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長い長い夢の中で  作者: 早瀬 薫
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三十九章

 どようびになったので、おばあちゃんのところへきた。お父ちゃんといっしょにひみつのへやをさがしあててから、わたしはひみつのへやにばっかりいるようになった。だって、ここにはおもしろいものがたくさんあるんだもん。ブロックもいえじゃすこししかないけど、ここにはいっぱいあるので、いろんなものをつくることができる。だから、わたしは、お父ちゃんのいえ、つまりいまわたしがすんでいるいえを、まずブロックでつくって、そのまわりに、へやをいっぱいつぎたしていって、わたりろうかでかくれがをたして、にわもひろくして、すべりだいもすなばもたして、いぬごやもとりごやもたして、ものすごくおっきいいえをつくった。お父ちゃんがうれっこさっかになったら、そういういえにすみたいといっていたから。でもわたしは、いまのお父ちゃんのいえもすきなんだけどな。

 ブロックでいえをくみたてたら、すこしあきてしまったので、こんどはかみしばいをみてみた。なんだか、えがすごかった。おうごんバットとかあけちこごろうとか、えがぜんぜんかわいくなくて、こわかった。でもおはなしは、ものすごくおもしろかった。さつじんじけんばっかりおこるから。さつじんじけんがすきなのは、お父ちゃんににてるからかな。つぎにあそんだのが、おままごと。ちいさなながしやガスコンロやすいはんきやなべややかんやフライパンは、なんだかがすごくかわいかった。おまままごとセットのおくにおまんじゅうのはこがあって、ふたをあけてみたら、中におもちゃのやさいやくだものやハンバーグやめだまやきやソーセージがはいっていた。わたしはそれをおさらのうえにのせて、ならべてみた。フォークとナイフもならべてみた。「どうぞ、めしあがれ」といってみたけど、おままごとって、ひとりでやってもぜんぜんつまんない。おばあちゃんにきいてみて、もってかえってもいいなら、こんど、こはるちゃんといっしょにあそぼうとおもう。

 さいごにやっぱりきになるのが、お母さんのアルバム。お母さんのしゃしんは、ずっとみていてもあきない。でもやっぱり、いきているお母さんにあいたかったな。わたしはお母さんのことをちっともおぼえていない。なんでだろう? なんでぜんぜんおぼえていないんだろう? だからお母さんのアルバムはわたしにはたからものなんだ。お母さんがひみつのぶんしょにかいたとおり、ひみつのへやにはたからものがかくされていたんだ。お母さんのアルバムはたくさんあるから、みるのにじかんがかかった。だからすごいながいじかん、ひみつのへやにとじこもってアルバムをみていたんじゃないかとおもう。そうしたら、としょしつにおてつだいのやまださんとさとうさんがはいってきた。これからとしょしつをそうじするみたい。だけど、わたしはひみつのへやのドアをしめていたから、ふたりともわたしがひみつのへやにいるとはおもってないみたいで、ふたりでおしゃべりをはじめた。ぬすみぎきするのはよくないことかなとおもったんだけど、アルバムをもうすこしみていたかったので、だまってひみつのへやにこもっていた。

「こんどのみさとさんのたんじょうびに、おくさまはほうようをなさるっていってたわ」

「そっか……。じゃ、いろいろまたじゅんびしないとね。でも、おくさまはえらいね。だって、まいとしほうようをなさってるんだもの。あれから、ななねんたったのね。はやいなぁ……」

「はやいね……。ふつうはなくなったひにほうようをするのに、おくさまは、みさとさんがなくなったひにほうようはしたくないんでしょうね」

「だって、さやかちゃんのおたんじょうびだもの。そりゃそうよね」

「でも、おきのどくね。みさとさんはいいかただったから」

「さやかちゃんをのこしてなくなるなんて、みさとさんもさぞやこころのこりだったでしょうに……」

 わたしはびっくりした。わたしのたんじょう日に、お母さんがしんだ……。おてつだいのやまださんは、いま、たしかにそういった。もしかして、お母さんはわたしをうんだからしんだの? わたしはかくれていられなくなって、ひみつのへやからとしょしつへとびだした。そしたら、おてつだいのやまださんもさとうさんも、ものすごくびっくりしていた。そして、わたしのかおをみて、やまださんが「おじょうさま、もしかして、いま、わたしたちがはなしていたことをきかれましたか?」といったので、わたしはうなずいた。わたしは「お母さんはわたしのせいでしんじゃったの?」とやまださんにきいたら、やまださんもさとうさんもきゅうになきだして、「ごめんなさい」というだけで、なんにもこたえてくれなかった。こたえてくれなかったので、いそいでおばあちゃんのところへいって、おなじことをきいてみたら、おばあちゃんもなんにもいわず、なきながらわたしをちからいっぱいだきしめた。


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