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長い長い夢の中で  作者: 早瀬 薫
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三十章

 こはるちゃんが、あしたがっこうにいくといえにでんわがあった。わーい、やったー! こはるちゃんのお母さんからでんわがかかってきて、お父ちゃんは、すごくながいあいだはなしをしていた。お父ちゃんはすごくうれしそうだった。あれ? こはるちゃんのお母さんとうちのお父ちゃんって、そんなになかよしだったっけ? お父ちゃんは、「さやか、あしたははやめにいえをでて、こはるちゃんのいえまでいって、こはるちゃんといっしょにがっこうにいってあげなさい」といった。わたしは「うん!」といった。あしたがっこうにいったら、こはるちゃんとなにをしようかな? うんどうじょうでいっしょになわとびをしようかな? それともクレヨンでぬりえをしようかな? としょかんでほんをよもうかな? こはるちゃんががっこうにきたら、いっしょにやりたいことがいっぱいあるよ!

 きょうのゆうはんは、おやこどんぶりだった。お父ちゃんは「おやこでたべるおやこどんぶり!」といったので、わたしが「さぶい!」といったら、お父ちゃんは「こら!」といった。でも、おやじぎゃぐだよ。やっぱりさぶいよ。お父ちゃんは「おやこどんぶりって、にわとりさんがおやこでにんげんのぎせいになって、かわいそうだなぁ」とあかるくいったので、わたしは「ぜんぜんかわいそうじゃないみたい」といった。ごはんのあと、お父ちゃんがわたしのために、めずらしくかってきてくれていたモンブランケーキをたべた。やっぱりケーキっておいしい。お父ちゃんは「モンブランのパズルかんせいきねんにモンブランケーキ!」といった。わたしはまた「さぶい!」といった。そしたらお父ちゃんはまたぶすっとした。「でも、お父ちゃん、パズルはかんせいしてないよ。あと一っこピースがみつからない」といったら、お父ちゃんは「そうだね。どこにいったんだろうね? ぜったいみつけなくちゃね」といった。モンブランケーキはおいしかったけど、でもやっぱりイチゴのショートケーキのほうがすきかな。そうおもったから、「こんどはイチゴのショートケーキにしてね」といった。そしたらお父ちゃんは「さやかはイチゴのショートケーキがすきなの?」とおばあちゃんとおなじことをいった。だからわたしは「うん。お母さんもすきだったんだよね?」ときいた。お父ちゃんは、わたしがお母さんのことをあんまりきいたりしないから、すごくびっくりしたかおをしてた。だけど「そうだよ」とえがおになってこたえてくれた。

「それとアップルティーもすきだったよ。イチゴのショートケーキといつもいっしょにのんでたんだよ。こんどかってきて、さやかにものませてあげるね」

「ほかにはなにがすきだったの? チョコレートも好きだった?」

「うん」

「ポテトチップスも?」

「うん」

「カレーライスもクリームシチューもおやこどんぶりも?」

「うん」

「じゃあ、むしもすきだった?」

「うん。ああ、だけど、むしはすきだったけど、さやかとおなじでカエルがきらいだったよ」

「え、ほんと?」

「うん。カエルってお父ちゃんはかわいいとおもうけど、お母さんはアマガエルもきらいだったな……」

「ふーん、さやかとそっくりだね」

「うん。だからお母さんはゴキブリにはすごくつよくて、スリッパで『バンッ!』ってつぶしてた」

 お母さんってすごい。わたしとおなじことをしてる。

「で、お父ちゃんは、にげまくってるんでしょ?」

「うん」

「だめだなぁ、お父ちゃんは……」

「だけどお父ちゃんはヘビとかカエルはへいきだったから、お母さんとやまにのぼったときは、いつもお母さんのためにおっぱらってあげてたんだよ」

「お母さん、うれしそうだった?」

「まぁね」

「ふーん」

 お父ちゃんはすごくうれしそうだった。「ほかになにかききたいことがある?」といったけど、すぐにはおもいつかないから「おもいだしたらまたきいていい?」といったら、お父ちゃんはわらって「いいよ」といった。だけど、もう一つききたいことをきゅうにおもいだしたから「あ、おもいだした!」といった。

「なに?」

 いいにくかったけど、ゆうきをだしてきいてみた。

「お母さんはなんでしんじゃったの?」

 そしたらお父ちゃんのかおがきゅうにくもった。

「もしかして、きいたらだめだった?」

「……」

「おばあちゃんにもきいたんだけど、おばあちゃんもないてこたえてくれなかったの」

「そうか……。いまはしらないほうがいいとおもう。さやかがおとなになったら、はなしてあげるよ」

とお父ちゃんはいった。


 ふとんにはいって、お父ちゃんと「ガリバーりょこうき」をいっしょによんだ。いっしょによんでいて、このあいだ「せかいのやま」にかみがはさんであったことをおもいだしたので、あわててもってきてお父ちゃんにみせた。お父ちゃんはすごく大きく目をあけて、かみをひろげてみていた。「これ、お母さんがかいたのかな?」とわたしがいったら、「そうかもしれないね」とお父ちゃんがいった。「こんどのどようびは、お父ちゃんもおばあちゃんちにいっしょにとまればいいよ」とわたしがいったら、お父ちゃんは「そうしようかな」といった。


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