66話:予想外だったよ
「ご馳走様。肉じゃが美味しかったよ」
「やっぱり真白さんの手料理、すっごく美味しいよ!」
樹と菜月の感想に真白は「ふふ」っと笑い、笑みを浮かべた。
「それなら良かったです♪ 頑張って作った甲斐がありました」
真白の笑みに、樹は「ああ、お願いするよ」と笑みを返した。
「ちぇっ、私がいるっていうのにイチャイチャしちゃって……」
見つめ合う二人に向かって呟かれた言葉に、ビクッとさせて菜月の方を見やる。
「ご、ごめん菜月……」
「うっ……す、すみません……」
若干頬を染めた二人は顔を俯かせた。
そんな二人に呆れる菜月はため息を吐いた。
「まあ、別にいいんだけどさ、その、時と場所を考えてよ……見てるこっちが恥ずかしいじゃん」
菜月の言葉に、樹と真白は返す言葉も無かった。
それから少しばかり雑談をし、ふと時計を見やった。時刻はすでに夜の20時を回っていた。
「もうこんな時間か。流石にこれ以上いるのは申し訳ないから、俺と菜月はお暇させてもらうよ」
菜月も若干眠そうにし、目を擦っていた。
「え? あっ、本当です。もうこんな時間に。そうですね。ではまた明日」
「おう。ほら、菜月帰るぞ」
「……うん」
そのまま樹と菜月は玄関まで向かう。真白も見送りに玄関まで着いて来る。
靴を履き終えた二人は真白へと向き直った。
「今日は誘ってくれてありがとう。料理美味しかったよ」
「美味しかったよ。ありがとう」
「いえいえ。またお誘いしますね」
「ああ。だけど今度は、家に招待するよ」
「ありがとうございます。またお邪魔させていただきますね」
「おう。それじゃあ」
「はい。おやすみなさい」
「おやすみ」
「真白さんおやすみ~」
こうして樹と菜月は真白の自宅を出て行った。
真白は出て行った玄関の扉を見つめポツリと呟いた。
「大好きですよ、樹くん……」
若干頬を染めたその表情は、慈愛すら感じる、まさしく聖女の微笑みであった。
こうして三人の夕飯は終わるのであった。
――翌日。
樹は眠たそうにしながらも起床した。
菜月は部活で朝早く出て行っており、父東と母楓も仕事に行ってしまった。
制服に着替え、朝のテレビを観ながら朝食を食べた樹が準備をして家を出ようとしたその時、インタホーンが鳴り響いた。
「ん? こんな時間に誰だ?」
玄関に向かい扉を開くと。
「は~い。どなたです…………真白!? なんでぇー!?」
予想外の人物に、思わずそんな声を上げてしまった樹。
「おはようございます」
「おはよう……ってそうじゃない! なんでウチに真白が? 公園で待ち合わせじゃ……」
そんな樹の問いに真白は答えた。
「なんでと言われましても、それは」
「それは?」
「何となくです♪」
悪戯に成功したような笑みを浮かべる真白に、樹は思わずため息を吐いた。
そんな樹のため息に真白は、自分が来ては迷惑だったと思ってしまった。
「あの、迷惑、でしたか……?」
「いや、迷惑なわけないだろ。むしろ嬉しいに決まってる」
「っ! 良かったです」
嬉しそうにする真白。
「家に上がって少し待ってくれ。すぐに準備をしてくるよ」
「はい。それではお邪魔します」
靴を脱ぎ、リビングのソファーへと腰を掛ける真白。
樹は準備をしながらも考える。
何故真白はウチまで来たのだろうか、と。
真白の家から桐生家までは公園に行くよりも距離がある。だから公園での待ち合わせだったのだが……
樹には考えてもわからなかった。
そのまま準備を整えた樹は一階へと下りリビングに向かう。
「真白、準備できたし行こうか」
「はい」
家を出た樹と真白。学校に向かう途中、樹は真白に聞いてみた。
「なあ真白。ちょっといいか?」
「はい、なんですか?」
こちらを見る真白。その表情から読み取ってみようと試みるも……
(くっ、可愛い!)
この通りダメである。
だから樹は聞くのだ。どうしてウチまで来たのかと。
「なんで家まで来たんだ? 公園より距離はあるだろ?」
「はい。ですが向かう途中、『家まで行って脅かしちゃいましょう』と思っちゃいまして……」
(可愛いかよっ!!!!!!!)
思わず心の中でそう叫んでしまうほど、可愛らしい考えであった。
「その、一度こういったことをしてみたくて……」
クスっと笑う真白に、樹は『可愛い』以外、何も思うことがないのであった。
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