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視線嫌悪2

ピピピッとアラームの音がする。

見慣れた天井。

あれは、夢?

ーーー死んだって、苦しみから逃れられるわけじゃないんだよ…。

ゲンの苦しそうな声が蘇る。

抱かれた感触も、まだ背中に残っている。

「はぁ……。」

あんな夢を見るなんて、私は相当追い込まれているのかもしれない。

簡単に朝食を済ませ、身支度を整える。

誰の視線も集めないように、地味な服を何枚も重ねる。

制服自由の高校を選んだのもこのためだ。

普通のシャツは、着られないから。

ーーー死が救いでないのなら、何を希望に生きたらいいの?

好きな服も自由に着られない。

それでも道を歩けば嫌な視線に晒される。

何が楽しくて生きているんだろう、私は。

『好きなの着ようぜ?』

頭のなかにゲンの声が響く。

「…え…?」

『なんでわざわざ野暮ったい服着るんだ?逆に目立つぞ。』

「ゲン…?どういう状況…?」

これも夢の中なの?

『ほら!好きなの選ぼうぜ!』

「いや、このままでいいから…。」

部屋から出ようとすると、

ーーードンドンドン!

ドアを外から叩く音がする。

「…っ!」

普通に怖い。

絶対に開けてはいけない気がした。

ーーードンドンドン!

どうしよう。

ーーードンドンドンカッドンドンドンカッ!

太鼓の達人のようなビートを刻みはじめた。

『服は武器。好きな自分に彩る装備。』

ゲンの歌が重なる。

『今日の自分を強くする。身をかため、心を守る。』

うずうずと、オシャレをしたい気持ちが騒ぐ。

『好きな服じゃなきゃ守れない。選べよ服を。選べよ今日を。』

こんなダサい服、本当は着たくない。

『生きようとせにゃ、生きられん。』

ワンショルダーのふわふわニット。

ミニスカートに、モコモコのコート。

やっぱりオシャレはテンションあがる。

「…ありがとう、ゲン。」


姿勢を伸ばし、街を歩く。

いつも以上に視線を感じる。

「…生きようとせにゃ、生きられん。」

さっきの歌を口ずさむ。

「…頑張って生きるか!」

今日は帰りに買い物に行こう。

楽しく生きるための武器を買いに行こう。

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