇う気なんてないだろ?いつだって、適当な指示出して何かあれば俺の責任。こっちの事情なんて見向きもしない。いつも言うことがコロコロ変わる。…あんたなんてもう信用しない。」
いつの間にかポケットに入っていた銃をとる。
クソ上司に銃口を向け、引き金を引いた。
いつの間にか部屋は和室になって、職場の奴らは消えていた。
「お茶をどうぞ。」
山田がお茶を俺の前に置く。
飲むと、スッキリとした甘いお茶だった。
飲めば飲むほど次が欲しくなる、不思議な風味だ。
「うめぇ…。」
たくさん動いた後の心地良い疲労感が手足に残る。
頭を空っぽにして、自由に行動したのはいつぶりだろうか。
毎日、毎日嫌な気持ちを押し殺しながら働いて、休日もイライラして、自由なんてどこにもなかった。
お金を稼いでも稼いでも、将来不安から貯蓄するばかり。
楽しいことなんて何も無い。
「…なんかもう、どうでもいいわ。」
1週間くらい、旅行に行こう。
体調不良で起き上がれない等、理由をつけて仕事を休もう。
それで解雇されることはないだろう。
今まで真面目に勤務してきたんだ。少しのウソくらい、バレないさ。
そう思えば急に楽になった。
今までが真面目すぎたのかもしれない。
ゆらゆらと、眠気が身体を巡る。
心地良いその揺れに身を任せて、瞼を閉じた。




