65話:三人での夕飯
樹と真白がスーパーに到着したが、まだ菜月の姿はない。
だがそこに……
「お待たせお兄ちゃん、真白さん!」
振り返ると菜月が駆け足でこちらに向かって来た。
どうやら丁度だったようである。
「おう。俺達も丁度来たところだ」
「そうですね」
「なら走った甲斐があったよ」
(走って来るほどなのか?)
そう思ってしまう。
しかし菜月は、真白の手料理が早く食べたくて、学校から走ってきたのである。
走ってまで真白の手料理が食べたい菜月、果たしてこれでいいのだろうか……
そんなことはさておき、樹たちはスーパーの中へと入っていく。
「二人は今日、何か食べたい物はありますか?」
「にくぅぅっ! お肉がいい!」
真白の問いに対して、菜月は即答した。しかも肉である。
「樹くんは何がいいですか?」
「そうだな……」
何が良いか考えている樹に、菜月は口を挟む。
「えぇ! お肉にしようよ!」
「……まあ、そうだな。夕飯は肉にしようか」
「やった!」
菜月は子供の様にはしゃぎ喜んでいた。その光景に樹と真白はクスッと笑みを零した。
「決まったようですし、早く買い物を済ませましょう。作るのは肉じゃがにしましょうか」
「肉じゃがか。楽しみだな」
「肉、じゃがっ!」
作る料理も決まり、樹たちは買い物を済ませ、真白の家へと帰るのであった。
帰った三人は料理の準備を始めた。
「真白、俺も手伝うよ」
「ありがとうございます。では樹くんはピーラーでジャガイモの皮を剥いて下さい。包丁を持たすのは怖いですので」
そう言って笑う真白を横目に、俺はジャガイモの皮を剥き始めた。
「真白さん、私は何をすればいいの?」
「そうですね……」
顎に手をやり考える真白。
「では菜月ちゃんはお皿の用意をお願いしますね」
「わかった!」
こうして樹たちは着々と調理をこなしていく。肉じゃがも現在はぐつぐつと煮込んでいた。
「あとはもう少し煮込んで完成ですよ」
「ん~っ! いい匂~い!」
菜月は鍋から漏れ出る肉じゃがの匂いに、表情をだらしなくさせる。
それから数十分、真白はぐつぐつした鍋の蓋を開いた。
その瞬間、鍋の中に封印されていた匂いが、部屋全体へと解き放たれた。
「これは、もう我慢できないよ! ねっ! お兄ちゃん?!」
「ああ、これはたまらないな」
菜月の表情はこれ以上なく、だらしなくなっていた。
「さあ、二人も準備してください。早く食べましょう♪」
「ああ」
「うん!」
味噌汁にサラダと着々と食卓へと並び、それに伴い肉じゃが真白の手によってよそられる。
「さて、準備も出来たことだし食べるとしよう」
樹たちは席に着き食べ始めた。
まずは、というよりも、一番楽しみにしていた肉じゃへと箸をつけた。
そのまま肉とジャガイモを箸で掴み口へと運んだ。
「「――ッ!?」」
樹と菜月は顔を合わせて頷いた。
「「美味いッ!」」
味の染み込んだ肉とジャガイモのうま味が、口の中いっぱいに広がる。
「あ、あの、そこまで美味しかったのですか……?」
困惑してそんな言葉を返す真白。
「「勿論!!」」
即答で返事を返す二人は、肉じゃがを主食にご飯をかきこむ。
「もう、そんなに急いで食べなくても逃げたりはしませんよ」
樹と菜月を見て苦笑いする真白であった。
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