22話:デート前日の緊迫感
天宮とのデート前日の土曜日。
樹の脳内では明日のシミュレーションがされていた。
そこに、扉がノックされる音が樹の部屋に響く。
「ど、どうしよう……明日大丈夫だよな?」
樹の耳にはノック音が聞こえていなかった。
「入るからね~」
入って来たのは菜月であった。
樹の部屋に入った菜月が目にしたのは、ベッドで頭を抱え苦しむ兄の姿であった。
「ど、どうしたのお兄ちゃん!?」
何があったのかと思い駆け寄る菜月に、樹はその声で振り返った。
「な、菜月か。何で勝手に入ってくる……入って来る時はノックくらい──」
「何回もノックしたからね!」
「……え? 本当か?」
「当たり前じゃない」
「す、すまん」
樹は謝る。そんな樹に、菜月は何があったのかを尋ねる。
「頭なんて抱えて何があったの?」
「……菜月は異性とデートに行った事があるか?」
質問に質問で返した樹であったが、菜月は素直に答える。
「うーん。無いかな?」
「何故疑問形なので?」
「……べ、別にいいじゃない! お兄ちゃんには関係ないでしょ!」
ツンツンする菜月であったが、樹にどうしてかを問うと。
「それが……明日は天宮と紅葉を見に行くわけなんだが……異性と初めて出掛ける訳であって……」
「ふふ~ん。そう言う事ね。それならこの菜月ちゃんに任せなさい!」
菜月は胸を叩いてドヤ顔を決める。
(本当に任せても大丈夫なものなのだろうか……)
自信満々な菜月を見て不安に駆られる樹であった。
それから、菜月による女性との接し方を教え込まれた樹はヘトヘトになるのであった。
だが、そんな樹の目は自信に満ち溢れていた。
(天宮には、いつもとは違う俺を見せてやるか)
「お兄ちゃん完璧主義なところがあるから、完璧過ぎて逆に失敗しそう……」
自信満々な兄を見て菜月はそう零すのであった。
◇ ◇ ◇
天宮はクッションを抱きながらソファーで横になり、明日の樹との紅葉観光について考えていた。
「ど、どうしましょう……桐生さんとの買い物はしてますが……こ、これってもしかしてで、デデデデートなんじゃ!?」
天宮は顔を真っ赤にしてクッションを力強く抱きしめ、どうしましょう、と呟いた。
相談するか迷った挙句──天宮は相談の為にスマホを手に取り電話を掛けた。
何回かのコールの後に相手が電話に出た。
その電話の相手とは──
「もしもしこんばんわ。天宮です」
「もしもし──ってまっしー!? まっしーからなんて初めてじゃない? 何かあったの?」
──朝比奈であった。
「その、ちょっとした相談なのですけど……」
「まっしーから相談なんて珍しいね。私で良かったら聞くよ?」
「ありがとうございます。その例えば──」
天宮は樹のことを言わないで、デートはどういうものなのかを尋ねた。
「え? もしかしてまっしーに彼氏が出来たの!?」
「ち、違いますって! 例えばです。例えば! ドラマを見ていて、デートとはどんなものなのだろうかとも思いまして」
顔を真っ赤に染めた天宮。電話越しで良かったと安堵する。
「そうなの? まああいか。そうだな──」
朝比奈は一条とどんな感じでデートするかを天宮に語った。
「って感じかな」
「なるほど。ありがとうございました」
「いいって。デート楽しんでね。皆には内緒にしておくから!」
「ちょっ、朝比奈さん違いますから!」
「私も明日つっちーとデートだから。おやすみまっし~」
「えっ! だからちが──」
プーッ、プーッと電話が切れた音がした。
「だからデートでは……」
顔を赤くしてそう呟いた天宮。
そんなこんなで樹と天宮の二人は、明日のデートに備えて寝るのであった。
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