表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/12

わたしという人と彼という人3

「またなにかいいお店見つけた、とかですか?」


わたしがそう聞くなり、彼は楽しそうな表情を前面に押し出しながら、そうなんだよ、と少し大きな声を出した。


「来週の土曜日、空いてる?この間大学のそばにできたケーキ屋行きたくてさ。手頃な値段だけど美味しいってもう有名になってるらしいんだよ」


「あー!この間誰かが話してるの聞きました。あそこ美味しいらしいですね」


お互い、甘いものが大好きだった。

ケーキも、クッキーも、チョコレートも。

最近になって、栞さんが高校生の時以上にわたしを美味しいスイーツのあるお店に連れて行ってくれたり、おしゃれなカフェに案内してくれたりするようになり、2人で出かけることが多くなった。


1度だけ彼に、どうしてわたしを誘ってくれるのか、と聞いたことがある。

彼は人間関係を築くのがとても上手だ。

人懐こい笑顔と、いつでも途切れない話題と、行事の時だけでなく、自分がやりたいと思ったこと、楽しいと思ったことに対する行動力。

そんな彼を魅力的だと思った人は、男女構わず彼の周りに集まっていた。


だからこそわたしの疑問はいとも簡単にわたしの口から飛び出した。

栞さんには女友達も多いのではないかと思ったから。


その疑問を聞いて、彼は変な顔をした。

笑っている、けれど少し眉間にしわを寄せていた。


俺と一緒にケーキ食べてくれるのなつひだけなんだよね。

彼は変な顔のままそう言った。

それ以来、その話題に触れたことはない。


「なつひの好きなミルフィーユもあるってよ!」


にっ、と口角を上げて目を垂らす彼に、わたしも思わず口角が上がってしまう。


「そうなんですね!たしかその日はバイトもなかったはずですし……ご一緒してもいいですか?」


「よっしゃ、じゃあ決まり!土曜の11時に駅の改札前な!」


「わかりました」


それじゃ、と嵐のように去っていく彼の後姿を見送り、手元の小説に目を落とす。


カバンの中から手帳を取り出し、次の週の土曜日の欄に"栞さん"と書き込むと、小説と手帳をカバンの中にしまって食堂をあとにした。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ