62話:登校での出来事
今年は続刊ではなく、何か新作を書籍化したいです・・・
現在ラブコメは新作を準備中ですのでもうしばらくお待ちを!
翌朝。樹が公園で天宮を待とうとすると、丁度天宮がやってきた。
「樹くんおはようございます」
「おはよう真白。同じタイミングだったか」
「見たいですね」
「そうだ」
樹はカバンから先日綺麗に洗った弁当箱を入れた布袋を取り出して天宮に返した。
「ありがとうございます。ではこちらを」
「ありがとうはこっちなんだけどな……」
そう言って再びお弁当箱を受け取った。
「いえいえ。樹くんが美味しそうに食べているのを見れるだけで嬉しいですから」
ニコッと微笑む天宮に見惚れ、樹は頬を薄っすらと紅く染めた。
(心が浄化される……)
どんなに悪いことがあったとしても、天宮の笑顔を見るだけで幸せになれる。まさに聖女様である。
「そ、そういえば今日の弁当の中身は?」
「……教えて欲しいですか?」
「うーん。教えて欲しい、かな?」
「なら秘密です。お昼になってからのお楽しみってことで」
そんな樹の言葉に天宮はニヤッとし人差し指を自らの口元に当てた。
「そうか、なら楽しみにしておくよ」
「はいっ。では行きましょうか♪」
「そうだな」
鼻歌を交えながら先を進む天宮の背を見て思った。いつもよりなんか嬉しそうだな、と。
「樹くん?」
立ち止まっている樹に声を掛けた天宮。
「悪い。ボーっとしてた」
「もう。朝から怠けすぎですよ?」
「すまん……」
そんなこんなで学校へと向かっていたのだが、樹の脳内に昨日の電話の時の記憶が蘇った。そう。お風呂で電話していた天宮の事だ。
また想像してしまい頭を振ってそんな邪念を振り払った。
でもたまに思い浮かんで来てしまう。
(アレは反則だろ……)
「どうしました?」
「い、いや何でもない」
「むぅっ」
答えようとしない樹に天宮は頬を膨らました。その膨らんでいる柔らかそうなほっぺたをツンツンとしたいのだが、ここは自制することに。
天宮は答えようとはしない樹を不満そうに見て口を開いた。
「言ってください」
「いや、だが……」
「いいですから!」
これは仕方ない、のか……?
樹は意を決して口を開いた。
「その、な? 昨日の電話の事を思い出して……」
「ッ!?!?!?!?!?!?」
そう言った樹は天宮から視線を外した。天宮は樹の言葉を聞いて声にならない声を上げ頬を真っ赤に染めて俯いてしまった。
数秒、或いは数分だろうか。沈黙が場を支配した。
二人の空間には甘い空気が漂っており通りかかった通行人は、「こいつら爆発しねーかな?」と思った。
少しして天宮は小さく声を漏らした。
「その……昨日のことはわ、忘れて、くださぃ……」
「あ、う、うん」
樹は頷くしかできなかった。
そのあと二人は頬を染めたまま学校へと向かうのだった……




