58話:学校での日常
冬休みが終わって学校が始まった。
樹と天宮の二人はあれからも互いの家に行ったり来たりをしており、その際に菜月が天宮の家に行って一緒に料理をしたりとのんびり楽しく過ごしていた。
「今年は良い年です♪」
ルンルンと鼻を鳴らしながら天宮は樹の横を歩いていた。その天宮の表情は幸せそうであった。
実際天宮はこの冬休みの最中は樹と居られて嬉しかった。樹も同様で楽しい時間を天宮と共有出来て嬉しかったのだ。
「そうだな」
「このまま樹くんと一緒に登校したいです」
「流石にそれは不味いだろ」
「大丈夫ですよ。樹くんになにか言う人がいれば私が守りますから!」
天宮は両手で樹の手を取って胸元で握った。その目は「一緒に学校まで登校したい」と物語っていた。
周りが俺に何か言おうが構わない。だけど、真白に何か言われたと思うとそれは出来ない。
「真白の気持ちは嬉しいよ」
「それじゃあ!」
「すまん」
樹は素直に謝った。
だって――
「どうして、ですか……?」
「――真白に何か言われるのを見たくないんだ。もう少し俺に時間をくれるか?」
「わかり、ました……」
天宮は残念そうにシュンとした。
「ごめん真白」
「気にしないでください。私が勝手に言った事ですから! では先に行きますね。また学校で」
「おう。学校で」
樹は先に学校へと歩いていく天宮の背を見送った。
天宮がこうやって言うのは珍しい。いつもだったら天宮は樹に気を遣わせないようにしているのに。
近くの自販機で温かい飲み物を買った樹は空を見上げて呟いた。
「俺もしっかりしないとな」
一条にでも相談してみるか……
樹は飲み物を自販機近くのゴミ箱へ捨て学校へ歩を進めるのだった。
教室に入いると中は新年ということもあり男女ともに賑わっていた。
天宮の周りにも女子が集まって話をしていた。
「天宮さんって年末年始は何してたの?」
「年末年始ですか? 私はそうですね……」
「もしかして彼氏!?」
一人の女子が言ったその言葉に、教室いた男子達の頭には『!?』マークが出たかのように反応を示した。だが自然を装うように友達と会話をしながらも次、天宮の次の言葉を待っていた。
そこで教室に入ってきた樹と天宮の目が一瞬合った。天宮はその女子の顔を見ながら微笑みながら答えた。
「年末年始は家とかでゆっくりしてましたよ。趣味の料理をしたりとかとても充実してました」
「そうなんだ。天宮さん可愛いから彼氏とかいると思ったのに~」
天宮は微笑んで返した。
男子達もホッと胸を撫で下ろしていた。だがクラスの男子達が安堵している中、樹は気が付いた。天宮が否定していないことに。
学校に来る前に天宮とあのような会話をしたから言われるかと思ったが杞憂で終わったようだ。
そのまま席に着いた樹に一条が声をかけてきた。
「あけおめ樹。で? 本当は?」
「あけお……は?」
一条は何のことを言っているのだろうか。
「だから、」
そう言って一条は樹の耳元に口を近づけて小声で。
「天宮さんとだよ。付き合えたんだろ?」
天宮と付き合えたのは一条と朝比奈のお陰でもある。一条には嘘を吐きたくはなかった。
樹は小声で一条に答えた。
「……付き合えたよ。ありがとな」
その言葉に一条は顔を綻ばせて笑った。
「そうかそうか。ならよかったよ! そっかぁ~これで樹もリアz「それ以上言うんじゃねー!?」むぐーっ!?」
樹は慌てて一条の口を塞いだ。
これはまだ秘密なのだから……
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