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『ネメシスじゃない、エリニュスよ』か、ヌシの方も心配じゃわい。

一応、一月中旬の報道が元ネタ。

でなくとも、雪乃にしても、このめにしても子どもが、殺されるのは嫌がる面あるし。

  


 雪乃は、甘いと言うか子どもには、とても優しいんじゃと思う。

 子ども好きと言い換えてもいいかもしれんの。

 自身が、生んで育てれるか怪しいと言うのもあって、マキエの甥姪にも何かとプレゼントするぐらいにはのぅ。

 だからとでもないんじゃろうが、子どもが……特に小学校に上がる前の子どもが死ぬのを事の他嫌がるんじゃ。


 

 ――『病気や事故ならば、まだ、分かるけどね、人の手に寄るのは、すり潰したいね。』

 

 ――『子どもはね、無責任に笑って育って欲しいもの、せめて、中学生ぐらいまではね。』


 ――『子どもを亡くした家族の声ほど、聞きたくないものはないわね。

   何よりも胸に突き刺さるもの、それが子どもの枷になるのに。』


 じゃったかの、いつぞや、酒を飲みながら、ワシもおつまみを貰いながらの時じゃの。

 珍しく、焼き鳥を山のように買って来たときじゃったからか、よう覚えておる。

 基本的に、人生を終わった幽霊やそれすらをやめた連中には厳しいが、生きてる人間にその技術を向けることは無いんじゃよ。

 あれじゃの、ボクサーがリング外で拳を振るわんのに似とるのぅ。

 ……基本的に、とは言え、人生が終わった幽霊に対しても子どもには甘いが、遭遇して気づかれた場合を除いて構うことは無いんじゃ。

 全部を全部を救えるわけじゃないのを知っておるからのぅ。

 しかしのぅ、雪乃の実家は葬儀屋じゃ、イヤでも遭遇するときは遭遇する、そう言うもんじゃ。

 それでも、今回のように自分から関わるのは、十年以上のそれなりに永い付き合いでも珍しいとしかいいようないのう?


 雪乃は、今、幼子を抱いて机にいる。

 ワシもその側にいた。

 若干、涙目で。



 ワシらのような、半神半獣の稲荷狐にとっては、子どもは宝じゃのぅ。

 絶対数が多くない上に、子どもを作るより眷属を作るほうが楽じゃから、子どもはホンに少ない。

 できにくいと言うのもあるんじゃろうが、ワシと同年代、三人かそこらしか居らんもの。

 人間に分かりやすく言うたら、四万人住んでる町で、同級生が三人しか居らんわけじゃ。

 都会じゃ珍し無いんじゃろが、例えば、この名古屋じゃっても、同級生もうちいとおるじゃろ?

 ……盛大にズレたが、子どもと言うのは宝なんじゃと思う。

 尻尾を力任せにぎゅむっと掴まれようと、子どもは宝なんじゃ。

 ……泣いとらんぞ、ちょっと、痛かっただけじゃ。

 雪乃の眷族が、小さい子を連れてきたんじゃよ。

 テレビでやっておった以上は知らんのじゃが、顔に火傷に体中にあざだらけの親に虐待されて死んだ子じゃ。

 ニュースを見ていた雪乃が、ごっそり感情の無い顔になるぐらい痛ましい子じゃの。


同族の子じゃのうても、3歳と言えば、幼子の可愛い盛りじゃろうて。

 さして変わらん外見をとっておるワシとて、可愛いとは思うぞ?

 今、死んだその子は、雪乃の眷族に連れてこさせた。


 詳しい経緯は省くが、今のワシは、先ほどまで泣いていた『ゆづき』……恐らく、『柚月』……にしっぽを捕まれている。

五本ある尻尾のうち、一番初めの尻尾と五本目に生えてきたまだ細い尻尾を両手それぞれにむんずと掴まれている。

 幼児特有の遠慮のないそれじゃが、何と言うか、一度霊体エーテル化して抜けたら、ギャン泣きされてのぅ。

 捕まえられたまま、今に至る、と言うことじゃ。

 つまりは、宙吊りなうじゃな。

 アニメのラバーストラップでよくある構図じゃ


 「大変な状況みたいね、キツネちゃん!」


 呑気そうなと言うか、他人事っぽい声がした。

 年の頃、十歳に届くかそこらの幼い少女に見えるワシと同類じゃ。


 黒い髪を両耳の少しだけつまんだ可愛らしい人間と変わらぬ外見をしておる。

 幼女であるはずなのに、それ以上の成長が見出せん辺り、ワシらに近い若いカミサマじゃな。

 半人半神というところかの、こやつが人であった時などないのじゃろうが。

 白いブラウスと鮮やかな赤が綺麗なスカートをサスペンダーで吊っておる。

 この幼女が、作られた七つ目の七不思議こと、『ななせさま』。


 正確には、元・『ななせさま』と言うべきかのう?

 半年ほど前のことで、七星小学校七不思議から解放された、旧校舎倒壊と言うオマケ付きで、の。

 年齢的には、辛うじて八十歳の爺と生まれたばかりの孫程度の年齢差なんじゃが、ワシは小さいからのう。

 三歳児の柚月でも、無理すれば抱っこできるサイズじゃから、なめられておるんじゃろ。


 「ねぇ、その子は?」


 「ん、親に終わらされた子。」


 「……………そう、なの?

  お迎え、どうする?時間ある?」


 一気に室温が下がる。

 真夏じゃったら、氷の粒が落ちそうなぐらいの急激な低下。

 ななせは、元もとの生まれが、子どもの噂話から作られた神様じゃからのぅ。

 無理矢理型に当てはめるならば、子どもの守護神の荒御魂に近いのじゃろう。

 七不思議の七番目をやって居った時はモチロン、それから解放されても、子ども好きには変わりない。


 「明日の早朝、だね、とりあえず、連絡はついた。」


 「なら、一緒に遊んできてもいい?」


 「遠くまで行くなよ、後、一応、エンジュを付けて置く。

  日が暮れたら、帰って来な。」


 「うん、ありがと!!

  ねぇ、お名前教えて、お姉ちゃんはななせって言うの。」


 雪乃に抱っこされていた柚月に手を差し出して、名前を聞くななせ。

 しばらく、不思議そうに見つめた後、名乗り、二人は外へ出て行った。

 

 エンジュ、と雪乃が言った二人よりは一つ二つ年上程度の少年も後をついていく。

 ちなみに、色素の薄いネコ髪と瞳の眠そうにしている少年の姿をしている雪乃の眷族だの。


 よいせ、と、ワシは雪乃の側と言うか、前の机の上。

 雪乃の手のひらより少し大きい程度の座布団クッションに座して、見上げる形で雪乃に声を掛ける。


 「大丈夫かの、雪乃。」


 「うん?二十四時間は無理だろうけど、十九時間ぐらいまでなら維持できる。」


 「生まれ変わったら覚えておらんぞ?」


 「具体的に覚えていなくとも、思い出が救うものもある。

  ……最期の記憶が、親に見捨てら殺されるアレだと、哀しいだろう?」


 「口調がおかしいのは、指摘したほうがいいかのう?」


 「指摘しないで欲しいな。

  色々と余裕がないんだよね、今。

  最小の労力で、かつ殺さない方法での罰の式を編んでる。」


 「経費も出ないのに、ヌシはお人よしじゃのう。」


 「予定がないからやれることだね。

  時限式じゃなければ、楽なんだけども。」


 「現世うつしよの司法にも、幽世かくりよの死法にも任せない辺りも変わって居るのぅ。」


 「十王からすれば、あの子の方が重罪だ。

  あんなクズでも親は親、それより先に死ぬんだもの、殺されたとは言え。

  それにね、子どもを虐め殺すクズに対して、死なんて甘いお菓子あげる必要ないでしょう?

  司法も、そう、懲役食らっても十年か二十年がせいぜい。」


 「それで、反省するなら、最初からせんわの。

  ……思いは縛るからのぅ。」


 「そう、その間も、子どもに逆恨みして、死んだ子どもを縛る。

  嘆きも、恨みも、ベクトルが違うだけで縛るけれど、嘆きのほうがまだ救いがあるだろう。」


 つらつらと、一般人が聞けばわけが分からなくとも、引くじゃろう会話を流す。

 分かりやすい形で、雪乃が眼に見えて疲労してきていたからじゃ。

 「実体&可視化の術式を他人に掛ける」「時限式術式の作成」「お迎えとの連絡」を一辺にしているからの。

 気を紛らわせるだけの会話じゃ、殺伐としておろうともの。

 


 言うとくがかなり、無茶じゃぞ?

 盆踊りをワルツのリズムで踊るか、打ち合わせ抜きに真剣で殺陣たてをやるようなと言うか。

 並の術者なら、どれか一つでも大変じゃろう。

 特にのう、「お迎えとの連絡」はコネが無ければ、携帯番号をムチャクチャに押して一発で通じるに等しいからの。

 ……うむ、雪乃にはコネがあるのじゃよ。

 ありようが変わっても、雪乃の側に霊界は近かったからのぅ。

 身体も指して強くない上に、霊力と言うのかのそっちがワシら好みに美味しかったから、色々あったようじゃ。


 「誰が来るんじゃ?」


 「“碧蝶へきちょう”しか知らんし、信用もしてない。」

 

 「……軍人女か。」


 「本人に言ったら、可愛がられるぞ、全力で。」


 「ゴリラ女か。」


 「意味変わってない。

  イカツイが、一応、あれで女性だ。」


 碧蝶は、ワシも知り合いの所謂、“死神”じゃな。

 黒髪に碧い瞳の奴なんじゃが、最近は、服装を変えてきおっての。

 蝶モチーフの髪飾りとチョーカーまではいいとしようか。

 以前は、蒼っぽい灰色の着物姿じゃったんじゃ、ちょうど不良中学生が霊界関係の探偵ややっておる漫画の案内人っぽい感じじゃな。

 一応、上級の死神じゃったから、多少自由が利いたからじゃろうがな。

 最近と言うか、数年前に酔った雪乃のアドバイスでか、今は、違うがのう。

 和ゴスと言うのか、ワシには分からんが。

 黒地、極々暗い藍みを帯びた黒地のスタンドカラーのマーメイドラインドレスとやらに、膝丈ぐらいのオーバースカートとコルセットが和風デザインなゴスゴスしい感じじゃ。

 髪も、トイレの花子さんみたいなおかっぱと言うか、本人はボックスボブと言っておるようじゃがな。

 何と言うか、和ゴスよりも、タイトスカート軍服が似合いそうな御仁じゃな。

 それに、馬上鞭を持てば最高じゃの。

 中身は、弟分の藍蓮とふかもふの可愛いもの大好きな御仁なんじゃ、それにワシが入っておらねば可愛いとは思うんじゃ。

 

 「……他の人だと、見逃してくれなさそうだし。」


 「お主は……。」







 


 それから、ドロだらけになって帰ってきたななせと柚月と風呂に入って。


 髪の毛乾かして、ご飯を食べて、そんななんでもない“家族”ごっこをして。


 柚月は、碧蝶に連れてかれた。


 ワシが言うことでも祈ることでもないがの。


 『次の生こそ、幸せになりなさい。』


 そうとしか祈れんし願えんわのぅ、ワシは八百万の末席じゃ。


 ワシが人に手を加えるのは、許されるほどの格はないがの。


 それでも、全ての幼子になんでもない幸せがあることを望むのじゃ。






   





柚月ちゃんの両親。

生かさず殺さず、ちくちく虐めても、精神崩壊や自殺させないように術式調整してるので、一生を悔いてください。

という、後日談がある。


真面目な話、子ども生めるのに何で大切にしないのだろうね、本当。

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