カフェラテとカプチーノ
栞さんと週末に出かける約束をした次の週の金曜日。
「えええ、明日もまた栞さんとデートなの!?」
「だから、デートじゃないってば」
地元の最寄駅のそばにあるカフェ。
裏道にあってあまり人は入らないけれど、ゆったりとしたお店の雰囲気と挽きたての豆で淹れるコーヒーは、近所の人たちからは評判が高い。
そしてわたしは目の前に座っている友人と高校生の時からよくここに通っている。
「なつひはそう思ってないかもしれないけどさ?」
「きっと栞さんだってそう思ってないよ、美緒」
美緒は、わたしが中学生の時に一緒にバスケ部に入って、同じ高校に進学して、バスケ部に入部して、
ーー大学入試で一悶着あった親友。
美緒はわたしにとってとても大事な友人だ。
あの時はとても苦しかったけれど、いまは、違う大学に通っていても週に一度はこうしてお茶をするのが恒例になっている。
「えーそうかなぁ……」
「そうだよ、だから明日はただのお出かけ」
そう言ったわたしに、美緒は少し不満気な顔をする。
「……じゃあ美緒もなつひとお出かけしたい」
むすっと頬を膨らませる美緒に、思わず笑みが溢れた。
中学生の時から変わらないその子供のような表情に、わたしはいつも絆されてしまう。
「わかった、今度お出かけしよう?わたしこの間テレビで水族館の特集やってたの見て、行きたくなってたところなんだ。美緒いるか好きだったよね?」
「水族館!いるか!行きたい行きたい!」
「それじゃあ、いつなら空いてる?」
「んーとねぇ、再来週の日曜日!」
「10月の2日?」
「うん、そう!いい?」
「うん、大丈夫そうだよ」
「やった!」
美緒は嬉しそうに手帳を開いて、なーつーひ、なんて口に出しながら予定を書き込んでいた。
美緒の前には半分ほどカプチーノの入ったカップが置かれているけれど、もう冷めてしまっているのではないだろうか。このカフェにきてから、そろそろ2時間が経とうとしていた。
わたしも、頼んだカフェラテに口をつけたけれど、もうすっかり冷めてしまっていて、カップに入ったそれを全て飲み干した。