「人外と言っても人を害するモノだけではないのさ。」
一応、去年ぐらいのお話。
今年の夏が時間軸なお話の前振りとも言う。
《クレピスキュール》。
異国の言葉で『黄昏』を意味するそのパワーストーンショップはあった。
双子の店主が営む店。
白木とコンクリの床に白い木壁で、店の前の半分づつをショーウィンドゥと硝子引き戸で分け、ふんだんに光を取り入れる設計。
奥、三分の一が薄暗く、アンティーク調と言うかロココ調なオーダーメイドスペースになっている。
このスペースはパーツのばら売りもしているが、表通り側とは段違いに値段が高い。
数は置いてないが、純銀に近いパーツやダイヤも置いてあるのだ。
例えば、銀色の華奢なチェーンがある。
標準的な女性なら、鎖骨に来る長さだとしよう。 それは、よく出る定番商品だ。
安くて表のほうにあるので1000円。
表であれば、高くても3000円しない。
奥の方だと、安くても8000円より。
高ければ、諭吉が二枚飛ぶ程度には高い商品だ。
或いは、丸く南瓜のように溝を細工したものだと、ローズクォーツで廉価だと5センチほどのサイズで1000円しないが、奥の方では三倍は固い。
流石に並べて無いが。
元々は、天然石の置物をメインで扱う店があり、その店主が外国で作った娘の孫が双子店主だ。
また、この店の名物にもなっているのは、その双子店主。
男女の双子で二十代半ばぐらいらしいがそれよりも若く見える二人。
弟にあたり、白茶に近い淡い色合いのふわふわの髪を肩辺りで切った髪型で、黒地に白でアゲハチョウの書かれた鼻から上を隠す仮面をいつもつけている。
白と灰色の執事のお仕着せっぽい服装で、社交的な性格。
名前を珀陽と言う。
姉にあたり、射干玉のサラサラロングヘアに、白地に黒でアゲハチョウの描かれた仮面と白いブラウスに脇に柄が入ってるものの黒いベストと踝丈のロングスカートと言う服装。
若く見えるがとても、無口で辛辣な皮肉屋な女性である。
名前を琥月という。
奥の作業机で琥月が、ブレスレットを作っていたようだ。
「あれ、姉さん、依頼入ってたっけ?」
「いえ、珀陽、依頼は入ってないわ。」
「・・・また、あれ?」
「ええ、あの子が面倒な依頼を受けるから。」
「ああ、あの子が面倒な依頼を受けるんだ。」
「あの子は、甘すぎるからね、子どももいないのに。」
「あの子は、優しいよ、子どもも相手もいないから。」
「だから、せめての守にブレスレットも悪くないだろう。」
「ああ、せめての守にね、来週から忙しくなるからね。」
「東北のあの伝説に関連した家に行くから、あの子。」
「忘れ去られた伝説だね、類話も残らない富山の山の中。」
「人の業だね。」
「人の咎だよ。」
「で、来週からのバイトどうなったかな?」
「色々と待たせていた分もあったから、それなりに。」
「前の道路、工事でその間、店開けれないけどバイトクビにして探すの大変だもの。」
「ただね、極凛会の兄さんとか混じったけど。」
「しょうがないじゃない。」
「しょうがないね。」
「堅気には手を出さないしね。」
手を止めて、ある種の鏡合わせの様なそんな会話を流す。
友人である雪乃が夏ごろに、面倒な依頼を受けるのを知り、せめてのお守りに採算度外視にして作成しているのだ。
そして、後数日で始まる工事。
1月いっぱいは、店を開けることが出来ない。
バイトを5人雇っている時点で詰んだ状態。
一ヶ月以上遊ばせている余裕も無い。
1人は高校生で、テストもあり、1月2月のシフトは無くても良いのだけれど、他はそうも行かない。
特に古参の2人は、辞められると困る。
片方は、来年卒業であるが、オ-ダーメイドブレスの指名もそれなりにあり、かつ、資格を持っている為、正社員にするかどうか提案をしているところで。。
それで、元々はほぼ気まぐれ&月単位でお待ちできる人のみの配達込みのオ-ダーメイドを消化して、その配達に応じて、バイト料に充てる気らしい。
・・・その一つで割りと大口なのが、極凛会でブレスばかりを百。
オキニスと水晶に金具のシンプルだが、オキニスに銀抜きで龍と梵字が掘ってある辺り、それ御用達っぽい。
まぁ、これも人に在らざる双子が隣人として・・・決して、同じにはなれないけれど、側にある隣人としての義務のようなものだろう。
「店長!!少しいいですか!!」
「はいはい、今行くよ。」
そうして、珀陽は、表に戻る。
あくまでも、穏やかなそんな日常。




