15.5 桜木莉里という女
元々15話に入れる予定でしたが、かなり長くなってしまったので桜木さんについてはごっそり番外編として持ってきました。それではどうぞ。
――数時間前――
有森夏菜は独白の途中、彼女を思い出していた。
*****
私の真意を知る人はいない。
そう諦め、私は勝手に孤独の道に進む。
だけど、それが私の望みでもあった。
いずれこの女たちとも疎遠になるだろう。
深い関わりを持つだけ不幸が増える。
中学の頃のように。
だから、高校では関わり合いはしないようにする。
必要最低限しかしないよう――
「先輩! 今やったのってコツあるんですか!?」
「えぁっ!? えーっとね……」
妙に関わりを持とうとする女がいた。
桜木莉里。二つ下の後輩だ。彼女がバレー部に入部してから私の覚悟が少し揺らいでしまった。
あれほど深く関わらないと意気込んでいたのに。
みてて変なやつだなと思っていた。
周りにはいつも笑顔。八方美人とは違い、内からでた笑顔のように感じた。
制服の胸ポケットにはカラフルなヘアピンがいつも挟み込んであって、もちろん髪もカラフルなピンで装飾されていた。
そしてスマホのカバーはポップなシールでデコられている。
可愛いけど、少々外見がうるさくも思った。
さらに、彼女はある能力があったみたいだ。
「……ねえ、聞いてもいい?」
「はい! なんですか有森先輩!」
「なんで私カフェにいるの?」
「なんでって……いてほしいからですよ!」
「いや、待ち合わせだよ!? しかも莉里の……! 私全く関係ないし!」
「さみしいしいいじゃないですかぁ! そう言っていつもきてくれる有森先輩優しいですね!」
「全くもう……男と会うって言って心配だっただけだし……」
「うちは慣れっこですよ! 色んな男の人と付き合ってましたから! 弟もいますし!」
「そういうことじゃ――」
「あ、きた! いつも本当にありがとうございます……!」
「ほんと気をつけなよ全く……」
そう、男を惹きつけてしまう能力だ。
私の嫌悪する人種である。
莉里はいつも周りに男がいた。
付き合っては別れ、付き合っては別れを繰り返していた。
男がいないと何もできない女、と思っていた。
なのに、私はその事実を知ったときも関係を保ち続け、今では1番仲の良い親友に位置しているのだ。
なぜ私は莉里だけは心を許したのか。
彼女は愛嬌がある。正直、かわいい。
大きな二重の目、目尻にシワがつくくらい幸せそうな微笑み、たまに出る天然、天性のかわいさだ。
だけど、それだけじゃない。
忘れられない出来事がある。
私が莉里の惹きつけ能力を知ってしまったとき、当然ひどい言葉を浴びせてしまった。
でも、莉里は動じなかった。
むしろカラッとして、なお凜々しかった。
そしてこう私に言い放ったのだ。
『クズ……だとしても、それこそ人間なのかな、って思ってます!』
私は固まってしまった。
散々罵倒した(んだろうな、莉里が返事でクズって言ってるし)はずなのに、それでも折れなかった。
呆れた、とは違う。
通り越して、感心してしまった。
桜木莉里は、有森夏菜とは違う人種なんだ。
どんな人でも受け入れてしまう人種なんだ。
困惑と滑稽の混じった変な笑いがこみ上げてしまったのを今でも覚えている。
それで考えるのを放棄して許してしまった。
今でも莉里の男惹きつけ能力は健在だ。
だけど私はもう口には出せない。
私とはまた別の生き方だ。莉里が「いい!」と思ったらあえて突き進んでほしいくらいだ。
『有森先輩といると心が楽で安心します……! これからもしゃべり倒したいです!!』
いつでも元気だ、あの子は。
私も元気になる。
あ~、最近会えてないな。
詩乃とすれ違ったあの日以来か。
彼女は人生を楽しんでいるのだろうか。
次会ったら色々聞くか……。




