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ハッピーエンド  作者: 冲田
前編
2/12

中学生

「なーんか、やっぱり、もう二度と小三の時とかみたいには、一緒に遊べないのなー」


 そんなことをつぶやきながら、我が物顔でソファーに転がって、ガイアがゲームのコントローラーをピコピコと操作している。


「小三って……。そりゃあそうでしょ。中学生なんだから……」


 お互いに部活のない水曜日、ガイアは決まってハルトの家に行ってゲームをした。こうでもしないと、この親友とは遊べない。ガイアは学区内の中学校、ハルトは中学受験をして私立中学校に行ったのだ。

 小学生も高学年になると、ハルトは塾があってガイアと公園で一緒に遊ぶことはなくなった。勉強も追い込みになると、どこでだろうと遊んでなんかいられなかった。

 受験が終わってようやく、これまで通りに一緒に遊べるかと思ったけれど、気づけばハルトは自分の知らない世界を作っていた。塾仲間と、同じ学校の友達と……。ガイアにも地元の友達は当然いるけれど、そこからハルトだけが抜けていってしまいそうで、こうやって押しかけて繋ぎ止めている。


「あ、そうだ、ガイア。来週の水曜は予定あるから、来るなよ」


「へぇ、なになに? まさか彼女でも連れ込むの?」


 ハルトの驚いたような顔が耳まで真っ赤に染まったので、冗談で言ったつもりのガイアは彼よりもさらに目を見開いた。


「え……マジ?」


「いや、まだ、彼女じゃないんだけど……」


「彼女じゃないのに、親のいない部屋に連れ込むの⁉︎」


「誰も家で会うって言ってないだろ! でかけるから、来ても留守だって言いたかったの!」


「あー……。でもマジかぁ。うわー、先越されたぁ」


 ガイアは大袈裟に、ソファからガックリとずり落ちてみせた。


「ガイアは僕と違ってモテるんだから、その気になればいつでも彼女つくれるでしょうが」


「まあ、自慢じゃないけど? 女子に告られたことは何度かあるよ? けどさぁ、オレだって誰でもいいから彼女が欲しいってわけじゃなくてさぁ。なんか誰もこう、ピンとこないんだよね」


「ほら。ピンと、とかなんとかワガママ言ってるだけで、いつでも彼女作れんじゃん」


 ガイアは起き上がってソファに座りなおす。そして、うーん、と、クラスや部活の女子、告白をしてきた女子の顔をぼんやりと思い浮かべてみたり、誰かとデートをする自分を想像してみたりした。


「オレは、彼女とか今はいいや。お前と遊んでる方がデートとかするより絶対楽しいもん。

 その子とうまくいっても、男の友情、(ないがし)ろにすんなよ!」


「しないよ。僕だって、ガイアといるの楽しいもん」


 口には出さなかったけれど、彼女ができたらどうせ遊ぶ頻度は減るんだろうなぁと、ガイアは思った。現に、同じ中学の男友達はだいたいそうだ。彼女ができたとたん、付き合いが悪くなる。

 まだそうなったわけではないのに、近い未来にハルトも他の男友達のようになると思うと、ガイアはものすごくイライラした。

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