三十六章
きょうは一にち、とってもたのしかった。こはるちゃんとみよしさんとすずきさんと四にんで、おひるやすみにかくれんぼをした。うんどうじょうだとひろすぎるので、たいいくかんでやった。こはるちゃんがおにになったので、わたしとみよしさんとすずきさんは、いそいでかくれた。でも、みよしさんとすずきさんて、ほんとにうっとおしいというか、おもしろいの。たいいくかんのぶたいのしたにはとびらがあって、とびらをあけて中をみてみると、ものいれになっていて、そこにパイプいすがたくさんはいっているんだけど、そこのすきまにわたしがはいろうとしたら、みよしさんとすずきさんもいっしょにはいってきて、ぎゅうぎゅうづめになった。三にんがおなじところにかくれることないでしょ? わたしは「もうっ!」といったけど、みよしさんもすずきさんもくすくすわらっていて、わたしもいっしょにくすくすわらっていたら、あっというまにこはるちゃんにみつかっちゃった。わたしは、みよしさんとすずきさんに「だからいったでしょ!」とおこったけど、四にんで大わらいをした。三にんがいっぺんにみつかったので、こんどはだれがおにになるのか、すごくもめた。「わたしがみつけたかくればしょだから、みよしさんかすずきさんがおにになればいいじゃん」といったら、みよしさんとすずきさんがものすごくおこったから、じゃあ、かくれんぼはもうやめようということになって、こんどはおにごっこをすることにした。おにごっこって、やっぱりおにをきめないとだめじゃん! だから、またもめたんだけど、こはるちゃんが「ふたりともおにになればいいよ」といったので、ふたりがいっぺんにおにになった。わたしとこはるちゃんはきゃあきゃあいいながら、ひっしでにげた。わたしもこはるちゃんもみよしさんもすずきさんもはしりすぎて、みんながぜぇぜぇいってたけど、こんなにおもしろいおにごっこはやったことがない。こはるちゃんがいるとたのしいな。みよしさんもすずきさんも、きょうはすごくおもしろかったといった。
いえにかえったら、お父ちゃんが大ごちそうをつくっていた。あれ? きょうはなにかたいせつな日だったっけ? いっしょうけんめいかんがえてみたけど、わからなかった。お父ちゃんはステーキとポテトサラダとコンソメスープとサーモンのカルパッチョをつくっていた。「どうして、こんなにごちそうをつくっているの?」ときいてみたら、お父ちゃんはズボンのポケットから小さなかみぶくろをとりだして、わたしに「はい、どうぞ」とくれた。かみぶくろをあけてみると、中にジグソーパズルのピースが入っていた。そのピースをよくみてみると、なんと、わたしのかおとからだのしゃしんがいんさつされたものだった。
「え? これなに?」
「なにって、ジグソーパズルのピースだよ」
「でも、これ、わたしだよ」
「そうだよ。お父ちゃんが、わざわざさやかのしゃしんをパズルのピースにしたんだから」
「ふーん、ありがと」
「ふーんって、それでおわりじゃないから!」
「でも一っこだけあってもしようがないよ」
「一っこじゃないってば! ほら、もう! なにかわすれてるでしょ?」
「……」
「一つだけたりないものがあったでしょ?」
「あーっ! もしかして、モンブランの……」
「そうだよ」
「ほんとにっ!?」
「うん、ほんと。はめてみてごらん」
わたしははしっていって、モンブランのジグソーパズルのあなのあいているところに、お父ちゃんからもらったピースをはめてみた。ぴったりはまった。できたジグソーパズルをいすをもってきて上にのぼって、たかいところからみてみた。モンブランのきれいなやまのまえで、お父ちゃんとわたしとお母さんがならんでわらっていた。お母さんとわたしがいっしょにいる! しかもお父ちゃんと三にんで! わたしはうれしくてお父ちゃんにとびついた。お父ちゃんは、「そんなによろこんでくれてありがとう」といった。わたしがいつまでもとびついたままだったので、お父ちゃんは「大きいあかちゃんだね」といって、となりのへやのぶつだんのまえまではこんでくれた。ふたりでぶつだんのお母さんのおいはいをおがんだ。ぶつだんの中のお母さんのしゃしんは、きのうとおなじはずなのに、きのうよりすごくわらっているようにみえた。
お父ちゃんとふたりでごちそうをたべた。すごくおいしかった。
「これって、もしかして、お母さんの大こうぶつばっかりなの?」
「そうだよ。でもさやかもすきでしょ?」
「うん!」
「そっか、よかった」
「じゃ、あしたもステーキにして!」
「それはむり!」
「なんで!」
「なんででも!」
「どうして!」
「お父ちゃんはびんぼうだから!」
「だったらはやく、うれるミステリーのしょうせつをかけばいいじゃん!」
「もう、これだから、こどもはざんこくだよ……」
「なにが?」
「かけるもんならとっくにかいてます」
「ああ、そうですか」
とわたしがいったら、お父ちゃんがわらいころげた。せっかくごちそうをたべたのに、デザートがないので、わたしがじどうかんのせんせいにおしえてもらったホットケーキをつくってあげた。お父ちゃんは、このあいだいっていたように、お母さんのすきだったアップルティーをいつのまにかかってきていて、ホットケーキといっしょにのんだ。お父ちゃんはホットケーキとアップルティーでなきそうになっていた。わたしが「アップルティーっておいしいね」といったら、お父ちゃんは「うん」といった。お父ちゃんは「ホットケーキもすごくおいしいよ」とわらった。