番外編:色々と甘いバレンタインデー
今日はバレンタインデーですね!
皆さんはチョコを貰えましたか?
私ですか?
私は──ゼロです。ゼロなんだよぉぉぉぉお!!!!!
学校が終わった夜。
天宮はキッチンで何やら作っていた。
「うーん。苦めの方? それとも甘め?」
天宮は悩んでいた。何に悩んでいるのか。それは──明日がバレンタインデーだからである。
材料は揃っているのだ。あとは作るだけ。だが肝心の、樹が好きな味が分からないでいた。
そこで天宮は閃いた。
「そうです! ビターと甘めの二つを作りましょう!」
思い至った天宮はチョコレート作りを始めた。
暫くしてチョコが完成した。
時間を確認するがまだまだあった。
「まだ時間はありますしクッキーも作りましょうか」
そうして天宮はクッキー作りを始めた。そこでスマホから着信音が聞こえた。
「誰でしょうか?」
スマホを手に取って確認すると、それは朝比奈からであった。
「こんばんわ結花さん。」どうしました?」
『もしもしまっしー? 明日ってバレンタインデーでしょ?』
「はい。そうですね」
『って事はつっきーに?』
「は、はい。そのつもりで今作ってます」
少し照れくさそうに天宮は答えた。
「結花さんは一条さんに?」
『もちろん! 去年も作ったもの! 今年は沢山愛を込めもの!』
「あ、愛、ですか……」
『何照れてんの。そのくらいしなよ?』
事実、天宮は『愛』と『好き』という感情を込めて作っていたのだ。
「は、はい」
『それだけの電話。また明日ね! いい報告待ってるから!』
「は、はい」
そうして一方的に電話は切られてしまった。
「私も沢山愛を込めましょう」
胸の位置で握り拳を作りそう呟くのだった。
──翌日。
バレンタイン当日の朝。天宮は少し早めに樹を待っていた。
すると向こうから歩いてくる樹の姿があり、天宮の姿に気づき駆け寄ってきた。
「おはよう真白」
「お、おはようございます樹くん」
天宮は人生で初めてチョコを上げるという行為に、 緊張していた。そのため、朝の挨拶が変になってしまった。
いつもと違う天宮に気づいた樹。
「どうした真白?」
「え? な、なんの事ですか? 私は大丈夫ですよ!」
「そ、そうか? ならいいのだが……」
本人が大丈夫と言うのなら平気だろう。そう思った樹であったが、歩いていると天宮に呼び止められた。
「あ、あの、樹くん……っ!」
「うおっ!? ど、どうした? やっぱり気分が優れな──」
「違うの」
天宮に言葉を遮られた樹は口を閉じ、天宮の次の言葉を待つ。
口を開こうとしては閉じてモジモジとし、一向に喋ろうとしない天宮。表情を見ると頬を紅く染めていた。
「も、もしかして熱でもあるのか?」
天宮の額に手を当てて確認する樹に、天宮はさらに顔を真っ赤に染める。
「ち、違いますよ!」
「なら……」
「そのコレを渡したくて」
「……コレ?」
そう言って天宮の手に持つ物を確認すると、綺麗にラッピングされた小さな箱であった。
「コレってもしかして……」
「はい。その、樹くんは今日が何の日かご存知ですか?」
「それはもちろん」
男なら誰でも楽しみなイベントの一つ。その名も──
「バレンタイン、だろ?」
──そう。バレンタインデーである!!
「そうです。だから樹くんにコレを」
「……いいのか?」
「はい。開けて見てください」
天宮に言われた通り樹はラッピングを丁寧に剥がして中身を確認した。
ハート型や様々な形をしたチョコとクッキーが入っていた。
「美味そうだ。食べても?」
「はい」
チョコを一つ手に取って口の中へと運んだ。
モグモグと咀嚼し飲み込んだ。
「少し苦いけど美味い。ビターチョコか」
「そうです。他にも甘いのもあります。これとか」
そう言って天宮はチョコを手に取り……
「あーん」
「……?」
「そ、その、口を開けて下さい。コレ案外恥ずかしいんですから」
「ッ! す、すまん……あーん」
パクリッ
チョコの甘い味が口の中に広がった。
「お、美味しいです……」
「良かったです♪ 頑張って作ったかいがありました」
ニコッと微笑んだ天宮はまるで──天使のようであった。
「ありがとう。大事に食べるよ」
「はいっ♪」
俺、今日死ぬかも……
そして学校に行くと、朝比奈が天宮へと絡んでいたのだった。
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