Chapter7「迷走」
「———本当だ!!父さんと母さんは化け物に!!」
夕暮れの校庭で叫んでいるのは一人の少年。
人一倍に正義感が強く、思い立ったならすぐに行動に移るその様は、まさしく少年漫画の主人公と言えるだろう。
ましてや、両親を失ってすぐのちっぽけな少年が周りの人間にその危険を知らせるため叫んでいるのだ。
何より周りの人間の幸を守りたかったのだろう。
———だが、そんなものは夢や物語の中だけの話だ。
力も信用も無いただの子供がどんなに吠えた所で、それはただの戯言である。
子供同士ですら相手にされないのは目に見えているし、大人は大人で〝残酷な両親の死に耐えかねた子供の妄想〟と捉え、まともに話を聞こうとしない。
憐れんでいる内はまだ可愛いものだ、大人がそれを薄気味悪く捉え始めた時にはもう手遅れだ。
純粋な〝誰かを守りたい〟という願いはとうとう、誰にも届くことはなかった。
「俺は信じるぜ、お前の味方だ!!」
「私も信じるよ、私がそんな怖いのから響ちゃん守る!!」
だが、一部残った者達が居たようだ。
だが〝彼〟はそうしなかった。
「ばかばかしい、化け物?魔法?そんなものあってたまるか。」
人類の英知は偉大だ。
武器を作ることを覚え、自分よりもはるかに巨大な動物を狩る事もあれば、重い鉄の塊を空に飛ばし、世界中を飛び回ることだってできる様になる。
医療は進歩しここ十数年の間で要救助者の生存確率は上がって行き、スマートフォンやインターネット等といった通信インフラの発達により、世界の情報はいつでも知ることができる。
計算や科学の力で覆せないものがあったなら、一体何が人を救うというのか。
運が左右したわけでもなく、勉強をして知識を身につけても、どんなに時間をかけて計算しても抗えぬ絶対的理不尽。
故に〝彼〟は否定した……いや、否定する他ない。
少年には〝大事な人間が〟余りにも多すぎた。
2020年4月25日(土)
領真は、バランスを崩しかけて勉強机の角に頭をぶつけて目を覚ました、慣れない姿勢で眠ったからなのか体のあちこちが悲鳴を挙げている。
「……あんな昔の夢を見ることになるとはな。」
思いの他落ち着いていて、気分は悪くない。
欠伸をかくと、いつの間にか落としていた眼鏡を拾い上げて視力を確保する。
景色がくっきりと現れたことで、眠気も一気に吹き飛んだ。
時刻は7時28分、学校は土曜日だが部活動などのために解放されている。
今の領真は平日に学校へ侵入するとつまみ出されてしまうだろう。
一階に降りるといつもの通り冷蔵庫を開き、中にあるフレークを取り出して適当な量を皿に流し込んでいく。
豆乳をコップに投入し、それを食しながら昼食用のサンドイッチを作成する。
「……一人分多めに作らなくてはな。」
ここにきて、藤宮 葵の存在を思い出す。
非常に不服ではあるが、熱が出ていたはずなので消化の良い物を作る必要がある。
作るのが非常に面倒なので滅多に世話にならない炊飯器を使用し、米と、米に対し5.4倍の水を用意、これらを炊飯器へ叩き込んで……炊飯。
粥ができるまでの間にゴミをまとめ玄関先へ出し、制服へ着替える。
授業を受けるかはわからないが、一応は教科書やノートを詰めておく。
今日の目的は、はっきりしている。
できるだけ早く学校に到着し、ある人物に接触すること。
狭間 響夜。
小学校低学年の時に仲違いし、疎遠になった同級生だ。
不服だが、この不可思議な現象を解明する方法がない以上、どんな情報でも掴んで利用しなくてはならない、彼を訪ねて糸口だけでも掴めれば上等である。
しかしそれは、領真を覚えていればの話だ。
(……もしかしたら、あの響夜であれば、覚えているのではないか?)
という勝手な期待が膨らんで行く、少なくとも幼少の響夜を知るものであればその様な期待をするという物だ。
「この間、狭間を陥れたばかりだというのに、僕はあいつを利用するのか……虫のいい話だな。」
洗面台で顔を洗い終わると、目の前の鏡が領真の顔を映し出す。
目を大きく開き、瞳孔も開ききっていて、更には不気味に口元が歯を見せて笑っている。
このような顔を見たら、怒りや憎しみがなくても、気味が悪いという理由1つで殴っているだろう。
それぐらいに気味の悪い笑顔だった。
だが、それでも葵のあの涙を見たのであれば、そんな事は差し置いておいてでも行動に移さなければならない。
「だから女は嫌いなんだよ……な。」
涙は女の武器とはよく言ったものである、顔の水気を拭き取り脱衣所を後にした。
リビングを通りキッチンで朝食の用意をする、朝食はサンドイッチで、いつも飲んでいるお気に入りのコンソメスープをカップに注いで机の上に置いた……その時である。
「ひむ、ろ———。」
「藤宮、起きたか」
ふらふらと階段から姿を現したのは葵だった、眠気も残っているからなのか足運びも大分ぎこちない様子で、壁を伝ってこちらへ向かってくる。
リビングに入ったらもう体を預けるための壁がない。
「……!?藤宮!!」
バランスを崩して前のめりに倒れそうになったところを領真が抱き留める。
葵が領真の胸元に〝ごつん〟と頭を押し付ける様に体を預ける
「氷室が見える所の方が落ち着くから……、きたの。」
「『きたの』じゃない、そのまま倒れたらテーブルにおいてたスープをひっかけて火傷してたんだ……、それも分からなかったのか」
「氷室の体……冷たくて気持ちい……。」
「だめだコレは。」
余程激しい眩暈なのか、物は見えて居ても認識はしていない、といった風に見える。
葵は目を閉じて領真の胸元にすっぽり収まったまま動かない、弱々しくではあるが両手でしっかりとワイシャツをつかんでいる。
……ふと気になり葵の額に手をあてがってみる。
「……熱が上がっているな。」
昨晩よりもさらに熱が上がっている、体感ではあるが39度以上あるだろう。
病院に行って診察を受けたところで「ご両親に迎えに来てもらおう」等となった場合は面倒になる、昨晩の時点で葵は両親から空き巣の疑いで警察へ通報までされているのだ。
残念だが、この家に居てもらう他に無い。
葵をソファへ誘導し、出来上がった粥にそばつゆをかけただけの簡単な朝食を机の前に置くと、よほど参っていたのか〝いただきます〟の一言も無く、一口分、口へと運んだ。
葵は「これまた意外」といった具合で丸くした目を輝かせながら次々と粥を口へ運んでいく、どうやら食欲はあるらしい。
「ふぅ……おいしかったなぁ、意外に料理……できるんだ。」
「粥にめんつゆを入れただけだ、食欲はあるようで何よりだ。」
「私もわかんない……んぐ、でも干上がった田んぼに水がいきわたるような感、じで……すごく……。」
その言葉を最後にして葵はソファに倒れこみ、再び夢の中へと沈んでいった。
食器を回収し、洗い終わった所で葵の方へ眼をやると、ジャージを着崩した葵が無防備にその肌をさらす。
恐らくはつけていないであろう下着、それが本来守っているはずの胸部がさらけ出しそうになっており、領真は思わず目を背け、「ハッ」と出てきた自らの声を聴いて口元を抑え蓋をする。
それを理解した瞬間、領真の全身が火照りを感じ、直後に体中へ寒気が走った。
(待て待て、そんなはずは……。)
女性嫌いで、なおかつ興味が無い筈の領真には新鮮すぎるその感覚は、緊張にも似た物だった。
よくよく考えてればつい先程、領真は葵に抱き着かれたのだ。
領真は不意にそんな事を意識し始めてしまう、胸に手を当てて一呼吸置き息を整えると領真は葵を抱き上げる。
薄着のまま寝室を出てきた葵を放っておけるはずもなく、領真は再びベッドへと運ばなければならなかった、緊張に似た感覚を覚えた領真だが、それ以降は体に伝わる肌の感触であったり、火照った葵の寝息であったり、葵の全てが敏感に領真の肌や精神にビシバシ伝わって来る。
そんな葵を自室のベッドに運び終えた領真は「これではいけない」と気を落ち着かせるため、葵の額に手を置いた。
「―――熱が少し下がっている、のか?」
食事を少し取っただけで、こんなにも熱は下がるものだろうか?と領真の脳裏には僅かにその疑問だけが残った。
———約1時間後———
学校に問題なく到着した領真だったが、やはり教師やその他生徒にからの得られる感触は昨日と同じものであった。
教師の中には中学時代の領真をある程度知っている者もいる。
入学式でも新入生代表として舞台の上に立ち、〝台本〟を読まされたので名前だけならある程度、生徒の間には認識されているもしれない。
そういった意味では〝有名人ではない〟とは言い難い領真だが、気味の悪い期待を寄せられていた教師からも忘れ去られたり無視される理由はないが、領真は決してそんな事を確かめるためにここに来たのではない。
往来している生徒は決して多くはないが、あのメンバーは必ずあの場所にいるはずだ。
そう、先日顔を合わせた屋上である。
今日は天気も良く雲一つのない青空が広がっていて、初夏も目前だというのに風が強いせいか屋上に侵入する前から既に肌寒い。
領真は周りに生徒がいないことを確認してから、南京錠に手をかけた。
「……開いた。」
南京錠はいともたやすく屋上への侵入を受け入れた。
風のせいなのか扉を開けるためには少しばかり力が必要だったがこうして領真は屋上に侵入する事ができた、先日、響夜達に出くわした入口の脇にはいつものように学習机が山積みにされている。
その机の頂に腰を下ろしていたのはあの男、狭間 響夜———
「東か、あいつだけか……?」
———ではなくその友人、東 太一であった。
誰かが来るのを待っているのか、足を交互に前後へと揺らしながら、スマートフォンに目を落として眉間にしわを寄せ何かを見ている。
領真は「いつまでこうしているつもりなのか」と自分の背中を押すように言い聞かせる。
「調べ物をしている所をすまないが、狭間はいるか?」
「誰だテメー。」
学校の人間すべてがそうとは言い切れないが未だに〝例外〟には一度も遭遇していない、この男も例に漏れずその状況の一部へとなり果てていた。
「あのな……響夜は昔から付き合う相手を決めてる気難しい奴だ、その理由だって知らないし小学校の時に〝唯一の友人だった〟俺と山吹っていう女子以外、この学校で知り合いは殆どいないはずだぜ?」
(———やはり、東も……。)
「……お前、名前は?」
「……氷室……領真だ。」
響夜と過ごす時間が最も長い筈の太一から忘れ去られているのとなれば、響夜に忘れられている可能性も非常に高く、ゼロに等しい。
領真は決して、決してがっかりしているわけではないが、肩の力が抜け落ちるのを感じた。
「なら僕はこれで失礼する……狭間には伝えくれても、くれなくても結構だ。」
途方に暮れる領真をよそに、太一は「なんなんだコイツ」といった具合で、腰に左手を当てて唇を〝へ〟の字に折り曲げていた。
ふと、太一が先程まで熱心に見つめていた、、スマートフォンに目を落とす。
「……!?ちょっと待て!!」
太一が領真を呼び止める。
積み上げられた学習机のてっぺんから飛び降りて出口に向かおうとした領真の肩を掴んだ。
「……なんだ?」
「……正直言ってお前のことは気に食わねぇ、だが一つ聞かせて貰うぜ。」
「……。」
「響夜に近づく理由はなんだ?」
春風が屋上を駆け抜けた、太一は領真を睨みつけるようにして見つめている。
領真は振り返ることなく、首を少しだけ回し、肩越しに視界の端で太一の瞳と表情を捉える。
(———この顔だ、この瞳が———僕には。)
領真の考えがその脳裏を過ぎった瞬間、首筋が凍るような寒気に襲われ、直後に背中が燃えたように熱くなったように感じる、葵に触れられた時と同じような感触だ。
閉じかけていた領真の瞼と瞳孔まで開ききっており、眉間にはしわを寄せている。
感情に任せた行動は時に取り返しのつかない悲劇を招く、領真はそれを嫌と言う程理解している。
「……答える義務はないね。」
「そうかよ……やっぱり俺が感じたとーりの人間だったわ、お前……そんなんじゃいつか後悔すっぞ」
「……何?」
「お前アレだろ、頭で考えてる内に〝無理〟とか〝不可能〟とか考えて可能性を放棄してるって言う類の人間だ!!そうだろ!!」
「……は?」
太一の言動は、普段であれば全く相手にせずとも良いのだが、何故かそのような言葉がいつの間にか出てしまっていた。
領真からすれば考えを放棄して拳を振り回したり、頭に血が上れば相手の胸倉を掴んだりするような人間には言われたく無いのだが……。
そして今すぐにでもここを後にしたいのだが、肩をつかんでいる腕がそれを許さない。
〝感情に任せた行動が時に悲劇を招く〟その考えが覆ることはない。
しかしその一方で、感情に任せた行動こそが時には人を救う事のできる唯一最善の手段である可能性を秘めている、と言う事も領真は理解していた。
そして、それらが〝思考では追いつかない状況〟すなわち、10秒後に待ち構えている絶望を打開するのに、10秒以上の時間をかけていたのでは意味がないのだ。
冷静に物事を判断し、計算し、思考を巡らせ解決に導こうとする領真。
考えの及ばない領域では、思考の一切を放棄し感情に身を任せる太一。
水と油とはまさにこの事である、と言える。
もしも太一が数秒の間に考え、迷う様な人間であったのであれば、この場にいる領真の肩を掴んで、足を止めることはきっと叶わなかった事だろう。
響夜の近くにいる人間はこうも領真の心を簡単にかき乱すのだ。
しかし―――
「だが僕は……〝失敗できない〟」
いつか〝待ち構えている絶望〟それに立ち向かうつもりでいる領真は失敗できない。
そのためであれば、友を切り捨て、望みの一切を捨て、あらゆる可能性を想定し時には人を利用する悪人にもなろう。
……そう考えている。
「失敗なんて、取り戻せばいいだろ??」
一寸の迷いもなく、その一言を一蹴する太一のその言葉を聞いて、思わず苦笑が漏れる。
激しい怒りを感じる一方で、それを遠くの彼方へ放り投げようとする領真の心がそれに勝っていた。
「ほぉ……ならお前に置き換えて質問してやるよ、東 太一。」
「あ?」
「お前の大事な女が今まさに、男、複数人に犯されそうになっているとして……お前はそれをどうする」
「んなもん……助けるに決まって———」
「男は全員ナイフを所持していて、それを見たお前も関わった以上命はない。」
太一の性格を考えれば、殴りかかってでもそれをどうにかしようとするだろう。
そして、プライドの非常に高い太一に〝この場は女性を見捨て逃げる〟という選択肢を領真は取り上げた。
「んー……俺なら———」
数秒の間、沈黙が生まれる。
(そう……お前も僕も同じだ東、結局……何もできず、傍観して終わりなのさ―――)
一人で考えを決め込んでしまう領真には僅かながら先ほど安直な言葉に対しての怒りが滲んでいた。
そして、この様な下種とも言える例えがさらりと出てしまうあたり、己がいかに嫌な人間なのか、太一と領真は根本から違うのだと言うことも思い知らされてしまう。
「……土下座する。」
「……?」
「もう見ちまったんだろ?」
「正気か?」
またも苦笑が漏れる。
「警察呼んでも、ぜってぇ間に合わねぇだろうし……もしかしたら二人共助かるかもしれねぇ。」
「本当にそうか……?立ち向かって拳を振るった方が二人とも助かるかもしれんぞ。」
(何を焦っている、僕は?)
「そうかぁ?お前の言ったその〝女の子〟もまだ助かりそうなもんだけどな?こっちは恨まれないように『警察には言わないから』って言えば、もしかしたら最後の良心で考え直してくれるかもしんねぇし……。」
「ハッ……。」
またも苦笑が漏れる。
「そ……そうだよッ!!俺は馬鹿だ、悪いか!!」
現実的に言えば警察に呼んで、来るまで安全なところに隠れていればいい。
少なくとも領真ならそうする。
「―――〝命が救われても、心は救われない〟昔、そう教えてくれた人がいるんだ……俺はそれを大事にしたいって思ってるから。」
「命を使ってまでやることか?命がなくて何が救われる?」
「確かに警察呼んで縮こまってれば命は助かるかもしんねぇ、でも〝助けることができたはずの人間が自分の犯される様子をただ見ていた〟なんて現実、女の子に味合わせたくねぇし……、その子は俺が守る義務があると俺は考えた、うん。」
腕を組んで鼻息を荒げ、自慢げに語る太一。
「女からすれば、周りの親しい人間や関わった人間が自分のせいで死ぬ、という現実の方が救われない気もするがな。」
「悪いけど、そこは俺の気持ちを通すなぁ。〝何もできずに一生後悔する〟てのはそれこそ死んでも嫌だし考えているうちに立ち止まって……固まっちまって……声の一つも、呼吸すら忘れて縮こまって〝見てるだけ〟なんだろ?」
「全く、僕には理解できない。」
「……てか、俺からすればお前がわからねぇよ……氷室くんだっけ?〝今まさに犯されようとしてる〟ってお前言っただろ?」
「あぁ言ったな、だから何だ?この様な事を考え付くような人間は嫌いに———」
「だからそこなんだって、女の子はまだ手遅れじゃないのに、なのになんでお前は最初からそれを〝不可能〟〝手遅れ〟な物だって決めつけたんだ?」
時に、東 太一は人の気持ちや場の雰囲気に敏感である、もちろんそれを汲み取る相手として領真も当てはまる。
「俺、どうせそんなこと頭の中でぐるぐる考えたとしても結局は巡り巡って元の考えに戻ってくるんだよなぁ……それに、何選んだってどうせ後悔するなら……。」
———命が救われても、心は救われない———
だが領真の考えは、〝最悪〟が起きた後のタイミングへ集約していた。
可能性を、完全に捨てきっていた。
「〝動けなくて後悔〟以外の後悔を選ぶ。」
正しいのか、賢明なのか、それとも馬鹿なのかはこの際関係はなく、氷室 領真にとって感情等と言うものはその判断力を損なう障害でしかない。
「……僕は行く、邪魔をしたな。」
この男は自分と同じ所には堕ちてこない、何度、地に叩きつけられようとも前を見ることをやめない。
太一は、領真には導き出せない答えを領真の知らない角度からいつでも引きずり出してくるのだ。
……〝あの日〟から、領真と響夜達の何かは決定的に変わってしまった。
領真は右肩を掴んでいた太一の腕を振り払い出口へと向かう。
「……………オイ、これ!!もってけ!!」
領真が振り返ると上空で何かが輝いた、それを右手で素早くキャッチする。
「柄にもねー事をうだうだ話してたせいで忘れるとこだったー!!それは俺の知り合いが『この時間にここに来るはずだから渡せ』って言ってて、預かってた物だー!!肌身離さず持ち歩けってよー!!」
掌には女子高生がよく鞄にぶら下げている様な小さめの人形が握られている。
こういう物を〝バッグチャーム〟と言うらしいが。
「これを拵えたのは間違いなく女だな……。」
思わず舌打ちをしてしまう領真であった。





