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chapter11「これから」

先週更新するのを忘れていました……。


今後は週末に更新しようかと思います。

デビル・グランデの体は真っ二つに腹側と背側に分かれ、切り倒された。


その肉体はやがて塵になり風に乗ると、空のかなたへと消えていった。


黒い雲が割れ、空からは先程までの美しい夕焼けが射している、バサバサと制服のブレザーが旗のように音を立て、両足で立ち、空を見上げる響夜の姿がそこにあった。


「終わったな響夜……君を信じて指輪を託したが、まさか探し人がこのような形で見つかるとは思わなかった……それにしても助かった、あの魔力領域のおかげで私たちの治療は完了したよ。」


「……。」


アイリスの傷は9割9分ほど治療できていた


それほど、響夜の作った魔力領域は高濃度の魔力で満たされており、アイリスだけでなく、奏や一美の怪我も治療が完了していた、病院の世話になる必要などこれっぽっちも無かった。


「色々と話したいこともあるが、そう遠くない場所からサイレンの音も聞こえる、今はここを離れて安全な場所へ移動するとしよう。」


「……。」


「一度君の妹や友人も運ばなくては……、君の家でいいか?響夜。」


「……。」


「……響夜、なぜ無視をする?」


「……。」


アイリスは響夜の様子が気になり、正面へと回り込む


そこには、脱力し、空を見上げ、口はぽっかりと開きながらよだれを垂らし、白目を剝くよう状態で立っていた響夜の姿があった。


端的に説明すれば、立ったまま気絶していた。


「あ、ぁは……。」


アイリスは先程までの勇姿ある若者とのギャップに思わず言葉を失う。


そして同時に「ここにいる全員を、私が運ぶのか」と肩を落とすのであった。



2020年4月3日 (金)



朝日が射し、瞼を貫くと、響夜は目を覚ます。


そこは見慣れた天井があるいつもの部屋、要するに自室のベッドの上だった


時刻は6時47分、遅刻はしていない。


あくびをしながら背伸びをして手を下ろす。


「うにゃん……。」


右手にむにゅり、と柔らかな感触が伝わった……。


クッションのような弾力があるのにそれでいて吸い付くような感覚……。


驚いた響夜は、虫か、なにか冷たい物を触った時のように、素早く手を引っ込めるた。


大声を出しそうになった自分の口を両手で塞ぐ。


恐る恐る、布団をめくるとそこには、くぅくぅと寝息を立てる奏の姿があった。


「カ、カナがなんでここに……!!」


シャンプーか何かの香りだろうか、茶髪の髪と甘い香りがベッドに広がり、貸した覚えのない響夜の部屋着を着用している。


奏が起きない程度に布団をめくり、間違いが起きてなことを確認すると安堵のため息をついた。


もしかしなくても、今は触ったものは間違いなく胸である。


「……顔洗って歯も磨こう、それから……ごはん。」


急に冷静になった響夜は、して、顔を洗い、歯を磨き、制服に袖を通すと朝食の席に着く。


疲れがだいぶ残っているのか、顔を洗ったにも関わらず眠たくてしょうがない。


「おばさん……またご飯作るためだけに戻ってきてたのか……マメだな、相変わらず。」


食卓には味噌汁と卵焼き、鮭が並んでいた


まるで家庭科の教科書に載るような、理想的な朝ごはんの形である。


どれも出来立てである。


「だれがおばさんだ?」


いままで視界に入っていなかったのか、叔母がそこにいることに気づかなかったらしい。


いつも〝叔母さん〟と呼んでいるはずなので、「突然そのようなことを言われても」と響夜も多少なり困惑した


「??……ハイハイ……すいませんでしたっと……いただきまっしゅ」


パチンと両手を合わせると、響夜は箸を手に取り、左手に茶碗を持つ、二つあった卵焼きを一度で口に頬張る


「……んぅ?お、だし巻き卵なんて珍しいねおばさん……たまにはいいね。」


「だから、だれがおばさんだと言っている。」


卵焼きだと思っていたそれは実のところ、だし巻き卵であった。


いつも卵焼きを作るときは甘いものばかりだったので、普段あまり食する事のない味に、響夜は舌鼓を打った。


「そうか、口にあったようで何よりだ、だが……口に物を入れたまましゃべるのは行儀が悪いぞ、君は生粋の日本人だろう?私と違って。」


「……??……ごめんなさい。」


たしかにその通りなのだが、と響夜は違和感を覚えるつつも、アツアツの味噌汁に手を伸ばし、口へ運ぶ。


「……うちに赤だしなんで置いてあったっけ……?」


しかも丁寧にあさりまで入っている、もちろんあさりも冷蔵庫にはなかったはずだ。


「昨日の夜に買っておいたんだ、この家はキッチンがよく手入れされているからな、私も料理が捗るよ、あさりの砂抜きをやったのなんていつぶりだっただろうか~!!あぁそれと、その買い出しは自腹だから気にしないでくれ。」


赤だしの味噌汁の量が器から少なくなっていくにつれ、響夜の眠気は徐々に覚めていった。


「お弁当もこれから作るつもりなのだがどうだろう?君が好きなおかずは――――――」


「ゲッ……ゲホォ!!」


響夜が違和感の正体を掴むや否や立ち上がり、唐突に大声を上げアイリスを指さす


「お、おおおおお前、なぜここに!!??」


「ああ、エプロンなら借りたよ。」


「違う、そうじゃない『何故キッチンにいる』のかではなく!!『なぜこの家にいる』んだ!!」


「聞きたいか??」


「とっても!!」


「君が気絶した後、私がここに運び込んだ……終電を逃したからそのまま泊った、以上だ。」


「ああ……なるほどね、簡潔にどうも。」


響夜はアイリスの言い分に納得すると静かに腰を下ろした。


しかし納得しようとしていた響夜の疑問が再び浮上する。


「……ていうか、オレの妹の部屋って、正直言って超汚いから寝る場所とかなかったと思うけど……どこで寝たんだ?」


「君、自分の妹とはいえ、女性のそういったプライバシーを暴露するのはデリカシーに欠けるぞ。」


「……リビングで寝たの?」


「君と同じベッドだが、どうした?」


「だよねぇ!?」


ベッドの右横……すなわち響夜から見て左側には一人分のスペースが開いていた事をすでに知っている。


だが、実際に言葉に出されるとやはり違うもので、響夜は顔を真っ赤にすると慌てて椅子から転げ落ちた。


怯まずに指をさしながら疑問を投げ続ける


「大丈夫か?」


「お前!!男と同衾どうきんしておいて、その余裕はどうなの!?」


「一番効率のいい治療のためだ。」


「あ、わかったお前あれだろ、効率のためなら手段選ばないやつだな!?オレのことも男して見てないだろ!?」


「そうだな。」


「即答。」


顔色一つ変えないアイリスの顔を見ながら落胆する響夜。


そうこうして騒いでいると、聞き覚えのある車のエンジン音が、響夜の家の前で停止する


少しして、玄関の鍵が開く音がした。


「ただいま~、響夜いるの~?」


「叔母さん……!!??ま、まずい……!!」


「ああ、あちらが君の?ご挨拶を……。」


「やめろ、ややこしくなるから……!!」


エプロンを外し、あいさつに行こうとするアイリスの肩をつかみ、無理やりトイレに押し込む


「あら、ずいぶん早いのね、起きるのが」


「あ、ああ……うん、おはよう。」


叔母がリビングに入る。


「着替えを取りに来たのよ、ご飯今作るから……。」


「だ、大丈夫、さっき食べた……!!」


「……自分で作ったの?」


「あ、あぁん、もちろん……!!」


手汗を手でふき取り、目を泳がせる響夜からは怪しさしか感じられないが、視線をこちらに送っていないので叔母は感づいていない。


「一美の病院で、大きな事故があったんだって、知ってる?」


響夜が昨日の出来事がフラシュバックし、気持ちが引き戻される


やはり、夢だと思っていた出来事は全て、本当だったのだと。


「そう、なのか……。」


「な~んだ、意外と落ち着いてるのね、でもその方が安心だわ、何かあるたびに大パニックじゃ、見てるこっちが心配よ。」


響夜の脳裏に一美、奏や太一の顔が浮かぶ。


彼女達の無事を、まだ直接確認していない


「響夜も一緒に来る?学校は休んでもいいわよ、電話するから。」


「……ううん、大丈夫、俺のこと心配してる奴らもいるし……顔、合わせてこなくっちゃ。」


「そう、じゃぁ行ってくるわね」


「行ってらっしゃい。」


ガチャリと扉が閉じる音がして、しばらくすると再びかかったエンジンの音と共に家から遠ざかっていくのが分かった。


「やはり、そうだったか、その様子だと〝昨日の記憶〟がないのだろう?」


「昨日の……?確かに、大事なところがすっぽ抜けてるような……。」


「昨日の顛末、君が必要であれば話したいところだが……。」


「な、なに……?話してくれよ。」


「そろそろ食べて支度をしないと、学校に遅れるぞ。」


「あ。」


時計に視線を送ると、家を出る時間から10分ほど経過していた。

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セブンス・コードⅠ —Another world phenomenon-
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