59話:一緒にお昼
「なんで言っちゃダメなんだよ?」
一条が小声で俺に尋ねてきた。
「まあなんていうか、俺の心の問題だ」
「何かあったのか?」
「それは――」
樹はどう思っているのかを一条に話した。
了承して一緒に登校したなら必然的に樹は攻められるだろう。なんでお前みたいなやつが、こんな奴よりなどと。クラスの女子からどう思われているかは定かではない。樹の評判が悪ければそれは天宮へと批判が殺到するかもしれない。それによって学校での居場所が無くなっては樹は天宮に顔向けできなかった。
「確かに俺が樹と立場が逆だったらそうしたかもな」
「だよな?」
「うんうん」
もう少し考えてみるか。
授業が始まって少し、チラチラと天宮からの視線を感じる。気になって顔をそちらに向けるも逸らされてしまう。
何かあったのだろうか?
授業が終り昼休みに入り、樹のスマホに天宮からメッセージが入っていた。
『今日のお昼一緒に食べません?』
と。
バッと天宮の方を見ると目が合い樹は慌てて返信を返した。
『いや、それこそ流石に不味いだろ!?』
『でもここ最近はずっと一緒でしたし……』
『ぐっ、確かに……』
その通りであった。樹と天宮は冬休みの間はほぼ一緒にいた。
「どうした樹?」
「……これみろ」
無言に携帯を見つめる樹を疑問に思ったのか一条が尋ね、樹はそのメッセージを一条へと見せた。
そのやり取りであるメッセージを確認した一条は。
「お前、冬休み中ほぼ一緒に居たのか……?」
こいつマジで? という感じで一条は樹のことをマジマジと見つめた。
樹はやっべという感じで一条の表情をゆっくりと確認すると――呆れていた。
「まあいいや。それで? お前はどうしたいんだ?」
「それは一緒に食べたいけど……」
「うーん」
樹の言葉に一条は頭を捻らせて考えていた。どうやったら樹と天宮が一緒に昼食を食べられるかを。ふと天宮の方に視線を向けた一条だったが、そこで一緒に天宮と話していた朝比奈へと視線が向いた。
楽しそうに天宮と話す朝比奈を見て一条は思い付き樹に耳打ちした。
「樹、いい事を思い付いた」
「……何だ? 何か嫌な予感がしなくも何だが?」
「まあいいからって。少しそこで待ってろ」
そう言って一条は天宮と話していた朝比奈へと声をかけた。
「そうだまっしー! そろそろお昼食べよ~」
「そうですね。そろそろ食べましょうか」
お弁当を広げた二人の席に一条は近づいて声をかけた。
「朝比奈いいか?」
「ん? どうしたのつっちー?」
「一緒に昼食べないか?」
「え? でもまっしーが」
一条の言葉に朝比奈は天宮の方を向いてどうしようか迷っていた。そんな朝比奈の事を分かってか天宮が口を開いた。
「いえいえ。私の事はお気になさらず。お二人で楽しんでください」
一条は天宮の言葉を否定した。
「いや、良かったら天宮さんも一緒にどう? 元々樹と一緒に食べる予定だったんだ。たまには一緒の方がいいと思って」
「はぁ!? お、おい一条!」
樹は一条の言葉に焦ったようにそう言った。
「まあ待て樹。たまにはいいだろ? ねっ、天宮さんが嫌なら構わないけで……」
天宮は一度樹の方を見ていたので樹は首を横に振って否定した。
「ふふっ」
「ッ!?」
樹は嫌な予感を感じた。慌てて口を開こうとしたのだが、先に天宮が口を開いてしまった。
「流石に――「いいですね。是非ご一緒させて下さい」……」
「誘ったのはこっちだ。ありがとう天宮さん」
一条は俺の方を見てニッと歯を輝かせ樹へと親指を立てたのだった。
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