言の葉
こちらは、2007.2.16に自サイトにて掲載したものです。
なんで...いったい昨日何が起きたの!?
低血圧な私はなぜかすんなりと目を覚ませた。
理由は、とてもここちがよかったから
目覚めたばかりの目をこすりん~っと伸びをした。
しばらくぼぉーとし、しばらくして覚醒した。なんだろう。
とても違和感がある、そして気が付いた。
自分が身体になにも纏っていないことに...
「いま 何時?」
そう聞こえ、私はベッド脇にある机の時計に目をやった。時計の針はお昼を指していた。
「12時...」
んっ?私は一人暮らし。今の声は誰?
私は恐る恐る隣をみた。
「っ――――」
声にならなかった。そして冒頭に戻るのだ。
「小田原、もーちょい寝よっ」
そう呟き、私の腰に手を回した。
声の主は、会社の上司...寝起きで、普段より声が低く擦れているがまちがいない。いつもはきちんとセットされた髪型。いまは無造作にあっちこっち跳ねている。
「川島チーフっ!!」
寝ぼけている彼の耳元で叫んでしまった。
「うるさい。」
彼はそういい、私をひっぱり口を塞いだ。
唇が触れるだけの口づけ、そしてそのまま彼の胸に抱き抱えられた状態になってしまった。
どうにか、抜け出そうと試みるが彼の腕はびくともしなかった。
しばらくすると彼からは規則正しい吐息が...
私は諦めて、彼がまた目を覚ますのを待とうと決めた。
鼻先をくすぐるようないい馨
「ふぁ~」
私は大きなあくびをした。なんか不思議な夢みたな...どんな夢だったけ? 確か、目を覚ましたら隣に人が...
「えっ!?」
なんで私、裸なの? そして気付いた。
「...ココどこ?」
目の前に広がる白を基準とした部屋。寝室のような部屋
私は慌てて、シーツを纏いベッドから立ち上がろうとした。
ズキンッ
いきなりの下腹部の激痛...えっ!?
私は力が入らずベッドから落ちてしまった。
これ以上 考えられなかった。
昨日...同じ部署の人たちと 飲みに行って...いつもは直帰の私もさすがに彼氏にふられたばかりで一人で部屋にいたくなくて参加した。
みんなでわいわいしてて 遅れて来た川島チーフ
その時、私どうしていたっけ?
記憶が無い...頭の回転を フル活用していると
「お前、もしかして昨日のこと覚えていない?」
恐る恐るチーフが言葉にしたのがわかった。
しかし、私は何も考えられず首を縦に振った。
「悪かった。とりあえず服を着てリビングにおいで。ご飯を作ってるから。」
チーフは私に洗濯したであろう昨日の服を差し出した。
そして寝室から出て行った。
「悪い。遅くなった。」
そういい部屋に入ってきたチーフ
あの飲み会以来、私たちはどちらが誘うという訳でもなく時間があればお互いの家を行き来していた。
決して、つきあっているわけでもない。
だた、私は仕事とプライベートの彼のギャップにやられてしまっていた。
あの日も初めてだった私の身体を気遣い
とても優しく接してくれた。
そして今も変わらず優しく接してくれる。
あの時と違うといえば、あれからチーフは 私に触れなくなった。
いい雰囲気になることはある。
お互いの距離が縮まり唇が重なる。
そして、そのまま...終了...
そんなこんなであの日から3ヶ月が経った。
「小田原...」
チーフの家で夕食後の片付けをしているとふいに呼ばれた。
「なんですか?」
手を休めず声だけで返事した。
いつの間にかチーフは真後ろにいたらしく、身体ごと振り向かされた。
「まだ 途中なんですよ。」
別に怒っているわけではないが、怒ったフリをしてみたが・・・
「これ..」
差し出されたチーフの手...
そこには、一つの小箱が乗っていた。
首を傾げつつも私は 手を伸ばし受け取った。
「なに?」
私の言葉に彼は顔を赤くし呟いた。
「3ヶ月記念」
ボソッと、そう呟いた。
「..私たちが関係もって??」
私はわけがわからず、つい言葉が出てしまった。
と、いっても本音・・・でもなんだか後ろめたさがある。
「俺たちが 付き合い始めてからだっ!!」
叫んで 訂正するチーフ
「...チーフって」
私の言葉に首を傾げるチーフ
「私のこと、好きなんですか?」
私の言葉に驚きを隠せないチーフが目の前にいた。
「当たり前だ!!じゃないとお前を抱いたりしない。」
気が付くと私の目から涙が溢れていた。
「お前、いままで俺のことなんだと思っていたわけ??」
ふぅ~とため息をつ 抱きしめてくれた。
「だって...チーフのキモチわかんなくて・・・あれ以来、私に触れなくなったし・・・」
頭の上で、またため息が聞こええた。
飽きられた...
私はそう思い顔をあげることが出来ずにうつむいた。
「ごめん。わかってくれていると思っていた。やっぱ だめだな。」
だめという言葉にビクッと反応する私
それでも彼は腕の力を緩めない。いや、一瞬だ・・・本当に一瞬緩んだがすぐにさっきより更に力をこめていた。
「伽羅、こっちを見て」
初めて、名前で呼ばれた。
止まりかけていた涙がまた溢れそうだった。
私はチーフの顔に視線を向けた。
心なしか顔が赤くなっている気がした。
「ちゃんと、言葉で伝えないといけないな。」
しばらく黙り込み再度口を開いた。
「お前のことが好きだ。さっき渡したのはとりあえずの予約だ。
伽羅、俺と付き合ってくれますか?」
箱の中身は、見ていないでもきっと中身はアレだ...
そう期待し勝手に解釈し私は首を縦に振った。
「私もチーフのこと好きです。チーフの傍にずっといたいです。」
そう言うとチーフの顔が一気に安堵したのかいままで以上に優しい笑顔になっていた。
「...しかし、この年で付き合ってください。なんていうなんて」
改めて思い出したらしく顔を真っ赤にするチーフ
「この年ってチーフいくつなんですか?」
片づけを終わらせリビングに向かうとソファーで丸くなっているチーフがいた。
「...今度、30歳」
30歳ってことは私の5コ上かぁ...
「チーフ...かわいすぎ」
いまだソファーに丸まっているチーフにいい頬に軽くキスをした。
「名前で呼んでくれないか?」
彼は、ソファーから足を下ろし私を前に立たせてこう言った。
「...健一さん」
自分でも顔が赤くなっているのがわかった。
そして目の前にはクスクス笑う彼
「私でからかって遊ぶのはやめて下さい。」
頬をぷぅーと膨らませ言った。
「俺のことをかわいいを言った罰だ。」
そして私たちは恋人同士になって初めてキスをした。
-end-
*おまけ*
「あの日なんであーなったの?」
私のいきなりの発言にビールを飲んでいた健一が吹き出した。
「まじで覚えていないわけ??」
俺はあの日酔っていないかを何度も確認して告白した。
そしたらあいつはいきなり服を脱ぎだしキスしてきた。
俺も男だ。
しかも好きな女に迫られて余裕なんてあるわけない...
「健一さん??」
黙って何も言わない健一を見て不安を隠し切れない伽羅
「なんでもないよ。
お前の記憶はないけど、無理やりやったりはしてない。」
真実を言ったら君のことだから恥ずかしいとか言ってしばらく口を聞いてもらえない気がする。
だから黙っていよう。
これからをきちんと覚えていてくれればいい。そう決めた。
健一の言葉に伽羅は笑い出した。
「そうね。健一さんは、そんなことしないわ。ねぇ、なんでこの3ヶ月間...」
何がいいたいか すぐにわかった健一は伽羅の言葉を遮った。
「お前、キスしたら固まるだろう?
だからそれ以上手を出せなかった。
それにあれはあれで結構ショックなんだよ。」
健一の言葉に黙り込む伽羅
「あれは...いくら好きな人でも触られたら緊張しちゃうでしょっ!!」
真っ赤になって答える伽羅
「伽羅今のは反則...」
健一は手に持っていたビールを目の前のテーブルに置き 伽羅をソファーに押し倒した。
「ここで?」
伽羅は抵抗せず健一を受け止めた。
「緊張するのはお前だけじゃない。
それは覚えていて。
今度は今からの出来事も覚えていてくれると嬉しいがな」
そう言いお互いを求め合った。
このとき、健一は外では絶対に伽羅にお酒を飲まさないと決意したのだった。
-完-
あとがき
最後まで お付き合いいただきありがとうございます。
なんとなく書きたくなりまして言葉にしないと伝わらないをテーマによくある設定で(お酒での出来事)を書いてみました。
ここで少し紹介
小田原 伽羅 25歳
某外資系会社勤務
なにげに仕事が出来る 時期チーフ候補
三島 健一 30歳
某外資系会社勤務 チーフ
時期 部長候補 このままいけば最年少部長になる。
この二人 きっとバカップルになるんだろうな...
どうもありがとうございました。
感想をいただければ 嬉しいです。
2007.2.16
*海藍*