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くいしばり

イライラする。

イライラする。イライラする。イライラする。

腸が煮えくり返るという表現を今体感している。

気持ちよく眠ったはずなのに、日中に起きた嫌な事柄を思い出して日が昇る前に目覚めてしまった。

最悪だ。

くいしばっていた歯が痛い。これで歯が割れたらどうしてくれよう。アイツらに賠償請求出来たらどんなに良いか。

誰も彼もが、自分が有能なら他者に高圧的に出てもいいと思っている。自分が有能だという態度が透けている。 自分の有能さを誇示し、俺を見下すことで悦に入っている。悦に入っているという自覚すらなく俺を踏み潰しているだけ。俺をつるし上げて楽しいか?それになんの意味があるんだ?

ギリギリと歯が音をたてる。

いけない、また食いしばってしまった。

このままでは割れてしまう。

疲労が溜まっているのにゆっくり眠ることすら出来ない。

この世にもしも神がいるのなら、どうしてあんな奴らが野放しなんだ?

いけない、この思考に支配されていては睡眠など出来ない。

眉間によった皺をほぐすように深呼吸する。

柄にもなく買ってみたラベンダーのアロマを嗅ぐ。

おさまらない怒りと共に、再び眠りについた。


気がつくと、変な世界にいた。

割れた地面にマグマが流れる地獄のような場所。

「ようこそ。」

金髪の男が現れた。男は胡散臭い笑顔で俺に近づく。

男は、ここは夢の中だと言った。何をしても許される世界だと。

望みを言えと言われれば、そんなのひとつしかない。

「美女とヤりてぇ」

次の瞬間、男は消えて変わりに目の前に若い女がいた。

火山の噴火音をBGMにして、美女の柔らかい肉を蹂躙する。

「次。」

呼べばいくらでも好みの女が出てきた。

熱く固い地面と、女の柔肌。この差が妙に生々しい。


「気は晴れましたか?」

気持ちよく放心していると、またあの男が現れた。

「少しはな。…ここが俺の夢の中なら、お前は誰だ?」

「私は山田と申します。」

「名前じゃなくて。俺の夢なら、支配人は絶対に女にする。」

俺の言葉に山田は笑った。

「ここはたしかにあなたの夢の中です。しかし、あなたの頭の中ではない。数ある夢の世界の1つにあなたが迷い込んできた、あるいは導かれてきた。私はそこに配置された案内人。そうお考え下さい。」

「俺の夢じゃないってことか?」

「いいえ、あなたの夢の中ですよ。」

男の言っていることの意味がわからなかった。

「行きましょうか。」

「どこに?」

「カンタン長屋へ。」

マグマの脇を抜けて、砂利道を歩く。

しばらくすると景色が変わった。透明な四角い箱が浮かぶ山や、色水が混ざりあって別れてを繰り返す空。歩く場所によっては自分にも変化が出るようだった。足が縮み、背中は伸び、下顎が肥大化して目は飛び出る。感覚がおかしくなりそうな世界だ。

そして、長屋が見えてきた。

【邯鄲長屋】とかかれた看板がたてかけてある。

男は3番目のドアを開け、家の中に俺を招き入れた。

足を踏み入れてすぐに後悔した。

「…は??」

なぜ俺の職場がここにあるんだ。

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