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chapter14「見落とし」

 

 ????年 ??月??日 夕方 辺境の村・ウキチ

 

 響夜達は、村に戻った。

 一先ずの所、怪我をして意識を失った満ツ穂を背負って、村まで連れ帰って来たのだ。

 

 響夜達は、一通り散策したがイーサンは見つからず終いだった。


 とは言え、遺品なども見つかっていないため「捜索を続行する意味はある」とアイリスが言ったのだ。

 だが、近くで魔人が出た事とそれを撃破した事も含め、村に報告しようと考えていたのだ。


 あれだけ大規模な魔人の群れを未だかつて、アイリスですら見た事は無いと言う。

 魔人が群れる事は、今までほとんど無かったらしい。

 

 場合によっては、村を放棄することも考えた方が良いだろう。

 

 しかし……。


 「ななな、なんだ……?」

 「何が起こっている?」


 だが、響夜達を待ち構えていたのは……矢を番えた村人達だった、まるで数日前に戻った様だ。

 この村に初めてやって来た時と、全く同じ光景が広がっていた。

 

 「やはり……騙していたな!!」

 「何を……!?」


 高台にいる内の1人がそう叫んだ、若い男だ。


 「オレ達は騙して無いですよ!?」

 「とぼけるな、お前達……やはり魔人の手先だったか!!」

 「何を言ってんですか!?魔人なら、さっきオレ達が倒して来たんだ!!でも数が多かったから知らせに戻って来た―――ケガ人もいる、入れてくれぇ!!」

  

 響夜達は、坂を上ってきている。

 門は唯でさえ見上げないといけないのに、高台の方を見上げると首が痛くなりそうだ。


 「……何かしら。」

 

 道は馬車……では無く、この世界で言う〝獣車〟が1つ通れる程だ。

 ウキチは隠れた村だ、左右の木々で覆われた森になっている。

 

 鈴音は、そこで何かが光っているのを見つけた……。

 目を凝らしてみても良く見えない……鈴音は鼻と目が良いが、


 次の瞬間、葉っぱを掠める〝何か〟が飛んでくるのを見て、咄嗟に!!


 「殿ッ!!」

 

 鈴音は、刀を振るった。

 刀に弾かれて空に舞った〝何か〟が地面に刺さる。


 「……〝矢〟?なんで、こんな不意打ちみたいな!?」

 「随分と、弓を使うのが下手な様ね―――殿?皮肉だけれど……心配事は1つ減ったみたいよ。」

 「それって、どういう―――」

 「……あなたね、狩人には向かないわよ?獲物を確実に殺したいなら……気配くらい殺しなさいな―――」


 鈴音は、響夜達の誰もが気づかなかった気配に。それを言った。

 ゆっくりと、森の中から姿を現す。

 

 「〝イーサン〟……だったかしら……?」 

 「……イーサン!?」


 イーサンだ。

 無事に村に戻っていたらしい。

 

 「俺は別に狩人になりたいワケじゃぁねぇんだよ。」

 

 冷たく見下ろすイーサンの瞳が響夜の視線とぶつかる。

 響夜は「昨日の当てつけか」とイーサンを睨むが―――


 ―――鈴音が冷静に言葉を続けた。

 

 「あなた、あの戦いを見ていたのね?なら―――私達が魔人で無い事も知っている筈……あなたが何をしたいのか、さっぱり分からないのだけど?」

 「確かに、お前たちは〝あの怪物〟と戦ってた、そりゃそうだろうぜ!!」

 

 

 〝あの怪物〟?


 

 響夜達の頭の上には〝?〟マークが浮かんでいる。

 あれだけ脅威として認識していた筈の〝魔人〟の正体を知らないのか?と。


 もし、魔人が化けていて人間になり替わっているのだとしたら……確かに確かめる方法は無い。

 事実、村人からは「魔人に騙された」と聞いていた。

 

 「話が噛み合わない…………いや、待て―――」


 だが、領真はここで考えた。

 村人たちは「村で生まれ、そこで育った人間なら」疑いようも無く「魔人で無い」と断言できるだろう。

 

 イーサンは、確かに響夜達(正確にはシェインだが)が〝魔人〟と戦っているのを見た。


 魔人が騙して村に入って来ていたと言うなら、その正体を見ていた筈だし、いくらかは共有されているだろう。


 少なくとも、人間とは駆けな離れた見た目である〝異形の存在〟を人間と見間違えるはずはない。

 

 

 ―――「……〝生身の人間が、魔物を退けられる筈がありません〟のに……。」―――


 

 響夜がフレイアから、こんな事を聞かされていた。

 もちろん領真も、それを聞いていたし知っていた。


 領真は「身体強化もしていない人間が、魔物を退けられる筈が無い」と言う意味で言ったのだ……と、捉えていたが。


 〝いや、違う〟

  

 領真の中で、結論が集約されて行く。

 自ずと、答えは見えた。

 

 「…………そう言う事か。」

 「領真……?」

 「まずいな―――奏と東……それからフレイアも危ない。」

 「何だって……?」

 

 領真は「情けない」と思った。

 何故〝最初に、この村へやって来た時、気づかなかったのか〟と。


 「―――ほら、みんな!!言った通りだろ!?〝何もない所から剣を出した〟んだ、〝召喚獣〟もいないのに、魔法を使ったんだぜ!!こいつらは―――」


 「―――この世界の人間にとって、僕達の存在は―――」

  

 イーサンは、木を登って軽々と門へ飛び乗った。

 人差し指を響夜達に向けて、言い放つ。



 「〝魔人〟だぁ!!」

 

 「〝魔人〟だ、って事だ……!!」

 


 きっと門の向こうにも、村人が大勢いるのだろう。

 

 イーサンは、直接顔を見る事が出来ないであろう村人達に向かって聞こえる様に首を後方に捻って、口に手を添えて叫んだ。


 「―――イーサンッ……!!」

 

 その、態度を見ていると腹が立つのは響夜だけでは無かったはずだ。

 事実、イーサンは不敵に笑んでいた。

 

 「あああ!!本当だ〝アイツが背負ってるヤツ〟……あの時の魔人だ―――間違いねぇ、こいつら仲間だ!!」

 

 「まさか……満ツ穂の事か!?」


 「そうか……それで〝騙された〟と……人間が魔法を使うだけで〝魔人〟となってしまうなら……確かにありうる話だ。」

 


 最初に響夜達へ忠告を上げた若者が、高台で上ずった大声を出し他の村人に向かって叫んでいる。

 いよいよ、イーサンの煽り無しに〝脅威〟の存在が響夜達なのだと、定着しつつある。


 ―――「使うならこれを―――魔法は……〝見せびらかさない方が良い〟ので。」―――

 

 魔物に襲われたフレイアを治療しようとした早彩に、満ツ穂が投げつけた言葉だ。

 響夜達は、その意味をようやく理解する事が出来た。


 言われてみれば〝1度も〟聞いた事は無かった。

 

 この世界に―――〝魔術師〟は、存在しないのだ……!!

 

 

 「悪いが、大人しく掴まって貰うぞ―――お前達の仲間も、牢屋に入れてある!!」

 「牢屋だって―――カナ達の事かぁあ!!」

 「そうだ、大人しくしろ!!」

 「ふっ……ざけんなぁああ!!」


 響夜は、血相を変えた。

 体から抑えきれない魔力が滲み出て来ている。


 瞳孔が開き切り、怒りを露わにしている。


 「お前達……カナに何かしてみろ!?絶対に―――」

 「よせ、響夜……!!」

 「んー!!んぅー!!」

 「魔力を抑えろ、良いな!?」

 「フーフー、フー……!!」

 

 アイリスが手のひらを押し付けて、響夜の言葉に栓をしたのだ。

 

 きっと今の響夜は、片っ端から村人を殴ってでも居場所を聞き出す―――アイリスからは、そんな事をしでかしそうに見えたのだ。


 

 「いいか、響夜……もし君が感情のままに魔力を放てば……〝フレイア嬢が危ない〟……耐えろ、いいな……!?」

 「フー……!!フー…………!!フー、フゥ………ふぅ~……。」

 「そう、それでいい―――」

 

 

 ―――その後……響夜達は足かせと手枷を着けられた。


 気絶していた満ツ穂も同様だ。

 ウキチの村のあちこちで使われている荷車に乗せられている。


 響夜達の枷は全員が同じ鎖で繋がれている。

 誰か1人が逃げる事も出来はしない。


 歩かされて、自分達から牢屋のある場所まで連れて行かれるのだ。

 

 その途中で―――



 「リーフおじいさん……!?」


 響夜が道端にいるリーフじいさんの存在に気づいた。

 他にも村人はたくさんいるが、響夜はすぐに気づく事が出来た……少し、歩くペースを遅める。

 

 「村に魔人が向かってるかも知れないんだ……みんなで逃げ―――」

 

 「―――……。」


 リーフじいさんは何も言い返さない。

 それどころか、埋めたい眼差しを向けて来るのだ。


 そして、響夜達が聞こえるギリギリの場所から、こう言った。

 


 「―――何言ってんだ、魔人は……お前らの方だろうがよ。」

 「そんな……。」


 響夜は、開いてしまった口を閉じる……そんな簡単なやり方を忘れた。

 目を泳がせる響夜に、リーフじいさんは何も感じないのか……背を向けて、そのままどこかへ行ってしまった。


 他の村人が、臭い物を見る様な視線を向ける中、それらは一切気にならなかった。


 ただ、その1つだけが衝撃だった。

 

 「オイ、早く行けよ。」


 この村にこれ程しっかりとした牢屋があるんだなと感じる暇は無かった。

 きっちりと、石造りで出来ている。


 牢屋も木では無く鉄製だ。


 〝召喚獣〟と呼ばれる存在があるからなのか、この牢屋はどちらかと言うと獣の檻に近かった。

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セブンス・コードⅠ —Another world phenomenon-
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