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chapter10「生きようと足搔くための力」

夢の中で幾度も現れた青年が、響夜に語り掛ける。






―――ここは、お前の心の中―――






―――お前は一度、死を覚悟した―――






「そうだ、死を覚悟して、二人を守るために戦った」






―――だが、お前には決定的に欠けていた物がある―――






「ああ、わかってる。」






―――だが、お前は再び、〝絆〟に救われた―――






「ああ、一度目は父さんと母さんに、今度はカナと……アイリスにも。」






―――ならば問おう……少年、我とともに〝生きる覚悟〟はあるか?―――






「死ぬつもりなんて毛頭ないね、それにさっき約束したんだ〝お前たちと生きる〟って!!」






―――ならば、我が手を取れ、恐れるな……!!―――






「オレはもう恐れない!!今度こそ、大事なものを守って見せる!!」






―――〝目覚めの言葉〟はもう解っているな?ならば、唱えよ!!―――




「「我らが太陽の輝きが、指し示すままに!!」」




響夜の意識は、勢いよく真っ白な空間から引きはがされる。




二人の声が重なり、響夜の体を淡い光が包み込んだ。




「響夜、時間がないぞ……。」




「メザメヌママ、シヌガイイ―――タイヨウノオウ―――!!!!」




「……『我らが太陽の輝きが、指し示すままに』……!!」




「響夜!!」




アイリスが叫ぶ、先程まで余所にあった意識は、完全に〝響夜の体に宿った〟




「……これは?」




空から降り注いだのは光。




雪のような、蛍のような、だがどこか〝太陽〟を思わせる暖かな光が、あたり一面に舞っている。




そして間違いなく、それは響夜を中心として降り注いでいる。




「昔、お父さんが話してくれた……〝星降りの夜〟……?響夜、やはり君は!!」




大岩が響夜達の方へ目掛け、力強く放り投げられた。




響夜は左手で右手首を掴み、右手を力強く前へ突き出すと、そこに意識を集中させる。




次の瞬間、右手は黄金の輝きを放つ。




「〝光子……招来〟!!」




ズシィンと大岩は地面をえぐり木にぶつかると同時に土煙を上げた。




「ブワハハハハハハ―――〝ワガオウ〟ヨ__タイヨウノオウハホウムリサッタ―――サァイマコソ!!―――ワレラトトモに―――カノ〝セイチ〟ヘ、オモムカン!!―――」




勝利に酔った魔人グランデは両手を空に広げ空を仰いだ。




我が軍の勝利と言わんばかりに、勝利の雄たけびを上げている。




しかし―――。




「いつの世にも、貴様ら魔物が現れる時は必ず文明の危機となった……そしてまた〝再び〟現れたという事は、〝我オレ〟の敵で間違いないな。」




月を見上げ歓喜していたグランデは、先程まで響夜達がいた広場の一角を凝視する。




「グゥッ―――!?」




響夜の口からその言葉が発せられた瞬間、土煙が吹き飛ばされ、宙へと舞い上がった。




そこには、二本の足でしっかりと地に足をつける響夜の姿がある。




「ならば見せてやろう、幾度も死の淵より蘇った我の力を……しかとその両の目に焼き付けるがいい!!」




瞼を開け瞳がグランデを睨む、太陽を連想させるかの様な亜麻色の瞳はグランデを確かに捉えていた。




響夜の右手に美しく、輝かしい〝黄金の剣〟が握られている。




投げつけられた岩は響夜の体の前で中央からそれぞれ左右に切り裂かれ、弾き飛ばされていたのだった。




はじかれた岩は明後日の方角へ吹き飛び、それぞれ別々の木に衝突していた。




「イマサラメザメテモ―――スデニテオクレ―――ワガチカラハ―――コレホドマデニ―――フクレアガッテイル―――ネボケタキサマノ―――マリョクニ―――オトルコトナド―――アリエナイ」




「……あ、あなたは……?」




アイリスがつい口に出してしまったその言葉、それを聞いた響夜は横目で振り返り、アイリスたちに魔力の領域を展開させた。




「その中なら魔物は手出しできない、魔力も十分に満ちているから、君の魔法でゆっくり傷を癒すといい。」




グランデへと向き直った響夜の口からその言葉が発せられると同時に、響夜は地を蹴り単身で突撃した。




「あまり時間はかけられない、最短で行く。」




グランデは再び岩を放る、響夜はそれをひとつづつ掻い潜り、時には切り裂き、グランデへと迫る。




「す、すごい……!!あれだけの攻撃を掻い潜りながら私たちが狙われると、即座にフォローを入れて、あれだけの岩を次々と……!!素晴らしい魔力コントロールだ、それに何より……。」




あっという間にグランデの足元へと辿り着いた。




「……速い!!」




その腹部から胸元へかけて、黄金の剣がグランデを襲う。




「クッ……!!」




あと一寸と言うところで、グランデの腕に払わて弾き飛ばされた響夜は、木に叩きつけられる。




「かなりの外皮強度だ、一体どれ程の人と魔力を喰らったのか……。」




響夜の体も何ともない様子だったが、唇を嚙み、血を滲ませていた。




「マダ―――タチアガルカ―――ナラバ―――サイダイゲンノ―――マリョクデ―――ヤキハラウマデ―――!!」




グランデは四つん這いになると、口から無数の繭を吐き出した、五十匹分はあるだろうか。




その繭は次第に割れ始め、中からは人の顔ぐらいの大きさのクモ型の魔獣が這い出た。




足は鋭い爪の様になっており、地面に爪先立ちするように立っている




クモ型の魔獣たちは次々と響夜へと襲い掛かった。




「なるほど、時間稼ぎをして〝魔力砲〟でこの一帯諸共吹き飛ばす気というわけか……ならば……!!」




響夜は広場に背を向け、病院の方へと走り去った。




響夜は持っていた剣をアイリスたちの前へ突き立てると、さらに魔力をアイリスたちの周りへ満たし始めた。




その魔力領域は、それしきの魔獣では破壊できない強固なものとなっていた。




「オロカナ―――カテヌトカンガエ―――ニゲダシタカ―――アレデ―――イッコクヲ―――オサメテイタト―――イウノダカラ―――ワラワセル―――」




響夜は非常用の階段を駆け上がり屋上を目指していた。




「そうだ、いいぞ……我についてこい!!」




魔獣達の集団は〝エサ〟を追いかける、響夜が走り抜けた階段は次の瞬間には大量の魔獣が階段を、壁を、埋め尽くす勢いで押し寄せる。




病院の階数は屋上を入れて八階まである、追いつかれるのは時間の問題だった。




「ムダダ―――ニゲバナドナイ!!」




「確かに〝逃げ場〟は無いな、だがこうして一か所に集めることは出来たわけだな。」




「まさか……!!」




アイリスは響夜が強力な魔力を左手に宿している事に気づいた。




次の瞬間、響夜は屋上から身を投げた。




魔獣の群れは海流に乗った魚のように、大群となって響夜を追い続ける。




その様子はまるで、空を覆いつくすかのような大蛇が響夜を呑み込もうとするようにも見えた。




「トウトウ―――イキルキボウサエ―――ミウシナッタカ―――〝キボウ〟や〝セイヘノシュウチャク〟ガキサマラ―――ニンゲンノ―――チカラノミナモト―――ダトイウノニ」




「よくしゃべるな、アイツ、勘違いするなよ〝一列に並んで、我を襲う〟これがいいんだ!!」




そこで、響夜は空中で身をひねり、地面に背を向ける形で体を空に向け、左手を突き出す。




「我らが太陽の輝きよ……我に力を!!第一魔法〝レイ〟!!」




響夜の左手から、黄金の輝きが、光線となって放たれた、光は、魔獣の群れをを一瞬で焼き払った。




「太陽色の光魔法!?」




アイリスはようやくここで合点がいった。




普通、アイリスが結界を発動すれば、植物や動物、もちろん人間からも魔力を感じ取ることができる、魔力は人の体を、〝色のついた雲のようなもの〟が包んでいる、アイリスにはそう見えている。




彼女の結解が反応しなかったのではなくは彼の作った〝魔力の領域〟に侵入してしまった、見えていなかったのではない、響夜に接近したあの日からアイリスの感覚が狂わされて―――




「そこに見えていた物が〝あの魔力〟だと認識できていなかった!?あれだけの量の魔力が空間を漂っていたのにも関わらず!!」




響夜がアイリス達の元に舞い戻り、先ほどまで地面に突き立てていた剣を引き抜いた。




「狙い通りだ、無事うまくいったようだが……〝この体では〟このレベルの魔法が限界……詠唱ありでこの様か、使えたとしても……もって後一回……。」




「ダガ―――モウオソイ―――ジュンビハトトノッタ―――クチハテルガイイ―――!!」




グランデの口から禍々しい魔力が放たれようとしている




地面が揺れ、周りの岩石が無重力の空間に漂うかの様に、地面から剥がれ浮き上がり始めた




「あれを防ぐ手段はあるのか?」




アイリスが響夜を問いただす。




「無い、先ほどの魔術を放つような準備も出来ない。」




「残念ながら私の傷はまだ癒えていない……あれが放たれれば、ここだけじゃない、この病院や街まで危険だ、多くの人間が死ぬ。」




「そのようだな、だが幸いにも障害物があるとはいえ、〝一直線〟だ……任せておけ、一撃で仕留める!!」




「だが10秒もないぞ……?」




「フッ……充分だ!!」




響夜は剣の切っ先を、天に向け、まるで王宮にでも飾られた騎士の鎧のように、持ち手を胸の高さへ、時計の針が三時をさすように構え直す。




響夜の魔力が体に纏うオーラの様に現れる、やがてその光の全てが黄金の剣へと吸い上げられる。




更に、剣に吸い上げられた魔力は剣先へと、その一点に集中した。




響夜はクラウチングスタートのように姿勢を低く構え、足が地面を抉る。




次の瞬間、弾かれたように勢いよく走り出した。




グランデの周りにはもはや、岩石だけでなく、木々や乗用車等といったものまで漂い始めていた




その一つ一つが響夜が近づくにつれて次々と勢いよく放たれる。




今度は切り崩す事無く、掻い潜り、空中で足場にしながらグランデへと迫る。




「キサマハ―――〝アノオカタ〟ノジャマニナル―――キエサレェエエエエエエエエエエ―――!!」




グランデの口から〝魔力砲〟が放たれ、響夜を直撃した。




しかし響夜の握った黄金の剣は、その剣先が魔力を四方八方に飛び散らせる形で押しとどめられている。




「グランデ……この少年の〝生きようと足掻く覚悟〟の力、その身をもって……しかと、受けるがいい!!」




「行けええええぇぇぇぇぇぇぇ!!響夜!!」




響夜の背後でで見守るアイリスの叫びが届いた、響夜の右手に握られた黄金の剣がさらに輝きを増す。




「……〝アストラ流〟魔剣技!!突光剣フラッシュ・スティング!!」




魔力砲を見事に打ち破り、鉄の塊を貫く様な確かな手応え。




その剣を通して、響夜の手に確かに伝わっていた。

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セブンス・コードⅠ —Another world phenomenon-
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