47話:二人きりのクリスマス
それから食べ終わった食事の片付けをした樹と天宮の二人は、ソファーに座り紅茶を飲んでいた。樹はまだ本命でもある誕生日プレゼントを渡してはいなく、どうやって渡すか考えていた。
「桐生さん」
「……」
「あの、桐生さん?」
そこでやっと声を掛けられている事に気が付いた樹は、隣に座る天宮の方を見た。
「どうかしました?」
「いや、大したことではないよ……」
「そう、ですか……」
少し悲しそうな表情をする天宮。
天宮は樹が何かで悩んでいるのなら相談して欲しいと思った。でも、樹が話さないのなら無理に聞く必要はないのだから。
流石の樹も本人に告白の相談なんてできるはずもなく。刻々と時間だけが過ぎてゆく。
「あの」
「その」
「……桐生さんから先にどうぞ」
「……天宮こそ」
しばらくの間無言となり──
「「ぷっ」」
お互いが顔を合わせ笑い出した。
そんな笑いのせいか、樹の緊張や考えが一気に吹き飛んだ。
東と菜月、一条、朝比奈が、「早く告っちまえ!」と樹の脳内で叫んでいるように聞こえた。だが、それでも最後の一歩が踏み出せない。
でも、今のままではいやだ。そんな感情が樹を覆っていく。そして樹は、自然と口を開いていた。
「天宮」
「はい」
「……渡したい物がある」
「私に、ですか?」
樹は「そうだ」と言って静かに頷き、先程の紙袋にラッピングされて入れてある何かを取り出した。
取り出したそれは、天宮への誕生日プレゼントであった。
「桐生さんこれは?」
疑問を浮かべる天宮に、樹はゆっくりと口を開いた。
「天宮、誕生日おめでとう。俺からのプレゼントだ。受け取ってくれるか?」
「えっと、その……今日が私の誕生日だと、桐生さんは知っていたのですか?」
「ああ。朝比奈から聞いて準備しておいたんだ」
天宮は驚きながらも知った理由に納得し、ほんのりと頬を染めながらプレゼントを受け取った。
「ありがとうございます。その、開けても大丈夫ですか?」
「是非開けてくれ」
天宮は包装をゆっくりと開けていき現れたのは……
「マフラー、ですか?」
優しい赤色を基調としたチェック柄のマフラーだった。
「天宮が喜ぶかは分からないけどな」
「そんなことありませんよ。桐生さんが選んでくれたのなら文句なんて言いませんし、むしろ私のためにと選んでくれたのが嬉しいくらいです」
そう言って慈愛すら感じる優しい微笑みを樹に向ける天宮。その頬は先程よりも一段赤くなっていた。
「そう言ってくれて嬉しいよ」
「はい。その、試しに巻いてみても?」
「ああ」
天宮は俺の返事を聞いてすぐ、試すように首元にマフラーを巻いた。
「暖かいです。それに可愛いです」
それもそうだろう。ウールで作られたマフラーなのだから。値段もそこそこ張ったのだが天宮のその笑みを見れただけで、樹には十分過ぎた。
「気に入ってくれたのなら良かったよ」
「はい。大事に使わせていただきますね♪」
「おう」
マフラーを解き袋に戻した天宮へと、樹は意を決して口を開いた。
男にとって一生に一回しかないチャンスだと感じたからだ。
「天宮」
「……はい」
天宮は樹の表情が真剣なのに気づき樹の目を見つめた。
「俺、天宮の事が……」
樹は自身の顔に熱を帯びているのを感じた。実際樹の顔は赤くなっていた。
そして樹は──天宮へと想いを伝えた。
「──大好きだ」
とうとう告白してしまいましたね。
さあ、どうなるのやら……
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