私は、復讐を止める気はないよ? ~だって、権利を奪ったんだから。~
予定していた話ではありません。
で、これをどうしようか?
直に言えば、私は頭を抱えていた。
11月のとある晩。
寒い日だったから、けんちんうどん・・・前の日にけんちん汁だったのだ・・・を啜りながら、もう少し七味足すか、迷っていたのだ。
その少し前に、ミネラルウォーターを簡易結界にしていたのを張り直していてマジに助かった、マジにうん。
多分、けんちんうどん台無しにしてたから。
チワワチャウチャウ秋田犬マルチーズダックスフントトイプードル、アメショーペルシャラグドール、ハリネズミにハムスター。
ペットショップに扱っていそうなラインナップだ、と言えば分かりやすいだろうか。
それが事務所の入り口から三分の二の空間をみっちり詰まっている。
半透明だからわかるが、いきなり現れて飛びかかれかけた。
言わずもがな、彼らは死んでいる・・・殺されている、それを訴えている。
「葉月、霧雨、事情説明」
「はいニャ!!」
「あの事件の被害者じゃ。
迷っておったからの。」
「ニャニャ、ゆきちんニャらニャんとかしてくれるかニャって!」
勿論、何もないのにこうならないのも解ってる。
よく視知った気配があるから、その名前を呼ぶ。
『呼ばれて飛び出るわん』な感じに出てきたのは、白足袋のキジトラの雌の猫又猫の葉月。
ちなみに、しっぽは七本ある立派。
名前は付けたわけじゃなく、元々・・・昔呼ばれていた名前だそうだ。
静々と出てきたもう片方は、キツネミミとしっぽがついた五歳ぐらいの金髪青目の山伏姿のおいなり様だ。
一応、しっぽは五本だが、社無しのおいなり様で付き合いは葉月より長い。
二人とも、私の眷属ではないが、さりとて敵対しているわけではない。
霧雨の言葉で、私は無言でケータイの電話を繋ぐ。
ワンコールするかしないかに相手は出た。
『もしもし、どうしたの?』
「ペットショップのあの事件、似たようなことやってる連中含めて、調べれる?」
『依頼?』
「死者からのね。」
『・・・・・・』
「報酬は言い値で良い。」
『クリスマスイブに俺持ちで1日デートしてディナーに付き合って欲しいな、開けとくとお見合い入れられそうだし。』
「・・・それで良いのか?」
『ユキ先輩さんだからだよ』
掛けたのは、夜科拓真。
稀代のかは知らないが、私が知る限り、かなりハイエンドなKとCの両面を持つクラッカーだ。
伯父筋の情報屋にも、畑違いなのに名前を知られていた。
少し迷ったが苦笑して返す。
「着て行く可愛らしい洋服すらないぞ?」
『それもプレゼントするからさ。』
「わかった。どれくらいかかる?」
『メインのは終わったから送った。
類友のは、十分後ぐらいから順次かな。』
「早いな」
『ユキ先輩の依頼だし、別件で調べてたから。
そっちだと、器物破損程度で猶予つくでしょ?』
「なるほど、ね。
ありがとう、活用するわ。」
『じゃね。』
そうして、私はメールの情報に目を通す。
机の引き出しから、水に溶ける和紙の束を取り出して、四分割して筆ペンで飛空式神用術式と目標物の居場所を書き付ける。
それをかろうじて鳥に見える形に切り取った。
「『さあ、導け、権利奪いし愚か者へ』」
声に『力』を込めて、まずは報道された事件の『命じた』『店長格』へ誘導する。
その際に、「生かさず殺さず」を徹底するように言う。
・・・殺してしまっては、ダメでしょ?
それに実行したバイト達より店長格でしょう。
順次、送られてくる情報で飛空式神を作成する。
三十分もする頃には、葉月と霧雨以外、居なくなっていた。
「ニャー、ゆきちん、同族にも厳しいニャア?」
「私は復讐自体は、止める気はないよ?」
「主は、同族には甘かろに。」
「うん、あまいね。
だけど、権利を奪ったなら、その負債を返済する義務はあるだろう?ってこと。」
「ニャア・・・」
正直に言おう。
私は、かなりの動物好きだ。
実家の家業の関係で、犬猫は買えなかったが、猫だまりになってた近所の寺にニボシ握って通ったり、毎年買うカレンダーは可愛らしい動物だったりするし。
中学生~高校生の間は、ハムスターを飼っていた。
高校二年生の秋の中間一日目に帰ると当時飼っていたそのジャンガリアンハムスターのメルが冷たくなっていたのを見つけて、翌日の理数系教科を赤点取りかけたぐらいには、ペットには入れ込むタイプだ。
一応、その時点で二年半近く生きていたから、薄々覚悟はしていたが、ショックはショックだった。
その前のジャガハムのファンは、脱走して行方不明(多分、不法侵入猫に食われた)だった。
結局、それから現在は、知り合いの家やこの商店街に居着く半野良猫にをもふるぐらいで、後は写真でガマンしてる。 別れは楽しくないからね。
動物好きを差し引いても、“ペット”と言うのは人間のエゴだと私は思う。
だから、『ご主人様』の元で『幸せ』になるのが、『最低限』の『権利』だ。
それを奪ったのなら、ね。
奪ったのなら、報いを受けるべきだろう。
「・・・どうした?」
「にゃー、・・・」
葉月の視線が冷めてしまった冷凍から揚げを見つつ、釘付けだ。
ちなみに、何種類かをかき集めた為、ベーシックな生姜醤油から、辛味噌味、柚子醤油味などなど多種多彩だ。
匂いとかの関係で、揚げ物は冷凍にしている。
・・・普段も、そうそう、揚げ物をするわけではないが、時々、無性に甘くないコロッケが食べたくなるのだ。
スーパーなんかの惣菜コロッケは、甘い。
ほとんど、ジャガイモに少しのひき肉のせいかもしれないけど、それ以上に甘い。
だから、ジャーマンポテトのベーコン引いて、挽き肉足した感じでコロッケを作る、もちろん、胡椒はたっぷり。
皿をずらしても、視線はから揚げを追っている。
「・・・食べる?ついでに、酒に付き合え。」
「ゆきちん話せるニャ!」
先に返事したのは、葉月だったが霧雨も乗ってきていた。
ちなみに、貰った『信玄』という日本酒四本とも飲まれたのは別の話。
そして、台所に茶碗に盛られたご飯に箸が刺さって置かれ、日本酒も一杯置いたのもまた別の話だ。
いや、つい、とあるニュース見て、飲み終わってたけどファンタの缶ペットを握り潰したぐらいには怒り覚えたので、うん。
一応、葉月と霧雨は、眷属ではないですが友人みたいなもんです。
以下スペック。
葉月
最低でも、七十年は生きているらしいキジトラ白足袋猫の猫又猫。
その霊力は尻尾の数で察すべし。
基本的に猫らしい猫。
霧雨
九百歳ぐらいで、諸事情で雪乃についている宿無し稲荷。
人間の食文化にきょうみがあるらしい。




