小学生
黄昏時に公園の前をとぼとぼと一人歩く、君の一瞬の横顔と後ろ姿がずっと気になっていた。オレンジ色の太陽が、君の姿を夜よりも黒い影絵のように空に切り取る。
──君は誰?
小学三年生の大地は、今日も公園で遊んでいた。家に帰ってもどうせお父さんは家にいないし、いたとしても機嫌が悪いことが多いし、なるべくなるべく、外にいたい。だから、もう日も傾いて帰ろうとしている人も多いけれど、彼はとにかく誰かが一緒に遊んでくれる間は粘る。
いつもの時間に、ガイアは公園の外に顔を向けた。いつも俯きがちに歩く“彼”がふとこちらを見た。初めて、バチっと目があった。見覚えがある。──あれはたしか、三組の……。
ガイアはにやっと笑みをつくると
「よ! 晴翔!」
と声をかけた。ハルトとは同じ小学校で同じ学年だ。クラスが一緒になったことはないけれど、顔と名前くらいは知っていたし、共通の友達から話を聞いたこともあった。学童からまっすぐ帰るマジメな鍵っ子くんだ。
「よう」
戸惑いがちな声で、ハルトは返事をした。
「帰りか」
「そう、学童の。ガイアさんはずっと公園にいたの?」
「うん」
お互いに声を張り上げながら話しているうちに、ガイアと一緒に遊んでいた子たちは皆、ランドセルを背負い始めた。
「じゃあ、ぼくも帰るよ」
そう言いながら顔を背けて、ハルトが歩き出そうとしたので、ガイアは慌てて駆け寄る。
──帰さないよ。だって、ようやく君が誰だかわかったんだから!
「もうちょっと遊んで行こうよ。どうせ、今家帰っても、お母さんいないんだろ?」
ガイアはハルトの肩にガシッと腕をまわすと、ちょっと強引に公園にひっぱっていった。ハルトは楽しそうな顔はしていなかったけれど、渋々とガイアについていく。
夕方や夜の遊び相手になりそうだとガイアが目論んだ通り、ハルトはそれから、公園に通うようになった。はじめは暗くなり始めると帰っていたけれど、秘密基地遊びを始めてからは夜遅くとも言える時間まで一緒に遊んだ。
秘密基地と、秘密の友達と、秘密の体験と……。特にこの出会いの秋は、二人にとって特別な思い出になった。