三十七章
今日はすごく晴れていて、水色のシフォンのワンピースを着るのに相応しい日だった。外に出ると風がワンピースの裾をヒラヒラとはためかせた。今日、このワンピースを着て、悟とデートをする予定ならどんなにいいだろう?と思った。けれども、そんな楽しい妄想と全く反対のことを私は今から実行しようとしていた。宮原悟と出逢い、私の人生は再生するかのように思えた。けれども、その夢も打ち砕かれた。もはや、私は生きる気力を失っていた。
電車に乗り池袋駅に着いた。通いなれたかつての通勤路。村上修司の営むスタジオに、私は何度通ったことだろう? 池袋は雑多な街だけれど、思い出深い場所だった。
人ごみを掻き分け、上を見上げながら歩いた。何も考えずに、私はあるビルのドアを開けた。受付に警備員らしき男性がいたけど、呼び止められなかったし、私はそのままエレベーターに乗り、Rと書かれた屋上行きのボタンを押した。エレベーターは一度も止まることなく、屋上へ着いた。エレベーターを降り、重い鉄のドアを開け、屋上へ出た。屋上でも風は心地よく私の頬をなでた。
なんて清々しい日なんだろう?
私は屋上の端へ駆けていき、鉄柵を乗り越え、ビルの端に立った。
ここから飛べば、別世界へ飛んでいける!
私は躊躇することなく、空へ向かって飛んだ。