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長い長い夢の中で  作者: 早瀬 薫
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十二章

 おばあちゃんちは、ほんとうにおもしろい。だって、ものがたくさんあるんだもの。うちにはへやが四つしかなくて、一つはだいどころだから、ほんとは三つなんだけど、おばあちゃんちは、へやが十五こもある。一ばんすきなへやはおうせつしつで、どうしてすきなのかというと、てんじょうからシャンデリアがぶらさがっているから。シャンデリアはほんとうにきれい。わたしがあんまりてんじょうばっかりみているから、おてつだいのやまださんが、きゃたつをもってきてくれてシャンデリアをちかくでみせてくれた。わたしはおれいに、お父ちゃんがおばあちゃんにもってきたくりいりようかんをれいぞうこからだしてきて、おてつだいのやまださんに「どうぞ!」といっていっしょにたべた。おばあちゃんは、れいぞうこの中のはんぶんになったようかんをみて、「あら? わたし、ひとりでこんなにようかんをたべたかしら?」とふしぎそうにしていたけど、わたしはしらんぷりをした。

 おうせつしつにはランプもあって、ひょうめんにとんぼやちょうがくっついているものがある。そのらんぷもすごくすき。らんぷをつけたりけしたりしていたら、おばあちゃんが「さやかは、そのらんぷがすきなの?」といったので、「うん!」というと、「じゃあ、おばあちゃんがしんだら、そのらんぷをさやかにあげるわ。ちゃんとちょうめんにかいておくわね」といった。おばあちゃんは、さやかにのこしたいものは、なんでもちょうめんにかいてくれているといっていた。わたしはおばあちゃんがそういってくれるのはうれしいけど、うちはお母さんがいないし、「そんなことをいってはだめ! おばあちゃん、ながいきして。お母さんみたいにいなくならないで」といったら、おばあちゃんは、わたしのかおをじーっとみて、なみだをぽろぽろこぼした。おばあちゃんは、わたしがお母さんのことをいうと、いつもなく。だから、お母さんのことをあまりはなさないようにしているんだけど、でもほんとうは、わたしはおばあちゃんにお母さんのことをたくさんききたい。でも、やっぱり、おばあちゃんがなくから、お母さんのことをなかなかきけない。

 おうせつしつのつぎにすきなのは、お母さんのへや。お母さんがお父ちゃんのところにおよめにいくまで、つかっていたへやだ。だけど、おんなのこのへやだとおもえないくらい、このへやにはなんにもない。あるのはへんなパズルばっかり。ちえのわだったり、ルービックキューブだったり、くろすわーどやすうどくのほんだったり、はこにはいったままのジグソーパズルだったり……。ぴんときたので、お父ちゃんにきいてみたら、やっぱりお父ちゃんがお母さんにプレゼントしたものばっかりだった。だから、けっこんするときに、お母さんはぜんぶもってこようとしたのに、うちのいえがせまいので、しかたなくこのへやにおいてきたらしい。お父ちゃんとお母さんはだいがくのパズルサークルでしりあったんだって。だいがくってへんなクラブがあるんだね。わたしのがっこうには、すいそうがくとかバスケットボールとかサッカーしかないよ。

 お母さんのへやで、ひとつだけおんなのこらしいものがある。それはなにかというと、きょうだい。きょうだいってかがみのことだよ。きょうだいのひきだしをあけると、そこにいっぱいネックレスとかゆびわとかぶろーちとかがはいっている。あかやあおやいろんないろのほうせきがすごくきれいで、どうしてここにはいったままにしてるのかなとおもって、おばあちゃんにきいたら、「お母さんは、ほうせきは、あまりすきじゃなかったのよ」といった。わたしは「ふーん。わたしはすきなのに……。もらってもいい?」といったら、おばあちゃんは「だめ」といった。わたしは「どうしてだめなの?」といったけど、おばあちゃんは「どうしても!」といって、「そんなにほしいのなら、おばあちゃんのをあげるわ」と、あかいいしがついたおばあちゃんのネックレスをくれた。なんでなんだろう?とおもってずっとかんがえてたんだけど、なんでだかわからなかったので、ゆうはんのときにおじさんにきいてみたら、おじさんは「あれは、さやかのおとうさんじゃないおとこのひとにもらったものばかりだからだよ」とすぐにおしえてくれた。それをきいて、わたしはなんだかすごくかなしくなった。おばあちゃんは、そんなことをいったおじさんをすごくしかってた。おじいちゃんはなんにもいわずに、ただこわいかおをしていた。だから、わたしもあんまりほうせきがすきじゃなくなった。

 お母さんのへやのつぎにすきなへやは、としょしつ。さいしょは、としょしつはあんまりすきじゃなかった。だって、くらくてかびくさいんだもの。それにそこにあるほんは、かんじばっかりとかえいごばっかりとか、よめないしぜんぜんおもしろくないの。でもあいているかべに、だいすきなモンブランのしゃしんがかざってあるので、だからすきなの。なんですきなのかというと、モンブランはお父ちゃんとお母さんが、しんこんりょこうにいったところだから。お母さんはパズルもすきだけど、やまのぼりがだいすきで、だからしんこんりょこうもモンブランにしたんだって。うちにはモンブランのしゃしんがいっぱいあって、お父ちゃんとお母さんが、モンブランでふたりでにこにこしながらうつってるものもある。だからすきなんだ。うちに、モンブランのジグソーパズルがあるんだけど、そのパズルは、このとしょしつにかざってあるモンブランのしゃしんとおなじで、お父ちゃんがおもちゃやさんにたのんで、とくべつにジグソーパズルにしてもらったんだって。それをわたしのたんじょうびにくれたわけ。あしたからつくろうかなとおもってるんだけど、千ピースもあるからすごくじかんがかかるとおもう。だけど、おとうちゃんは、「はやくつくってくれないと、そうじができないからね」とわたしにいった。だって、ジグソーパズルをつくるときは、いつもかんせいするまで、たたみのうえにひろげっぱなしにしてるから。でも、お父ちゃんは「できたら、きっとびっくりするよ」とわらいながらいったので、なんでかな?とおもっている。おとうちゃんはへんじんだから、きっとなにか、しかけでもしてるんだろうとおもう。

 だけどね、ほんとうは、おばあちゃんちで一ばんすきなのはへやじゃなくて、おにわなんだ。おばあちゃんちのにわにはいろんな木がうえてあって、しかもくだものの木がおおいから、わたしは木にのぼって、しょっちゅうくだものをむしってたべている。おみせでうっているものより小さかったりするけど、すごくおいしいの。このあいだはビワをたべた。おてつだいのやまださんにてつだってもらって、二十こもとった。ふたりで十こくらいたべて、あとはおてつだいのさとうさんにぜんぶあげた。もうすこししたら、こんどはぶどうがなって、そのつぎはなしで、そのつぎはかき。すごくたのしみ。こんど、たくさんくだものがとれたら、こはるちゃんちにもっていってあげようとおもう。


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