61話:お電話の向こう側は・・・
放課後の帰り道。樹と天宮は一緒に下校していた。
「そうだ」
「どうしました?」
「お弁当美味しかったよ。ありがとう」
「いえ、その言葉を聞きたくて作ってますから。明日も作ってきますね」
「助かるよ。毎日学校でも真白の手料理が食べられて嬉しいよ」
「あ、ありがとうございます」
樹の言葉に天宮は頬を染めてお礼を言った。樹にとって弁当は助かるのだ。いちいち購買まで買いに行かなくて済むし、一番は天宮の美味しい手料理が食べられることだ。これ以上に喜ばしいことは無いだろう。
「弁当箱は洗って明日返すよ」
「分かりました。ではここでお別れですね」
「だな。また明日」
「はい」
そう言って帰ろうとした樹を天宮は呼び止めた。
「あの……」
何故か頬を染めてモジモジとする天宮。何かあったのだろうかと思いながらも次の言葉を待つ。数秒、あるいは数分だろうか。天宮はその小さな口を開いた。
「その、今日の夜、少しお電話しませんか? その寂しいとかではなくて……」
ほのかに桜色に染まっていた頬は一気に真っ赤に染まっていた。そして俺の素手をギュッと掴みながら上目遣いで見え気てきた。
(可愛すぎるだろ! 天使かッ!)
グッと堪えながらも平静を装って返事を返した。
「だ、大丈夫。聞かなくてもいつでも電話してくれていいんだぞ」
(全然ダメだ!)
可愛すぎてダメであった。
「ありがとうございます! 夜電話しますね!」
「え? まっー……」
そう言って天宮は走り去ってしまった。
「まあいいもの見れたし帰るか……」
いいものとは勿論天宮の可愛い表情である。これは彼氏であるからこそ出来る独占だ。
(幸せ過ぎる……)
そのまま家に帰るのだった。
――夜。
夕飯を済ませお風呂を出た樹はベッドで横になっていた。まだ寝るには早い時間だ。天宮はいつになったら電話をするのだろうか?
そんなことを考えているとスマホの着信音が鳴った。見ると天宮の様であった。
「もしもし」
『天宮です。こうやって電話するの久しぶりな気がします』
「そうだな」
確かに冬休み中は会っていたので電話をしてはいなかった。
『ちょっと緊張しちゃいます』
「ははっ」
『ちょっと笑わないでくださいよ! むーっ』
スマホの向こうにいる天宮は頬をぷくーっと膨らませていた。
そこにちゃぷんっ、という水の音がした。
(まさか、いや、そんな筈は……)
『あの、どうしました?』
少し声が反響して聞こえる。
聞かないという手もあったのだが聞かずにはいられなかった。
「真白、もしかしてさ……」
『はい?』
「もしかして今風呂、なのか……?」
『……ふぇ!?』
再度ちゃぷんっという大き目な音が聞こえた。焦っているのだろうか?
『その、は、はい……』
「おいおい……」
樹は頭の中でどの様な状況なのかを想像してしまい全力で頭を振って掻き消した。
『その、我慢できなくてつい……』
「そ、そうか」
『あの、もしかして想像、しました……?』
「ッ!? い、いやいや! そ、そそそんなことは無いですよ!」
『ッ?!!?!?!? そ、想像しましたよね?』
何故だろう。怪しい空気がスマホ越しに聞こえてきた。
「そうです。真白様申し訳ございませんでした!」
『ゆ、許します』
「あの、出来れば今度はそう言ったことが無いようにしてくれ。こっちの心臓に悪い……」
『す、すみません。気を付けます』
それから明日の弁当は何が良いのかと話したりと電話が終わった。
「それじゃあおやすみ」
『はい。おやすみなさい。ではまた明日』
「おう」
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