63話:学校で
学校に着くと一条が小声で話しかけてきた。
「おい樹。天宮さんと何かあったのか?」
「え? な、何がだ?」
「その反応。戸惑ってるじゃないか」
「うっ……」
一条は樹の反応を見てそう言うと、樹は一条から目を逸らした。目を逸らした。それすなわち――何かあったという事である。
「おいおい。友達だろ?」
「これに関しては本当に大丈夫だ」
「いや、だがなぁ~」
そう言って一条が天宮の方を見ると朝比奈と話していた。
「まっしー何かあったの?」
「いえ、その……」
天宮は一条と話す樹の姿を一瞬見て薄っすらと頬を染めた。
そんな天宮の顔みいた朝比奈は何かを察した表情をした。
「あっ、ふ~ん。まっしーもやるじゃん」
いや、あれは分かっているような表情で天宮が樹に何かをしたと思っているようだ。
「え? あ、そんなんじゃ、うぅ~ ……」
天宮は恥ずかしいのか俯いてしまった。
だが朝比奈の追撃がくる。
「それで、何をしたの?」
「そ、そんなこと言えませんよ」
「いいからいいから〜」
「……本当に、本当に私のことをバカにしませんか?」
「しないって。私達友達でしょ?」
朝比奈の友達という言葉に押し負けたのか、コクっと頷いてから朝比奈にしか聞こえないような声量で口を開いた。
「その、昨夜樹さんと電話する約束をしてまして」
「うんうん」
「その、待ちきれずにお風呂から電話してしまいました」
「わぁ! まっしーってば大胆?」
「ち、違いますから!」
「それがバレたって?」
朝比奈の言葉に天宮は小さくコクリと頷いた。
「ハハハッ」
「やっぱりバカにしました」
「ハハハッ、ご、ごめんごめん」
朝比奈は目に溜まった涙を拭いて口を開く。
「そんなことだったら私はいつもだよ〜」
「え? いつもお風呂で電話を?」
「うんうん。ちょっと待ってね。つっちーにその時どう思っているか聞いてみるよ〜」
「あ、結花さ――行っちゃいました……」
天宮は一条と樹が話しているところへと話しかけに向かった。
「つっちーちょっといい?」
「ん? 大丈夫だよ。どうしたの?」
「あのね、私達よく電話しているじゃん?」
「そうだね」
朝比奈が一瞬樹の方を見てから一条へと聞いた。
「電話している時って私よくお風呂じゃん?」
「うん? そうだね。それがどうかした?」
いまいち要領を得ない聞き方に首を傾げる一条。そんな一条に、朝比奈は小さな声で訪ねた。
「やっぱり電話相手のお風呂姿って想像しちゃうよね?」
「ブフォッ、ゲホッゲホッ、な、何を聞いてくるんだ結花は⁉︎」
「それでどうなの? ねぇねぇ?」
「お、教えるものか」
顔を赤くした一条に朝比奈は「その顔を見ればわかるよー」と少し恥ずかしそうに笑っていた。
「ありがとー」
そう言って朝比奈は天宮と会話を再開してしまった。
「そうなのか?」
「うっ、お、男ならそうだろ? てかなんであんなことを……」
それで分かったのか、一条は俺の顔を見て何かを察し肩に手を置いて笑みを向けてきた。
「そうかそうか。男だもんな」
「おまっ!」
「なんだそんなことか。なるほどな」
「笑うなバカ野郎」
「ハハハッー」
一条は高笑いをするのだった。




