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九章
池田小春の様子がおかしい。今週の彼女の日記は、どのページも一行だけしか文章が書かれていなかった。いつもは「せんせい、ぜったいよんでね」という言葉とともに、ページいっぱいに書かれているのに……。絵だって他の子は鉛筆で描かれただけの子も多いのに、彼女はいつも色鉛筆で色とりどりに色を塗る子だった。それなのに今週は絵も描かれていなかった。親に虐待されているとしたら、その怒りは外へ向かって放出する子が多い。自分より弱い子の虐めに走ったりするものだと思う。そうでなければ、登校拒否になったり、極度の人見知りをしたりするものじゃないだろうか。それなのに池田小春は、本当に明るい性格の可愛い子だった。だけど、それは先週までの話だった。もしかしたら、家で大変なことが起こっているのかもしれない。胸騒ぎがして仕方ない。とにかく、彼女の家庭訪問が今週の土曜日に予定されているから、そのとき母親に会って詳しく話を訊いてみようと思う。