chapter42「神獣祭の夜④」
ざっと30~40人。
ここには、捉えられていた人間が集められていたのだ。
グリーンズ工房のドワーフたちを含め王都の中で連れ去られた者もいた様だが……そんな彼らの話を聞いて、分かった事もある。
「よし、これで、全員……か……!?」
「お、おい、あんた、俺達の事助けに来たんだろ……早くいこーぜ。」
「今、私の仲間が退路を開いている、全員が帰れる様に―――」
「おいおいおいおいおい、冗談だろ!?あんなワケわかんねぇ言語でしゃべって来る連中と、どうやって意思疎通とるっつうんだ―――第一、このガキだって真面に歩けねぇじゃねぇか……だからよぉ―――」
「〝だから〟……『あの少女に暴力を振るって食料を奪った』か?足手まといだから。」
髪を染めていた若い男は人差し額に汗を浮かべる、喉に言葉を詰まらせた。
しばらくして……。
「そ、そうだよ、悪ぃいか―――そのガキはな病気かなんかを持ってたんだよ……ずっと咳き込んで、夜になってもずっとうるさくてよぉ、イライラすんだろうが!!」
「ぼ、僕はやってないぞ、やってない!!」
「あ?何、綺麗事言ってんだよ、このデブ!!―――お前も、このガキが動かなくなってから必死に隠してたろうが……そのおかげで、飯も減らずにすんだんだよなぁ!?」
見るに堪えなかった。
よく見てみれば、男たちは十分では無いにせよ健康そのものだ。
確かに、食糧を与えすぎると脱走を考え始める者も現れるため最低限の食糧であるにせよ、この者達に何らかの〝価値〟がある以上は食料が来なかったと言うのは信じ難い。
少女の衣服は公園で遊んでいる小学生と同じ様なシャツ1枚だったが、アイリスは気づいていた。
衣服が男2人に比べてボロボロになっていて、頬には殴られた後がある事に。
アイリスは、静かに事実を並べた。
「1つだけ事実を伝えるが……〝君達は元の生活に戻れない〟。」
「……あ?」
「私が所属する〝魔術協会〟は多くの国に根を張り……こう言った事件や争いに巻き込まれた人間を保護するんだ、そして、〝ある措置〟を行う。」
「な、なんだよ、それ―――君達は救助の人間じゃないのか!?か、家族との生活はどうなるんだ!?」
太った男が、声を張る。
「フフッ……〝救助〟と来たか、都合の良い頭だな。私達が税金で動いている救助隊員や警察官にでも見えたのか?―――本来なら〝記憶置換〟を行い、〝魔術の隠匿〟を実行する所だが……君達は長くこの世界に居たせいで人格に影響を出す可能性が高い。何せ3カ月分だからな、廃人になるぞ?」
魔術協会の使命である〝魔術の隠匿〟と文明の守護を目的とした〝魔族との対峙〟。
しかし、この活動の背景で……〝戦災孤児〟の様な、者も現れ始める。
そして、そのようなもの達の中にこそ〝魔術師〟の才能を開花させる者が現れるのだ。
そのため……魔術協会は時に人命の保護と称して、ある〝プログラム〟を実行する事がある。
それが……。
「〝魔法魔術災害者救済保護プログラム〟……と言ってな。君達を魔術協会にとって有用な人材として〝教育〟し……生活、職業なんかを保証する代わりに魔法魔術に対する、一切の沈黙を約束させると言う物だ―――それなりに稼げるぞ、良かったな。まぁ、君達の家族や親戚……仕事仲間くらいには〝死んだ〟と伝わるだろうが……。」
もちろん、例の〝会長〟によって〝奴隷紋〟が刻まれる。
もし、魔術協会を危険に晒す行動を起こしたなら……。
結果は、言うまでも無い。
「ふ、ふざけんなよ、このクソ女―――!!」
髪を染めた若い男は、アイリスの胸ぐらを掴んだ。
「第一、お前らが遅かったせいで、何人も死んでんだ―――そうだ……責任取れ、責任取れよ!!お前たちの仕事なんだろ、ミスの責任取れぇえええええ!!」
「―――何を勘違いしている。」
「ヒィイイ!?」
アイリスは素早くその拘束から逃れると、白銀の剣を首元に押し当てた。
それを見て、若い男の方は微動だにしなくなり、太った男性は蹲って震え始めた。
「私たちは慈善事業じゃない―――飽くまで〝文明を守る〟ための機関だ〝お前達が1人2人死のうが魔術協会には関係ない〟んだよ………………………………………………どういう意味か、理解ったか……?」
「は、は……はっ……うぐっ……!!」
血走ったアイリスの瞳孔が刃よりも鋭く、若い男を睨んでいた……まるで〝殺す〟と囁く様な目だ。
若い男は呼吸を忘れそうになるほど怯えていたので、アイリスはそこで許してやった。
これ以上は、あちらで少女を解放している満ツ穂にも聞こえると思ったからだ。
若い男は……どしゃり、と言う音を立てて崩れ落ちる……。
「最も……君達では〝プログラム〟の課題をクリアできるか不安だがな。」
〝魔法魔術災害者救済保護プログラム〟
このプログラムは、かつてアイリスが受けた物でもあるのだ。





