ブーゲンビリアは咲いているか
急に振り向いた不自然なほど自然な淡いメッシュが入った彼女を見た瞬間、まるで水滴が落ちるかの如く恋に落ちたんだ。
きっと漫画やドラマのような
情熱的で
空想的で
理想的な恋じゃなく
退廃的で
妄執的で
現実的な恋だったとしても
その思いは変わらない、変えられない。
ある日の夕方に何となく、本当に思いつきで屋上に向かった僕は、柵の向こう側で背中を向けて寄りかかる君を見つけた。
そんな光景を見たら声なんて出るはずもなく、せめてものとして差し出した右手が行く先を無くす。
その瞬間だった、彼女がこちらを見たのは。
目を合わせた瞬間に恋に落ちたんだ。まるで重力が逆転して赤く染まり出した空へと放り出されるように。
こちらを見る彼女は何かを映しているようで何も映していない。
伽藍堂になった眼にはくすんだ僕が写っていて、君の記憶には何も残らないのが分かったんだ。
そこからの僕の行動は早かった。
今までのような限りなく有限な時間をドブに捨てるような生き方じゃなく、毎秒毎秒を削るように自分を磨く事に当てていった。
その結果か、周りにはこれまでとは対照的に人の笑顔で溢れ、誰もが信頼し、隠している恋慕を伝えるレースが始まるような、そんな素敵な人物に生まれ変わった。
なぜそんな他人事かって?
勘違いしちゃダメだ。僕は色んな人に好かれたいとか頼られたいなんて微塵も思ってない。
僕は彼女の瞳に映りたいだけなんだ。
周りの人の笑みは下劣に思えるし、信頼なんて糞を投げつけられてるのと変わらないし、告白なんて吐き気すら催す。
誰も邪魔しないでくれ、僕が彼女へ送るラブレターの準備を。
彼女と出会った日以来夕方に屋上に出なかった日はない。自分で言うのもなんだが僕は一途なんだ。
周りで飛び交う友人たちに彼女を聞いても誰も見たことなんかないっていう。
挙句の果てには疲れてて幻覚でも見たんだよなんて。
そんなはずは無い。あの衝撃を、あの感覚を夢だと言うのならば僕は夢の中で生きていく。
彼女を探していたある日校舎裏にひとつの花束が置いてあることに気づいた。
その花はあの日見た彼女のメッシュのように儚く淡い藍色で。
何故置いてあるのか、誰が置いたのか、なんの花なのか。どこを調べても誰に聞いても答えを知らない。何故だ、彼女へ繋がるかもしれないのに。
まだ君の目には映らないのか僕は、君の声を一言聞ければいい。君に一言だけ伝えるだけでいいのに。
ふと屋上を見上げるとあの日と同じ、彼女が校舎の縁に立っているのが見えた。
彼女への思いが通じた!届いた!あとは君への愛を伝えるだけだ!
急いで階段をのぼり、ドアを開けた先には前回とは違ってこちらを見ている彼女がいる。
瞳にはくっきりと僕の姿が映っていて。
彼女と何を話したかなんてここに書く気もない。理由?2人きりの秘密ってやつさ。
僕達は抱きしめあって堕ちていく。
ニュートンが発見した法則なんかよりも自由に。
イカロスのように優雅に。
堕ちていく。
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また別作品も短編で書いていますのでそちらもどうぞ