お出かけ
耳元でなる目覚ましの音で、少しだけ頭が冴える。
あれ、わたし今日、何か予定あったっけ。
でも予定がなかったら目覚ましなんかかけない。
ということは今日は何か用事があったはずだ。
バイト?美緒とお出かけだっけ?
お出かけ……?
ぐるぐると、頭がフル回転する。
そうか。今日は、確か、
「栞さんと約束した日だ!」
寝起きなのにも関わらず、思い切り叫んでしまった。
慌ててスマホを見ると、めざましをかけた時間を大幅に過ぎていて、まるまる20分の寝坊だ。
「ああやっちゃった……早く支度しなくちゃ」
昨日は美緒と別れた後バイト先である居酒屋に向かったが、金曜日ということもあり、いつも以上にお店が混んでしまって、時間になっても仕事を切り上げることができなかった。
全てやることを終えて、確か寝たのは夜中の1時半、いや、2時だったかもしれない。
待ち合わせした駅までは、家の最寄駅から1時間。
家から最寄駅までは10分ほど。
ということは、10時少し前には家を出ておかなければならないが、
現在、8時50分。
学校に行くのではなく遊びに行くのだから、多少なりともお洒落をしていきたいし、
いつもは時間を食ってしまうから、と少ししかしないメイクも今日はもう少しでいいからしっかりとやっていきたい。
そう考えて目覚ましをセットしたはずなのに。
結局学校に行く時と同じようなかたちになってしまいそうだ。
そうは思ったけれど、洋服だけでも、といつもは履かないスカートを選ぶ。
「すーすーする……」
鏡の前でチェックをした。
履き慣れないスカートを履いたわたしは、栞さんとのお出かけは初めてではないのに少し浮かれているようで、なんだか面白く感じる。
着ていく洋服を選んで、朝食を食べて、メイクをして、
それだけで時計の針は9時40分を指した。
「行ってきます」
家族は皆、もうすでに自分の用事をしに外出したらしかった。
誰もいない家に向かってそう言うと、鍵を閉めて駅までの道を少し小走りで進む。
電車が来るまであと15分。
これから行くお店とそのお店で食べるケーキ、そして栞さんのことを思い浮かべると、少し頬が緩んだ。