華視屋流々とはこのような人間ですぞ
投稿したと思ったらできてなかったことに気がついた(はらきり)
我は生まれつき好奇心が旺盛であった。特に女の子どうしの噂には目が無く、東にできたてのカップルあれば行って調べて撮影してやり、西に倦怠期のカップルあれば行ってその真相を調べて撮影してやり、南に別れそうなカップルあれば行って理由を調べて撮影してやり、北に喧嘩しているカップルあればケンカップルシチュもたまらんですぞと鼻息を荒くしながら撮影する。まさに雨ニモマケズ風ニモマケズの精神で、カメラを手に東奔西走南船北馬していた。
中学からは星花女子学園に入学したが、そこは我にとってパラダイスそのものであった。女の子の数だけ恋物語があると言っても言い過ぎできないこの学園。我はまず写真部に入った。写真部員であればカメラを持っていても怪しまれないからだ。写真部では風景や日常の一コマを撮影するその一方で、百合の花を咲かせる子たちの情報収集と撮影に勤しんだ。これが我の星花女子における「孤高の情報屋」のキャリアの始まりであった。
だが入学して一ヶ月経った頃に最初のヘマをやらかしてしまった。バスケ部のAとハンドボール部のBがつきあっているという噂を聞いた我は調査に赴き、部活の時間はもちろん、昼休みも登下校時も足を運んだ。
しばらく調査を続けて、ようやく有力な証拠を掴んだ。手を繋ぐ二人。愛をささやきあう二人。その姿をカメラに収めて声をボイスレコーダーに残そうとしたところで、相手に気づかれてしまった。そして我はそのまま風紀委員に突き出されてしまったのだ。
当時の風紀委員会に櫻井莉那という名物委員がいた。この人はいつも黒いマントを羽織って邪神なんちゃらと名乗っていた、いわゆる中二病患者であったがどういうわけか後に委員長まで務めあげた。最初にお世話になったのがこの中二病患者だったのは今でも強烈な記憶として残っている。そんな痛々しいお方に冷ややかな目で諭されたことも。
「入学早々にストーカー行為とは何と情けない……」
「ち、ちがいますぞ。我はちょーっと、あの噂が本当なのか付きまとっていただけで……ストーカーをしていた訳ではありませんぞ」
「人、それをストーカーと呼ぶ。あと『我』という一人称を使うでない。我とキャラが被るではないか!」
などと理不尽なことも言われはしたが、このときはとにかく謝った。初犯だからひたすら謝れば大目に見て貰えると踏んでいたのだが、今思うと甘すぎる考えであった。
「カメラは没収する!」
「ぬぁーっ、ごめんなさい! ゆるして、我の好奇心が全て悪いのだー! だから、カメラ没収だけはゆるして、お願いだから!」
「だめだ。ボイスレコーダーもデータ消去の上没収する。闇に滅せよ!」
櫻井先輩がそう言って音声データを消去してしまった瞬間、我の頭の中で何かが弾け飛んでしまった。
「うっ、う゛っ、う゛ああああああああんッッッッ!!!!」
「うえっ!?」
「うぁぁぁぁぁッッ。ガメラがえじでよぉぉぉっ!! どうじでぞんな酷いごどじゅるのぉぉぉ、ぅ゛ァァァァッッ!!」
「あ、あわわわ、泣くでない。泣かないでったら。ああ、どうしよう……」
「う゛ああああああああ!!!!!!」
後から聞いた話では、一時間以上泣きっぱなしだったらしい。結局程なくしてカメラとボイスレコーダーは手元に戻ってきたが、データは綺麗サッパリ消されていた。
そのときの悔しさ、悲しさをバネに、我はもっと調査スキルを磨く努力をした。小さい体を駆使して狭いところに入る。ほふく前進で素早くターゲットに近づく。一方で勉強や部活を真面目に取り組んで教師の歓心を買うようにした。万が一捕まっても教師がかばって減刑してくれるからだ。おかげで過去14回捕まったが停学以上の処分を喰らったことはないし、優秀な生徒のみが住むことを許される一人部屋の菊花寮にも住み続けられている。
我はこれまで数々の女の子たちの百合物語を記録媒体に残してきた。残りが決して多くない星花女子学園での生活、巣立つ前にもっと百合物語をカメラやボイスレコーダーに刻み込んでやるのだと息巻いていたのだが、今年、かの者が入学してきてから算段が大いに狂ってしまった。
須賀野守。女軍曹の異名を取るこの風紀委員がいなければ我の生活はもっと百合に満ちていたかもしれない。
お借りしたキャラ
櫻井莉那(五月雨葉月様考案)
登場作品『ユースティティアにおまかせあれ!』(五月雨葉月様作)
https://ncode.syosetu.com/n2470ef/




