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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

獣奇(しょーとしょーと8.5)

作者: 1682

ちなみに今作も結っっっっっっっっっっっっっっっ構(ものま)が出しゃばります。


気を付けろよ!!出しゃばりって言うのは1番怖いんだからな!!


正直調子に乗りすぎた。反省も後悔もしている。だが編集する気は無い(ゴミ)


出しゃばりすぎても怒らないでね!


怒ったら私(の心)がもれなく悲鳴あげて割れるよ!ガラスのハートだからやめてあげてね!


ちなみに番長は書いた日だけで足の小指3回角にぶつけたよ!

みんな小指は労わろうね!


個人的な意見だけど自覚するのに1番時間がかかるのって不思議の国のアリス症候群だと思うんだよなぁ(小並感)(だからって出しゃばっていい理由にはならないぞ番長!)


あと今回出てくるものま視点ものすごくシリアス多めになります。病み期かよ。知らねーよこのクソッタレ!!!!!!ココ最近ずーっと嫌なことあったんだよこのアホンダラ!!!!!!


シリアス成分多めだから突っ込むところも後半は少ないよ。


以上の事を理解したらにゃんちゅうのマネをしてから読もうね。


いくよ?せーの!




「「「「に゛ょ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ん゛」」」」


✄✄✄✄


やづゆの奇病が完全に治療されたかもしれないと言うことを研究員から聞いた。


変な建物を見たあの日から10日ほど過ぎた。あの日以来、変な建物は見なかった。


というよりやづゆに1人で出歩いていたところを地味ーーーに心配されていたようで、その日から寝てないと耳元で下ネタを囁くというとんでもない事をされた。今は懲りて大人しく( ˘ω˘ ) スヤァ…することにしてる。


あ、たまににゃんちゅうのマネして皆の睡眠狂わせてるよ。楽しい!!私が俗に言う天才です!!!でもこの前「うっせぇわ!!!!!!!!!」ってまれみにめっちゃ怒られたけどね!知らねぇ!私はやる狼だ!!



や「…自殺衝動、無くなった…かも」


む「ほんと?治った感じ?良かったね…」


聖母みたいな感じで笑うな!!!眩しいわ!!!!でも気持ちはわからんくもない。

むらはは被害者側だもんなぁ…


****


むらは side


あれは、あの日から1日経った位かな。


ま「やづゆちゃん、なに、して…」


や「見て分かんない?自殺しようとしてる」


ま「駄目だよ!しちゃだめ、明日いい事あるから!!!」


や「いいことがあっても無くても同じ。今したいの。今したら、絶対私は幸せになれるはずだから。これ以上ない幸せを味わいたいんだ!!!」


狂気に操られたかのように笑うやづゆの顔は恐ろしかった。


手に持っている包丁が怪しく光る。


…私もその場にいたけれど、ショックで何も言うことが出来なかった。


ものまはその場に居なかった。丁度カウンセリングの時間だった。


お願い、やめて。そう言おうとしたけど、声が出ない。突っかかってもどかしい。


汗をかきながら説得を繰り返しているまれみちゃん。


へたりこんで何も言えない私。


…正直、不甲斐ないなと思ってしまった。


や「幸せにさせて?ね?」


そう言いながら包丁を胸に突き立てたやづゆを見た。


瞬間、私は何かに襲われたかのように飛び出した。




_____腕に鋭い痛みが走る。


や「___え」


ま「むらはちゃん!!!」


や「むらはちゃん、なんで…痛いのに…」


痛みなんて関係ない。友達に死なれるのはごめんだ。

咄嗟に彼女を抱きとめた。


その衝撃で、胸に刺さろうとした包丁は私の腕に刺さった。


む「っ……………ぐっ」


痛くて声が出ない。

目から金平糖が溢れ出した。

でも、これだけ言おうと思った。


む「大、丈夫…死ななくて、良かった……」


霞んでいく視界の中、やづゆが泣きそうな顔でこちらを見ていた。


_その後、私はまれみちゃんによって救護室に運ばれた。

幸い深くは刺さっていなかったらしい。

でも暫くの間救護室に隔離される事となった。


救護室に入院(?)してた3日間、皆が私に色々なことをしてくれた。


まれみちゃんは包帯を変えたり、リンゴを剥いてくれた。


ものまはおすすめのドムサブユニバースの作品を見せた(私のスマホを使って)。


やづゆは一緒に歌を歌ってくれた。


でもやづゆはあの後かなり落ち込んだのか、ほかの2匹より来る回数は少なかった。


でもあの時にあった事のお陰で、自殺行為はあの後一切起きていないとまれみちゃんから聞いた時は本当に良かったと思った。


別に自分が死のうが、どうでもよかった。


最優先することは、皆の奇病を治すことだったから。


やづゆの奇病が落ち着いてきた。


でも、それより驚いたことがあった。


やづゆに聞いた話だった。



なんと、まれみがあの時溢れ出た金平糖を食べたというのだ。


やづゆによると、私を救護室に運んだ後、必死になって砂だらけの金平糖を集め、一気に食べたらしい。


涙を流しながら、ジョリジョリと音を立てながら、一心不乱に金平糖を食べている姿は、やづゆにした事の大きさによる多大なショックを与えたようだ。


私から出た金平糖を食べた。つまり、それは



私の奇病が治ったってこと。



その証拠に、前はすぐに忘れていたような記憶がすぐに思い出された。


忘れていたことを一気に思い出した感覚は、まるで走馬灯を見ているようだった。


それに、あの後感動モノの映画を見たけど、涙は透明だった。


でも、治ったってことは、ここに居られないということ。


…私はもう患者じゃない。“用済み”の人なんだ。


ま「もうちょっとで、ここ出ていかなきゃ行けないの?」


む「うん…ごめん。皆の奇病が治るのを見届けていたかったんだけどな…」


ま「そっか…でも治って良かったじゃん。私も頑張って治さないとなぁ」


む「治ったのはまれみちゃんのお陰だよ。ありがとね」


頭を撫でる。照れくさそうに笑うまれみちゃん。角は禍々しくそこに佇んでいる。

星の砂。それさえあれば…


この子の奇病も、治るのに。


悔しくて、悔しくて。研究員がすぐに見つけられる訳ないって。


他の患者も、治さなきゃいけないのに。私達にだけ、構える訳、ないのに。

代わりに見付けたい。


む「…治したいなぁ。」


こっそり呟いたけれど、まれみちゃんには聞こえてなかったみたいで、見つめると「どうしたの?」と言って二へっと笑うだけだった。



その日から暫くして、研究員が救護室に来た。

話の内容は随分素っ頓狂なことだった。


私に、皆の奇病が治るまでここにいていいと言ったのだ。


多分、やづゆの奇病が治りかけた事から、自分には他の奇病を治りかけさせることも出来ると思われているのだろう。


む「…いいよ。あと1人でしょ。治してあげるよ。」


挑発するように笑ってやった。上等だ。


研究員も、「やってみろ」というふうに口角を上げている。


絶対に治してやる。


星の砂を、見つけてやる。


✄✄✄✄


やづゆ side


や「自殺衝動、無くなった…かも」


む「ほんと?治った感じ?良かったね…」


笑いかけられながら優しい声で言われる。

…私は、むらはちゃんに本当に酷いことをしてしまった。


こんな事言うべきじゃないだろうけど、むらはちゃんに包丁を刺したから、私の奇病は落ち着いた。


や「…………」


後悔してる。でも有難いとも思ってる。


ま「やづゆちゃん…」


心配そうに見つめられる。


む「やづゆはここから出るの?」


や「ううん、出ない。まれみが治るまでここにいるよ。」


む「そっか」


や「あ、ごめん、番長も、ね。」


も「存在消すなよ!!つーか私奇病今の所ないし」


む「面白くないなぁ」


ま「サングラスかけないと死ぬ病じゃないの?」


も「それだったらもうとっくに死んでるよ!!!!!!!!!」


おお、流石番長。キレキレなツッコミだ。


場に笑いが起きて、雰囲気も良くなる。


奇病、治ってよかった。あのまま進行していたらと思うと鳥肌が立つ。鳥だけど。


む「あぁ、そういえば…私研究員に頼んで今星の砂を調査させてるんだよね!まれみちゃんの為に」


ま「え、私の為に!?」


む「人の病気治すためなら当たり前でしょ。ちょっと研究員を釣っただけだけど。」


や「さっすがむらはちゃん!イッケメーン!」


ライオンのリーダーシップもあって、部下を従えることに関してはむらはちゃんの右に出る奴はまずいない。


まれみは大きな目をぱちくりさせたあと、花が咲くように笑って


ま「ありがとう!」


と。可愛いねまれみ。


や「星の砂かぁ。早く見つかるといいねー」


ま「そのやりとり前もやったよ」


ふふっと笑われてしまった。


も「あとまれみだけじゃん!頑張れー」


でも多分、1番問題なのは番長。奇病が出ていないことがおかしい。


ここに来たからには、必ず何かおかしい事があったはず。


や「番長、最近変なこと無かった?」


も「特に無かったよ。」


や「ほんとに?熱出たりしてない?」


も「してないって。なぁに?やづゆちゃん。もしかして番長のこと心配してくれてるんでちゅかぁ?」


うざいトーンでニヤニヤ笑う番長。きもっ、シンプルにキモイ。

足100°開いてやっとなくせに。この前開脚してたら足つって30分ぐらい動けなかったくせに。


や「うざいよ番長」


も「真顔で言わないで」(´;ω;`)


番長もまれみのも見つけてあげないとなー。…ちょっと面倒臭いかも。


でも自分が治ったからには、他の人も治さないと、これからが大変だし。離れ離れになるの嫌だし。


でも1番はまれみ。本当に大丈夫かな。


や「まれみ、何かあったら私に言ってね。絶対だよ。研究員は駄目だからね。」


ま「分かってるよ。ありがとう、やづゆちゃん」


む「番長ー!!!!早く奇病発症しろよ!!焦らさないで!」


も「焦らすも何もそもそも奇病が無いんだってば!!!」


わちゃわちゃしてる。この空間が多分1番楽しい。


カオスな空間でも十分ノリが続く。


治ってもまた、集まろうね。

そんな事今言える訳じゃないけど。

これくらいなら言ってもいいでしょ。


や「…絶対治そうね」


そしたら、みんな、「うん!」って言って。

お互いがお互いを励ましあう。明日にはここを、皆で出られる事を祈って。


✄✄✄✄


まれみ side


やづゆちゃんとむらはちゃんの病気が治ってから、1週間の時が過ぎた。


相変わらずものまちゃんは発症せず、昨夜も3時ににゃんちゅうのマネをして私に怒られてた。


そして、私の奇病は悪化していった。


私はほぼ無気力状態になっていた。

飛ぼうとしても、飛べない。


力が出ない。

しかも、動くことすら難しくなった。


だからずっと寝たきり。3匹は私を必死に介抱してくれる。


段々症状が酷くなっていく私を諦めずにずっと見てくれる。


みんな優しいなぁ…


も「まれみ、これ食べなさいな」


ものまちゃんがリンゴをすりおろしたものを私に食べさせてくれる。


飲み込む時にあまり力がいらないから、この心遣いは凄く嬉しい。


角はかなり長くなってきた。自分の腕くらいの長さがある。


葉っぱも生い茂って、鳥の巣が作れそうなくらい。


星の砂はまだ見つかっていない。


…死にたくないなぁ。


でも、先週末にむらはちゃんとやづゆちゃんが痺れを切らして、


む「もーいい!!!私達で探す!!!」


や「まれみは寝てなさい!!」


と病院が震えるかと思うくらい大きな声で叫んですごい勢いで病院を出た。


…壁が壊れたような音がしたけど、気にしないことにした。


ちなみにこんな会話もあった。


も「ワシも探す!!!」


む「あんたまだ発症してないのよ???無限の可能性があるのに外出ちゃダメです」


も「やー!!!!」


や「やー!じゃない!番長はまれみの看病してなさい!」


も「( •᷄ὤ•᷅)」


や「うまい棒コーンポタージュ味」


も「Σ(°д° )」


む「10本セット」


も「やります」


や「よし」


番長チョロいよなぁ。直した方がいいと思うよその性格。


この会話をしてから4日たったけど、2匹が帰る様子はない。


見つかってないのかな。


ものまちゃんは両手の指を組んで、ずぅっと祈っている。またか。


ま「また祈ってる。」


も「ううん、あの2匹に呪いかけてるの。声帯がにゃんちゅう型になる呪い。」


しれっとそんなこと言っちゃう。嘘つき。本当は心配なんでしょ?


2日前から耳と尻尾が垂れ下がってる。今もちょっとしゅんとしてる。


ま「心配しなくても、2匹は大丈夫だよ。タフだもん。きっと見付けて、帰ってくるよ。」


やっぱり図星だったのかな。少し目を見開いた後、俯いた。

髪の毛の隙間から見える顔はほんのり赤かった。意表を突かれて恥ずかしいのかなぁ。


ちょっとは素直になればいいのに。


も「………………………うん。」


しばしの沈黙の後、小さい声で頷かれた。照れ隠しなのか、ものまちゃんは首の後ろを掻きながら「お昼ご飯作ってくる」と部屋から出ていった。


…お願いだからキッチンは燃やさないでね。


前にこんな会話もあったっけか。


や「番長…それ何作ってんの…????」


も「スパゲッティ」


や「なんでパスタが黒くなってんの…??」


も「茹でてたら黒くなった」


む「コンロの火が燃え移ったのか…????」


も「もしかして焦げてる?…まぁ食べれりゃいいのよ食べれりゃ」


(試食)


も「お゛ぅ…………」


む「芸術的な味する…」


や「ぐふぅ………あ、番長コンロの火止めた…?」


も「あ」


その後危うく火事になりそうだったのはいい思い出。


…思い出に浸ってたらちょっと眠くなってきちゃった。

寝てしまおうかな、と思って目を閉じた。


それと同時に、大きな声が聞こえた。


も「お、お前ら!!!!!!」


や「へっへーんだ!星の砂、見つけてきたよ!」


む「やっぱり研究員は駄目。」


星の砂、見つけてきたの?


バタバタと足音がする。こっちに近付いてくる。


ドン


勢いよくドアを開けられた。


む「まれみちゃん!見つけたよ、星の砂。」


差し出されたのは、キラキラ光る砂がぎゅうぎゅうに詰められている透明な水色の小瓶。


や「持ってみなってぇ、まれみ!」


やづゆちゃんに手を持たれ、手のひらに小瓶が落とされる。


キラキラ光る砂を眺めていたら、頭部に激痛が走った。


ま「ぁ、あ゛ぁ………!!!!!!いだぃい………!!!!!!」


む「まれみちゃん!?」


や「大丈夫!?」


も「ここまで来てとか有り得んぞおい…!」


30秒位、激痛は続いた。

皆は焦って部屋の中をバタバタしていた。

終わったと思ったら、頭が少し軽くなっていた。


…角が、カランと落ちる音がした。


思わず涙が溢れた。


ま「や、やったぁ………」


や「ウェーイ!まれみの奇病が治ったぞ!」


む「良かったねーまれみちゃん!」


も「(無言で拍手)」


取れた嬉しさの勢いで、皆に抱きついてしまった。


でも優しく受け止めてくれた。


治ったよ、ねぇ。


治ったんだ。死ぬ心配なんかないんだ!


心から嬉しいと思ってる。アドレナリンぶっぱなしてる。


ここまで耐えた自分と、星の砂を見つけてくれたやづゆちゃんとむらはちゃんと、看病してくれたものまちゃんに感謝しなきゃ。


ま「みんな、ありがとう…ほんとに、ほんとにありがとう…!!」


4匹でいると、自然と心が軽くなる。

今日は人生で1番心が軽い日だなぁ…


✘✘✘✘


ものまside


やづゆも、むらはも、まれみも眠りについた午前3時。


やっとあの建物を調査しに行ける。

そろっと病室から出て、また周囲をふらつく。

大丈夫。次はヘマしない。


しばらくぶりに見ると、建物は前より大きくなっていた。


もう一度中に入りたいと思ってた。


また立て付けの悪いドアを開けて中に入る。


また前みたいに閉まらないように、大きめの木材を挟んでおく。


ケーキは、食べた。弄られてもいい。だってあったんだもの。食べて何が悪いのかしらァン????


不思議にも、味はしなかった。ん?ケーキバースで言うところのフォークかな??あれ?ここそんなパラレル要素持ち込んでいいところじゃない気がするんだけど…


紅茶も味はしなかった。紅茶は苦手だけど、全部飲むことが出来た。

味がなければこっちの勝ちだ。


1階建ての建物で、2階はなかった。

怪しそうなタンスの中を調べた。


も「ヒッ………………!!!!!!」


中から、うじゃうじゃと、虫が出てきた。しかも足がいっぱいあるやつ。


足の間をすり抜けたり、服の中に入られた。


何故か体は動かなかった。

じっと立っていたら、虫はみんな離れてくれた。


体は震え、膝は笑っていた。


これ以上調べるべきではないと、本能が言った。


でも、まだまだ調べたりない。好奇心を押さえ付けられるほど、私の精神は大人じゃなかったようだ。


ドアを見ながら机の上を調べていたら、後ろに気配を感じた。


見ると、無数の手が私の方に伸びていた。


連れていくぞと言わんばかりに、それらはうごめいていた。


喉からヒュッと息が漏れだした。


一目散にドアに駆け込んで、外に出た。

何故かドアは閉まらなかった。


そして外に出た拍子に、石につまづいて転んでしまった。


肩で息をしながら建物を見上げた。

あの手の群れで、二度と来てはいけないと、釘を刺された気がした。


立って服に着いた砂ぼこりを払う。


全部払えたと思って、顔を上げた。


建物は跡形もなく消えていた。


なぁんだ。もう消えちゃった。


後ろを振り向いた。


『もう消えちゃった。そう思ったの?』


声が、した。


しかも、聞き覚えのある声が。

見たくなくて、触れたくなくて、顔を見たくなくて、俯いた。


『こうやって、顔を合わせるのってドキドキするね。』


なんで、どうして。なんでお前がいるんだ。

脳が恐怖に支配される。嫌悪感が身体中を這い回る感覚に吐き気がする。


『あ、挨拶忘れてた!初めまして!』


顔を掴まれる。無理やり引き寄せられる。


『“15歳の”ものまちゃん!』


あーあ、やっぱり、そうじゃん。

この子、私じゃん。


しかも1番思い出したくない頃の。


足から力が抜け、その場にへたりと座り込む。


『わー!屈んでくれてありがとう!…ふふふ、自分の顔鏡以外で初めて見た。ほっぺもちもちしてるねー』


頬を触られている。傷だらけの手で。カサブタが頬に触れる感触が生々しい。


も「……なんで、お前がいるんだ……」


震える声でそう言った。


『あれ、気付いてないの?…もしかして、あの建物本物だと思ってるの?』


も「違うの…?」


声が掠れてしまう。当然だ。こいつは私の全部を壊しやがった。トラウマの化身だ。


『わー!ほんとに鈍感だね!いーい?これはね』


奴は私の耳元に顔を近づけて、


『ものまちゃんが見ている“虚像”なんだよ』










___一気に身体が冷たくなっていく。手の先から体温がどんどん奪われていく。


『あは!可愛いねェものまちゃん!いいね、すっごい可愛いよ!!!!!!


……………遊び甲斐があってさァ!!!!!!!!!!!!!!』


奴の周りが暗くなっていく。私も同じように闇に包まれる。


身体が動かない。されるがまま。


周りが完全に暗くなった。


そして、光が見えない真っ暗な海に落とされた。

とてつもない嫌な予感がした。

力を振り絞ってはい上がろうとしたら、奴に目を覆われた。


『うわー、馬鹿みたい。藻掻いても意味なんてないんだよ?』


やめろ


『だって貴方は笑われ物なんだから。貴方はずっと、笑われ続けるんだから。』



やめろ、やめてくれ



『他人の言うことを素直に信じて。結果、笑われて。それで、次第に傷ついて。でもまた笑われて。貴方にはやり直す余裕なんかなかったんでしょ?』




ちがう、そんなんじゃ




『だから他人の素直な褒め言葉でさえ自分を罵る言葉に聞こえてきたんでしょ?』





ねぇ





『そして、自分は他人の玩具だと考えた。』







いやだ







『でも、玩具になりたくなかったから、自分の“キャラ”を作ったんだよね〜。いじられやすくて、面白いキャラ。意外にウケたんでしょ。友達だって増えたんでしょ。自分によって、良かったんだよね。だからずっとそのままでいる。だけど___』








言わないで









『それからたまに、“あたし”の事思い出して、苦しくなってる。』



パリン




___心が割れる、音がした。




『だから!貴方が壊された時からずーーーーーっと!今も!心の底で!…壊れた貴方を慰めてくれる人が欲しいんでしょ?!当然だよね!だって、仲のいい子には、全員裏切られてしまったもんね!本性出したら、みーーーんなに!距離置かれちゃったもんね!!』



お願い



『だから素直になれなくなった。プライドだけ無駄に成長した。本当はやりたかったこと、いっぱいあったんでしょ?』




それ以上




『今日だって、後悔してるんだよね』




何も、




『なんで、素直になれないのかなって。』


『でも仕方ないよね。後悔しても遅いよ?』












『こうなったのは、全部貴方のせいなんだから。』




目を覆っていた手が外され、奴が私を見下している顔が視界に映る。


とどめの一撃を刺された。

全部、真実だ。


真正面から撃ち抜かれた。しかも、脳天を。


怖くて怖くて仕方がない。


絶望の波に体が飲まれていく。




___視界の端にひらっと落ちてくる布が見えた。

溺死は嫌だった。だから捕まった。必死に捕まった。


布は動かなかった。まるで何かに固定されてるみたいだった。


いくつもあったから、1番近いものを掴んだ。



足に地面の感覚がある。体勢は、なんとか整えられた。


次に、遠くにある布を掴んだ。


…よく見ると、布の面積は大きかった。


抱きついた。咄嗟だった。


感覚がある。嘘じゃない。


『…助かろうとしてるの?』


ねぇ、ねぇと言う奴の声は、次第に大きくなっていく。


怖い。


怖い、怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!!!!!!!!!!!!!!!!!!


引き寄せられるように、布にしがみついた。爪を立てた。


『………うっざ。…もーいいや。将来のあたし見られないの残念だけど。』


…殺される、のか?


…ここじゃロクに抵抗もできない。


絶望の縁に立たされ、過呼吸がさらに酷くなる。肩で息をしているどころじゃない。全身で息してる。


過呼吸を通して、体温も上がってきたようだ。身体が熱い。特に顔に熱が集まる。


急に奴は黙ってこちらに手を伸ばしてきた。


暴れた。藻掻いた。一生懸命、もがいた。奴に、殺されたくない。過去に、殺されたく…ない。


だが無慈悲にも、奴の手は首元まで来てしまっている。


恐怖に耐えられなくて、叫んだ。


も「死にたくない!!!!!!!!!!」


✘✘✘✘


むらはside


今は深夜4時くらい。ほぼ朝です。


強制的に起こされました。

前々から「早めに起きれるように準備しとけよ」とやづゆには言われてたけどね。


にしても早すぎるよ。


む「なにー?」


至って普通を装いながら用事を聞く。


ま「まーた番長の野郎が外に出たらしいよ」


冷静な口調でそう告げられる。


や「…次こそこのフライパンでとっちめてやる」


む「それはやりすぎじゃないかな…」


や「じゃあ…スポンジ」


ま「緩急デカイな…」


3匹で、外に出る。すぐ側に番長の姿は見当たらない。


まさか、病院の外に出たのか?


考えを張り巡らせていると、


ま「いた!!番長いた!!!」


まれみが叫んだ。


や「でかしたまれみ!!!」


む「やづゆ、運んで」


や「りょー」


まれみがいる所まで、やづゆに運んでもらう。これ移動速度パナイ。


や「よーし着いたさーて1発かましt」

ま「まって、近づかない方がいいかも」


や「なんで、」

ま「……………番長みてよ」


確かに、様子がおかしい。とんでもない何かに怯えている。身体が震えている。珍しいな、ここまで怖がってるの。


冷や汗もすごいし顔色も悪い。


警戒することにした。


そしたら、番長は何かが壊れたかのように固まった後、崩れ落ちた。確認した。これは完全にトんでる。


都合が良かったから、病室まで連行した。夢遊病なのかな、番長。


ま「番長無駄に背高いから運びにくいんだよな…」


や「尻尾持ったらめちゃくちゃ怒られたもんね」


病室の中のベッドに寝かせる。顔色は相変わらず悪いまんまだ。


む「…これ、発症なんじゃないかな」


さっきから皆が考えていたであろうことを話す。


ま「でも、何の…?」


や「どういう奴…?」


む「起きたらわかる、かも。」


確証はないけど。


や「うーん…むらはちゃんそばにいてあげてよ。むらもの展開欲しいな。」


む「本音出てるよ」


や「バレた?私ちょっとホットミルク作ってくる」


む「え、ちょっとまれみは」


ま「…zzz」


寝 て い ら っ し ゃ る

し か も 爆 睡


…仕方ないか。人間の三大欲求だもんね。


や「ってゆーことで。少しの間頼んだよー」


む「…はいはい」


心配だから、顔を覗き込もうとして、ちょっと前のめりになった。


マフラーが揺れた。




___そしたら番長がいきなり、マフラーにしがみつくように捕まってきた。


いきなりの事でびっくりして、声が出なかった。


も「うぅ…………ぁぅ…………が…」


小さく、苦しそうに声を出している。

息も苦しそうだ。


そしたら、次は服に捕まって、抱きついてきた。


顔がチラリと見えたが、かなり辛そうな顔だった。


つーか腕を回されてガッチリホールドされている。動けん。

ゑ?この子スキンシップ苦手だったんじゃなかったの?


む「……番長、起きてる?」


つつく。起きてはない。寝ぼけていらっしゃるのか?


む「変なの…」


でも、過呼吸酷いな。何とかして落ち着かせようとしたその時。


も「死にたくない!!!!!!!!!!」


む「うるっさぁ!!!!」


ま「!!!( ゜д゜)ハッ!!!!にゃに!!??」


や「うわァァァ!!!!!!ホットミルクこぼした!!!熱い!!!」


oh......パニック!!!!!!


も「ぅ、うぅ………………っぁ、れ?」


夢から覚めた様に目をぱちくりさせる番長。


も「ここ、どこ……」


む「うるさいわぁ!!番長!!!」


ま「んぁ…なんもなぃ…?………(´-﹃-`)Zz…」


や「やけどした〜…いててー…」


も「お前の方がうるさい……………あれ、あいつはどこに…」


あいつ?


む「あいつって誰」


も「……小さい女の子。見た?」


む「えぇ?入るわけないでしょ病院ここに…見てないけど…」


も「だよなぁ……あー、奇病か。これ。」


や「奇病!?」


ひょっこりとやづゆが出てきた。ホットミルク零れるぞ。


や「どんな奇病?」


やづゆが「はい」とホットミルクをものまに渡す。大好物だからか、すぐに飲んだ。


も「……多分、幻覚を見る奇病。」


む「幻覚…」


そりゃ私たち気付けないわ。見えないもん。


も「しかも、かなり鮮明な幻覚…まるで現実世界みたいだった…」


や「現実と幻覚の区別がつかないの?」


も「ほとんど無理」


や「無理ゲーじゃん」


む「さっきはどんな幻覚見てたの?」


も「んー…お化けから逃げる幻覚…この前は建物の幻覚だった…」


あー、そういえばこの前そんなこと言ってたっけ。

建物の中捜索してたんだったかな。

無理だよ!って思ってたけど、幻覚の中の建物を捜索してたのか。


も「ごめん…迷惑かけたよね」


む「途中抱きつかれたのはびっくりしたかな!」


も「………忘れてくれ」


や「えっ番長抱きついたの!?めっずらしー!!!!!!」


も「だから違うって…」


や「…ちぇー」


も「…はー…ごめん、寝る。」


かなり落ち込んでいる。スキンシップは番長のプライドをズタボロにする効果があるぞ!気をつけよう!


や「んー!おやすみ!ホットミルク飲んで体暖かくしてね」


も「うん…分かった」


やづゆはまれみを担いで、退散していった。


む「…」


自分の病室に帰りたくなかった。寝る気が失せた。


も「…むらはは帰んないの?」


む「んー、寝る気失せた。スマホで推し見る」


も「いーなぁ。私家に置いてきたから…」


む「一緒に見る?」


も「ううん、いい。私邪魔だし。」


む「ん…」


いつもより、会話が遠慮がちな気がする。

いつも会話が遠慮がちって訳ではないと思うけど。多分。


いやお互いが受け身すぎるからなんだ。受け身すぎて会話が始まらないんだ。そーゆーもんだ。うん。


も「…なんか、このペアに良くなるよね。」


む「あー確かに。なんでかな」


(書きやすいからだよ!!!!!!!むらはとものまのペアは小説に優しいんだよ!!!え?お前自分からカプ狙いに行ってんだろそれって?黙れスカタン!!!そう思うんだったらお前も小説書いてみろや!!えぇ!!!??????)


も「迷惑…かけてばっかりだなぁ」


切なそうな顔をして、上を向いている番長が、ほんの一瞬だけ、孤独な一匹狼に見えた。


も「ほんと…やだなぁ」


む「まだ幻覚の残りある?」


も「…ない。今はちゃんとしたものしか見えないよ」


む「…良かった」


番長の尻尾が、スマホを触っている手首を触ってくる。ふわふわした触感が気持ちいい。


も「…あのさ」


む「何?」


も「…本音、だけど、さ。…また、迷惑かける、かも、しんないから。」


む「……………うん。」


返事はできる限り、優しい声で、した。今しか、本音は多分、聞けない。


も「その時、は……こーやって、助けて、ね。」


真っ直ぐな目線でこっちを見てくる。


む「分かってるよ」


勿論。あとは、番長だけ。


❆❆❆❆


〜隣の部屋〜


や「まどろっこしい!!!はよ公式になって!!!」


ま「うるさいよやづゆちゃん……」


や「早く供給をくれ……」

思った以上に長くなってとんでもない事になったから次の話でいい加減ケリつけます(??)

頑張るから最後まで見守ってね♡

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