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赤眼の魔法剣士と不思議な少女  作者: 柊 真琴
第一章 新たな街シラノティア
2/2

小さな勇気

 それは緑の葉が生い(しげ)っている並木道――

 足場が悪い道を、地竜が引く荷車が走っている。その荷車の後ろに乗っている三人の青年達の姿があった。青年達は東の方の村から、南の方にある大都市ミラノティアに向かおうとしている。そこまで歩いて向かおうと思っていた時に、街まで行くという商人に会い、彼らの目的の街まで行くというので、近くまで乗せて貰っている。


「なあ、ミカ。あと街までどれくらいだ?」


  銀髪で十八歳ほどの青年――アルト=リヴァイアは、問いかける。前髪が左目にかかっていて、身長はそこそこ大きめ。赤い瞳で、性格は冷静で優しいが、口数が少ない。白のインナーに黒のロングコートでマントを羽織っている。腰やズボンにベルトを沢山付けていて、腰に剣を構えている。


「まあ待てよ。この雑木林を抜ければ見えてくるからさ」


 アルトにミカと呼ばれている黒髪の青年――ミカエル=ルークスは答える。黒髪のショートで黒い瞳に、眼鏡をかけている。性格は楽観的で、何事にも前向きな性格。麻製のインナーに胸部にレザーアーマー。手には革製のグローブをはめている。深緑色のマントを羽織って、背中に弓、腰に矢を装備している。


「ねえ、今目指してる街ってどんな街なの?」


 長い移動で若干疲れ気味な金髪の少女――シャルロット=ジョシュア。金髪ショートヘアで、ライトグリーンの瞳。性格は、真面目でしっかりしてそうだけど、少し天然な所がある。あと意外と寂しがり屋。白のオフショルダーの服で、水色のスカートを履いていて、水色の肩掛けを羽織っている。


「大都市シラノティアってところだよ。なあ、おやっさん。シラノティアってどんな街か分かる?」


 ミカエルが尋ねると、商人は答えた。


「シラノティア? ああ知ってる。ここらじゃ大きい街だからな。色んな物が出回ってるから、あらゆる所から来た人が街に訪れてるな」


 そんなことを商人と話していると、段々街が見えてきた。


「お? 見えてきだぞ、シラノティアだ」


 三人は、荷車の横から顔を出しながら前方に見える街を見ていた。街の周りは、高い壁で覆われていて、威圧感が凄い。

 ここから街まではそう遠くなく、ただ街の門まで続く一本道があるだけである。三人は荷車に揺られながら街の正門まで目指した。正門の近くで下ろしてもらって、商人に別れを告げた。正門の所に着くと見張りの騎士がいた。見張りの騎士は、アルト達を止めて簡単な質問をしてきたので、目的などを話した。


「……てなわけです」


「よし、通れ。ようこそ、シラノティアへ」


 そう言い、快く通してくれた。実際入ってみると、街は凄く(にぎ)わっている。街の中心部に大きな時計台と教会があり、街のシンボルなんだとか。もっと先には王都があって、よく騎士が見回りしてたりする。広場の方には、大きな噴水があって、時々屋台やパフォーマンスなどをやるらしい。あと、定番のデートスポットだとか…… まあ、そんな事は置いといて、とにかく大きな街だ。


 早速、街を色々散策したけど、鍛治屋に、百貨店、武器屋や闘技場などがある。これだけ店があれば、生活には困らないだろう。街で一番大きな通りには、所狭しと店があって毎日大勢の人達が利用している。酒場には、冒険者や住民などが集まり、賑わっていた。

 アルト達が、街を散策してると突然悲鳴が聞こえた。


「悲鳴?!」


「とりあえず向かおう!」


 そう言い、悲鳴がした方に急いで向かった。向かってみると広場でまだ幼い少女が男二人に捕らわれていた。どうやら、ここで屋台をやっていた商人と言い争いになり、その店の人と乱闘。そして店の人を殴り倒した後、苛立ちが収まらず少女を人質にしたらしい。


「近づくなよ! 少しでも近づいたらこいつの命はねえぞ!!」


「やめて! 離して!」


 一人の男はナイフを突き出し脅している。少女は、男に掴まれてる手を振りほどこうと、必死に泣きながら抵抗している。周りの人達は、騎士はまだかまだかと言っているだけで、止めようとするものはいない。


「酷い……あんな事するなんて……私、行ってくる!」


「……待って」


 シャルロットが、止めに入ろうとした時、アルトが止めた。「でもっ!」と反論したシャルロットだが、アルトはゆっくりと男達に近づいて行ってしまった。シャルロットは呼び止めようとしたが、ミカエルがシャルロットを止めた。

 アルトは、ゆっくりと男達と距離を詰める。周りから、「やめとけ!」 とか、「怪我するぞ!」 とか言われてるけど、全くお構い無し。その声に男達も、アルトに気づいたのか突っかかってきた。


「あぁ? なんだお前。部外者は引っ込んでろや!」


 二人の男達の中の大男の方が、先に威嚇してきた。


「……離せ」


 アルトは威嚇に全く動じず(つぶや)いた。


「あぁ?」


「さっさとその娘を離せと言っている!」


 と、さっきよりも大きな声で言い返す。


「どうした? かかってこいよ」


 その言葉が引き金となったか、大男は手の関節を鳴らしながら、ニヤニヤしながら近づいてくる。


「な、なあ! あれ、あんた達の仲間だろ?! 助けなくていいのか?!」


 周りの人がミカエル達に聞いてきた。


「あー、心配しなくても大丈夫、大丈夫。ああ見えても、あいつめっちゃ強いから」


「あーそうだったね。養護施設のころ喧嘩とか負けたことなかったんね」


 シャルロットも、昔のアルトを思い出してクスクスと笑っている。アルトは、魔法を使えるが魔法はあまり使わない。理由としては、魔法を使用すると、魔法を扱うためのマナを消費するので体力消耗が激しく、本当に必要とする時にしか使わない。だから、昔から姉や姉の仲間などに武術を教わっていた。


「そういうことだから。まあ、見てれば分かるよ」


 アルトの目の前に、大男が立ちはだかる。アルトは、全く動じない。大男が、「死ねやー!」と言いながら殴りかかってきたが、その拳を受け流し、そこから背負い投げをし、鈍い音をたてながら大男は、地面に頭から叩きつけられ、完全に気絶してしまった。アルトは、ゆっくり顔をあげて、もう一人の男を睨みつけた。


「さあ、次はお前だ」


 そしたら、少女の腕を掴んでいたもう一人の男が、少女を突き飛ばし声をあげながらナイフを突き出してきた。アルトはそれをひらりとかわし 、顔に回し蹴りを食らわした。男はよろけて、近くにあった樽置き場に突っ込んだ。周りにいた人達は皆、歓声の声をあげている。


「す、凄い……!」


「ほらね。言った通りだろ?」


 そしたらアルトが、ミカエルを呼んだ。


「おーい、ミカ。ちょっと騎士を呼んできてくれ」


「あー はいはい。分かりましたよ」


 と返事をして、ミカエルは騎士達を呼びに行った。一人残ったシャルロットは、すぐさま少女のもとに駆け寄った。よほど怖かったのか、少女は泣きながらシャルロットに抱きついた。シャルロットは、「大丈夫だよ、大丈夫」と、頭を撫でて慰める。アルトも、少女の元に向かおうとした時、後ろから物音がする。さっき樽に突っ込んだ男が、よろつきながら立ち上がっていた。


「ち、ちくしょう……舐めやがって……」


 そしたら声を荒らげながら殴りかかってきた。それに気づいたシャルロットは、咄嗟(とっさ)に叫んだ。


「アルト! うしろっ!!」


「懲りないやつだ。使いたくはないがこれでターンエンドだ」


 男が、アルトに向かって殴りにかかる。だが、次の瞬間。強い風が吹くと同時に、男は吹き飛ばされ、噴水のところに突っ込んで水しぶきが上がる。周りにいた人々は、何が起こったのか理解出来ていない感じで唖然としていた。アルトは殴られる直前に、魔術〈疾風(ヴィラーヒ)〉を発動し、男を吹き飛ばしたらしい。


 だけど次第に見ていた人達がざわつきはじめる。アルトの顔に赤色の紋章がある。これは、魔術を使える者にあるもので、魔法を使うとこういった紋章が顔や腕などに現れる。


 人種にも種類があって、ミカエルのような能力がない純粋な人間以外にも、アルトのように魔力を操ることの出来る人間がいる。シャルロットも多少は使うことができるが、攻撃などの黒魔法より、回復などの白魔法を操ることができる。ただ魔力を使える人が、アルトのように誰かを守る為ではなく、その能力で人を殺めたり、人間同士の争いに乱用するものも少なからずいる。だからなのか、魔術を使える人々を批判する人も多い。


「魔法を使う悪魔め! この街から出ていけ!!」


「そうよ! この街から出ていって!」


 知っていたさ。魔術を使える奴は、人間とは呼べないってことぐらい。どこからともなく罵倒する言葉が聞こえてくる。さっさとここから立ち去ろうとした時に、一人の大きな声が聞こえた。


「もうやめて!!」


 その声にさっきまでの言葉が一気に静まった。声を上げたのは、助けた少女だった。少女は、手を力強く握り必死に訴えた。


「なんでそんな事を言うの! この人は、私を助けてくれたんだよ。 確かに魔術を使う人を批判するのも分かる。だけど……だからってそんな事を言うのは間違ってるよ!」


 正直、凄いと思った。こんな歳の子がこんな事を言うなんて。きっと、この場にいる人全員が思ったことだろう。そして、少女のそばで黙って聞いてたシャルロットも我慢の限界がきてしまったのか批判した人に向かって反論した。


「この子の言う通りだわ! あなた達も見てたでしょ、アルトはこの子を助けたのよ。魔術を操る人全員が悪いわけがないじゃないくらい貴方達だって分かるでしょ? なのにあんな事を言うなんて最低ね!」


「まあ、魔力とか魔術をどうのこうの言うのは自由だけど、仲間を悪く言うのは気に障るなあ」


 ミカエルも仲間を悪く言われるのは気に食わないのか、片足で足踏みしながら訴える。批判した人々は、狼狽(うろた)えた表情を浮かべていた。きっとこの人たちも分かっているのだろう。こんな事を言ってもしょうがないってことを。ただ魔法が原因で、家族を失っている人もいる。アルトは、複雑な気持ちだった。この街にいていいのだろかと。出て行ったとして何処に行けばいい? なんて事を色々考えていたが、考えていてもしょうがないので、ミカエルとシャルロット、あの女の子を連れてその場を後にした。

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