46話:二人きりのクリスマス前編
「さーて。来週からは冬休みに入る。各々学生としての──」
ホームルームで担任の話を聞いて、冬休みと言うことを思い出した。
天宮のクリスマスプレゼントと誕生日プレゼントはまだ買ってはいない。それにあれから悩み悩んだ挙句、誕生日プレゼントは決まってもいなかった。
ホームルームが終わりを告げた。一限の授業は移動教室となっており、樹たちは移動を開始した。
移動の際、一条が樹に尋ねた。
「それでプレゼントの方は決まったのか?」
「……まだだよ」
「もうすぐクリスマスだぞ?」
「分かってる」
「また買い物に付き合おうか?」
一条は心配しているのだろう。樹は顔を横に振って否定した。
「いや、大丈夫だ。今度は一人で行ってくるよ」
「そうか」
それだけ言うと一条は何も言わなかった。
それから少しして冬休みに入った。
明日は天宮の誕生日となっており、そこで樹はプレゼントを渡すつもりでいた。
プレゼントもクリスマス用と誕生日の二つをしっかりと買ってある。
その日の樹は、自室のベッドにて横になって考え耽るのだった。
──クリスマス当日。
「今日は勝負の日だろ。行ってこい樹」
そんな父の言葉を背に、樹はプレゼントを持って天宮の自宅へと向かっていた。
冬の冷たい夜風が樹へと吹き付ける。あまりの寒さに樹は身をした。
樹はどうやって天宮にプレゼントを渡すか悩むのだが。
「誕生日プレゼントは見計らって渡すかな……」
そのまま樹は天宮のマンション前に到着した。天宮の部屋前に到着した樹はインターホンを鳴らした。
扉の向こうからパタパタと音がし扉が開かれた。
「待ってました。もう準備は出来てますよ。寒いでしょうし早く上がって下さい♪」
「悪いな。ありがとう」
樹が家の中に上がった瞬間、美味しそうな匂いが鼻腔をくすぶった。
それと同時に樹の腹が、ぐぅ~っと音を立てた。
「ふふっ、早く食べましょうか」
樹の腹の音に気が付いた天宮は口元に手を当てて笑っていた。樹が天宮の後に続いていくと、テーブルにはクリスマスならではの料理が沢山並んでいた。
「美味しそう……」
「ありがとうございます。冷める前にいただきましょう」
「ああ」
樹と天宮は椅子に座り合掌をしてから食べ始めた。樹が先に手を付けたのは――唐揚げであった。樹は唐揚げを口元へと運んで――パクリ。
外はカリッと中はジュワッと肉汁が口の中で弾けた。味付けも絶妙であった。
天宮は、唐揚げを美味しそうに食べる樹を眺めていた。
「どうした?」
樹と目が合った。
「――ッ!? な、何でもありません! おいしそうに食べてくれるものでつい……」
慌てて誤魔化すように言った天宮。顔は赤く紅潮していた。
「美味しいに決まっているだろ」
「ありがとうございます」
二人はそのまま料理を食べ始める。
食事の途中、天宮は樹の隣にある紙袋について尋ねた。
「桐生さん、その紙袋は?」
「こ、これか?」
樹は紙袋から取り出しそれを天宮に手渡した。
その渡した物は――
「クマさん、ですか?」
「俺からのクリスマスプレゼントだ」
「クリスマス、プレゼント……?」
「ああ」
「これって、もしかして……」
樹は頷いて答える。
「あのショッピングモールにあったぬいぐるみだ。前に行ったとき欲しそうにしていたから」
天宮は幸せそうな笑みを浮かべながら、ぬいぐるみを大事そうに胸元で抱え樹にお礼を言った。
「桐生さんありがとうございます」
「――ッ」
天宮の笑みの破壊力に樹は顔を真っ赤にしてしまった。
「お、おう……早く食べようか」
「ふふっ、はい♪」
そんなこんなで二人は食事の続きを楽しむ。
天宮は樹からのプレゼントを心から喜んでいた。内心では物凄くはしゃぎたいのだが、樹がいるため何とか踏みとどまっていたのだった。
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