被験体番号002(old maid)
『僕が死なない為に力を貸して欲しい、ユーフィ』
「とは言ったが、どうしたものか」
見た感じユーフィは天使の実験の失敗作だろう。
副作用なのか全身の毛は鳥の羽になってる、目もフクロウのようで不気味だ。
翼の形も美しくない、脚も人の物ではないな。
正直こんな状況じゃなきゃ話しかけなんてしやしない。
...化け物の部屋に閉じ込められてるという事は何かしら恐ろしい力があるはずだ。
僕と同じように。
...
「...武器は何を?」
被験体の力があるなら、僕と同じ事が出来るはず...
自分の身近な物のトランスフォーム。
物は1つに限られるが...
ここの化け物は無論、武器を奪われてる。
例外を除けば。
「...双剣、かな?上手く使えないけど」
「物は?」
「...これだよ」
そう言ってユーフィは自分の背中の羽を1枚抜いた。
僕はツイてる、つまりユーフィは武器を奪われてるいない。奪えない武器なのだ。
武器を使っているのがバレれば即死刑のルールだが...どちらにせよ今日までの命なら出し惜しむ必要もない。
「ユーフィ、僕らは2人でここから逃げ出すんだ。」
「...そんなの無理だよ」
「どうせ今日までの命、どこまでも足掻いてやるんだ。」
「そうかもしれないけど...」
「...なにか不満が?」
「...僕にできるのかな、って」
...はぁ
「僕はお前の都合に付き合うつもりはない、生きたいならやれる事をやるだけなんだ」
「...そう、だね」
しかしどうしたものか...
僕は真っ白な長方形のこの部屋見渡す。
この部屋の扉は開かない
窓を割れば警報が鳴る
ご飯が出てくる棚は狭くて通れない
壁を壊すなんかも、武器さえあれば出来なくもないが...
そもそも武器は今何処にあるんだ?
それの場所が分かれば...
あのはるか上、天井近くにある窓...
前に悪魔の被検体が割った時は恐ろしかった。
窓から出た瞬間、数分後には銃弾の雨
気が付いた時には見るも無惨な姿だった
それをどう回避するか...
そもそも死神はどうやって殺すのか...
ウイルスとはなんなのか、カード自体にウイルスが付着してるならカードの押し付けなんか出来やしない。
じゃあ死神は僕らと同じ被験体なんじゃないか?
「あ、あの...」
「ん...あぁユーフィ、どうかしたんですか?」
「ここから出て...どうするんですか?」
「...ただひたすら生きる、僕は死にたく無いだけだから」
「...そうですか」
「...理由が欲しい?」
「...出来れば」
「...幸せに成りたい、本当にそれだけ」
「...幸せ」
「ユーフィは何か望みはないのか?」
「僕は...ただ必要とされたい、不要に、なりたくない...」
「なら僕が必要とする、それじゃダメか?」
「外に出てからも?」
「...僕の側に居たいなら、好きにするといい」
「...!うん!僕、がんばる!だから...」
「また泣いて...」
過去にいったいなにがあったんだろうか、自分の存在価値が欲しいんだろうか。そんなの...
ここの部屋の住民全員に無いだろうに。
「...それじゃあ今日の夜、死神が動き出す時間に作戦をスタートする、説明するからしっかり聞くんだ」
この予測が外れてたら終わりだ...
しかし死神が被験体だとすると......
神の実験の成功作の可能性が高いかもしれないな。