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トムのウサギ

作者: あんなんな

ある日トムは、お父さんとお母さんからウサギのぬいぐるみを買ってもらいました。

お風呂に入る時を除いては片時もぬいぐるみと離れませんでした。


トムの部屋からは毎日ウサギとお話をする声が聞こえてきます。

不思議な事に、トムが寝た後も部屋からは何かが動く音がするのです。

お祈りのような声も聞こえてきます。

お父さんがドアを開けても何もいません。

両親は奇妙に感じましたが、音がするだけなので何もしませんでした。


やがて、トムが大きくなってもウサギとはいつも一緒にいました。


学校でトムをバカにするお友達がいても、トムはウサギがいれば気にしません。


やがて、学校にトムのお友達はいなくなりました。

学校にいなければ、家にだっていません。

ウサギを除いては。


「あなた、トムが心配だわ。大きくなってもぬいぐるみが手放せないのよ」

「何か悪いことをしている訳じゃないんだ。これからも愛を持ってトムに接していこう」


お母さんと、お父さんはトムに友達がいないのを大変心配していましたが、トムは優しい、いい子で、2人の宝物です。

トムが嫌がるのに無理矢理ぬいぐるみと離すことはできません。


しばらく経った日の朝、お父さんがベットの上で亡くなっていました。

流行り病でした。

お父さんのベットの上にはトムのウサギがいました。


トムのお父さんが亡くなって、お父さんの弟が家に滞在しています。


叔父さんは、トムがウサギを抱きしめているのを見ると、ついカッとなってウサギをトムから奪い取って、床に叩きつけました。

叔父さんは、心からお父さんを愛していたので仕方なかったのでしょう。

後から叔父さんは、トムとウサギに謝りました。


しばらくして、叔父さんも亡くなりました。

叔父さんも流行り病にかかってしまったのです。


お母さんは、ウサギの事が怖くて仕方ありません。

お父さんと叔父さんが亡くなったのがウサギのせいだと思っているようです。


トムがウサギを持っていると怖くて泣いてしまうので、お母さんの事が大好きだったトムはウサギをクローゼットの奥深くに閉まって置くことにしました。

扉を閉める前に、しっかりとウサギの頬にキスをしました。


ウサギと過さなくなったトムは、学校でお友達が沢山できました。

しかし、トムはお母さんの助けになるようにと、学校を辞めてお母さんのお手伝いをするようになります。

トムは友達は好きだけど、ウサギ以上に好きにはなれなかったので、これでいいのです。

トムはお母さんをとても大事に思っていましたが、ウサギの事は忘れた事はありません。

だって、同じ位大切なんですもの。


何年か後の冬、トムは流行り病にかかってしまいました。

お母さんは苦しむトムの姿を見て嘆き悲しみました。

寝る間も惜しんでトムの看病をしましたが、体力の限界まで達したのかトムの手を握りながら一緒に眠ってしまいました。


しばらく微睡んでいましたが、トムの顔の辺りでゆらめく淡い光の瞬きで目を覚まします。

そこには金色の豊かな髪のとても美しい人が立っていました。

男の人か、女の人かも解らない、不思議な美しさでした。

その人の身体がぼんやりと光っているのです。

「いったい、誰ですか」

お母さんは、慄き、声をあげます。

その人は男性とも女性ともつかない声で静かに答えました。

頭の中に声がするようです。

「私の門は正しく生きていた方達に開かれます」

お母さんは、その人の声を聞くと懐かしさと、畏怖を感じ、思わず跪きます。

「今日は、私に惜しみない愛とキスを与えたトムを私の城に招待します。私を彼に与えたあなた方とその兄弟も一緒に招待しておきました。」



翌日心配で、家に来たお医者様が亡くなっている2人を見つけました。

2人はとても穏やかな顔で、トムの枕元にはウサギが置いてありました。


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