41話:一条とのショッピングモール
「そうだったのか。まあなんて言うか、痴漢の辺りは流石一条って感じだな」
樹は一条を褒め称えた。一条の正義感が人一倍強いのは知っていた。他の男性ならそう簡単に行動に移す事が出来ないだろうし、もし行動に移していたのならその人が疑われていた事かもしれないのだから。
樹にそんなことを言われた一条は、頬をポリポリと掻きながら照れくさそうに笑った。
「話したんだ。樹も話してくれるんだよね?」
「聞かれたら話すつもりだったしな。それじゃ話すか。そうだな──」
樹は初めて天宮を見た時から話し始める。
樹のクラスに学校一の美少女と言われる人物──天宮真白がいることは知っていた。天宮が『聖女様』と言われる由縁も。
そんな天宮と一緒のクラスを過ごし樹が天宮に対して思った事は、『偽物の微笑み』であった。
何故そう思ったのかは分からなかった。だけど、そんな感じがしたのだ。直感というやつだろう。そして今に至りその予感が当たった事になる。
本当は今すぐにでも泣きだしたい。天宮はそんな感情を内に秘めていたのだから。
それから月日が流れ、天宮とはこれからも関係ないと思っていた樹。そんな樹が近所の公園にあるベンチにて、今にも泣き崩れそうな天宮を見けたのだ。
それから天宮と樹はちょくちょく会うようになり、ある日樹は天宮が抱えている事情を聞いた。それが原因だったのだう。樹は天宮へと次第に惹かれていったのだった。
「まあ、こんな感じかな」
「なるほどな。その悩みを聞いてから好きになっていったと」
「そうなるな」
樹はその『悩み』の事は言わなかった。言ってしまえば天宮からの信用は無くなるかもしれないからだ。
一条もそれが分かっていたのか、樹に聞かなかったのだろう。
それから二人はショッピングモールへと向かうのだった。
ショッピングモールに着いた二人。樹は一条のアドバイスを参考に見ながら見回る。一つはぬいぐるみと決まってはいる。問題は誕生日プレゼントとして渡す方であった。
「何がいいのだろうか……」
歩きながら周りを見渡し呟いた樹に、一条は口を開いて答えた。
「思いが籠ってればいんじゃないのかな?」
「……そうなのか?」
一条は歩きながら口を開いた。
「例えば好きな子からプレゼントを貰ったら、樹はどう思う?」
「それは嬉しいに決まってる。だが渡すのは俺だぞ? 天宮が俺のことをどう思ってるかによるんじゃ……」
「はぁ……本当に樹は鈍感だなぁ……」
「ん? 何か言ったか?」
ボソッと呆れ混じりに呟いたその声は、樹の耳には聞こえてはいなかった。
一条は、なんでない、と誤魔化して先に進んだ。
「天宮を連れて来てみようかな?」
樹が言った言葉に一条は反応する。
「いいんじゃないかな。まだクリスマスまではあるし。一度出かけてみるってのもアリかも知れない」
一条は樹の案に賛成のようであった。
「ならそうしてみるかな」
天宮を誘う事を決めた樹は、一条と一緒にショッピングモールを見て回るのだった。
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