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ラーゼリオンの漂流騎士※未完※  作者: きたや ごう
4/4

「界渡りの魔法騎士」

「ちょっと、アンタ酔っ払い? こんなとこで寝ないでよ。警察呼ぶわよ?」


雌のゴブリン……じゃなかった。

やたら太めの中年女性が、ゴミの集積所で寝ている俺を見下ろして、心底不愉快そうな声をかけた。


「……オバサンこそ、こんな夜中にゴミ出しして。マナー違反じゃないですか」


立ち上がって俺は言葉を返す。


「なっ……この場所はいいのよ! みんな夜に出してるでしょ!? だいたいアンタこそ何? 公共の場所で酔いつぶれて寝て、迷惑よ! 不審者よ不審者? 臭い息吐かないで」


ぎゃあぎゃあとオバサンは喚き続けるが、そんなことはどうでもいい。


ふはっ……

ふははははっ……

あーっはっはっはっ……


「何よ急に、気持ち悪い! クスリ? 麻薬? 覚醒剤?」


そりゃああ、そうですよ!

夢ですよ!

当たり前じゃないですか!


酔っぱらって酔い潰れて、ゴミ溜めで倒れて寝て、三十オーバーが見るにはあまりにも恥ずかしい夢を見ちゃったわけですよ!

いやー、俺もなかなか、まだまだ心は中二ですなあ!


「アンタ、絶対変よ! なによその格好! 変な首輪して」


そう。この首輪ね、夢の中でビキニアーマーに貰ったんだよ。


……え?


「ふむ。〈侵略者〉を倒して、結界が解けたな」


女の声に振り返る。

ボンキュッボンの金髪碧眼美少女ビキニアーマーがマントを翻して舞い降りていた。


「ぎゃああ」

「なんだ、失礼な男だな」


俺は思わず悲鳴をあげる。


「きゃああ! 痴女!」

「む……」


オバサンも的確な感想とともに悲鳴をあげた。


「言葉はわからんが、こちらのご婦人も失礼だな」


ビキニアーマーは拗ねた表情を浮かべる。

顔だけ見るとホント可愛いな。


「そんな格好で、痴女呼ばわりされんのは当たり前だ」

「痴女? 今このご婦人は痴女と言ったのか? 失礼な。私は騎士だ」


はいはい。中二病はいいから。


「ついでに中二病とやらでもない。歳は確かに15だが、学校などには行っていない。戦いの日々だったからな」


そうかい、そうかい。

そういう設定かい。


……え?


「今、俺、声に出してた?」

「ああ……なるほど。その翻訳魔法の首輪はな、少々感度が良すぎてな」


ビキニアーマーは指でこめかみをコリコリと掻きながら言う。


「声に出すつもりのない思念も、表層に言語として現れると、翻訳して相手に伝えてしまうんだ」


なんですとぉっ!


「なんですと。そうそう。そんな感じに」


まさか……


「夢じゃないっていうのか。あの、ケルベロスも」

「ああ。奴は界を渡ってここを侵略してきたモンスターだ。そして私は、奴等を駆逐する界渡りの魔法騎士。名を……」


信じない。信じない。信じない。

ああ、確かに俺は人生に嫌気がさしていたさ。

つらいだけの仕事。嫌な上司。面倒くさい取引先。彼女もなく友達も少ない。

楽しみといったら、漫画、アニメ、ゲーム……。

それも徹底してハマることはできない。

何故なら貧乏暇なしワーキングプア。金も時間もないからだ。


だから、ああ、そうだ。

異世界に召喚されねーかなあ。

そこでチートで始めっから最強で、俺TUEEEして楽してウキウキな冒険ハッピーライフを送れねーかなーって。

そう思ってたさ。

だけど。


「おい。私の話を聞け」


異世界の方からこっち来てくれとは思ってなかった。

全部ご破算、始めっからやり直し。

しかも強くてニューゲームじゃないんだったら、むしろ迷惑だ。


「聞けと言っている」


明日も早朝出勤なんだ。

めんどくせえ会議があって、なんの準備もできてねーんだ。


だから、こんなのは夢だ。

翻訳魔法?

はああん?


だったら確めてやる。

そしてこのコスプレ女に、お前はただの痴女で、ただの可愛いだけの手品師だか催眠術師で、俺をからかって遊んでいるだけだと認めさせてやる。


この、この、



変態ビキニアーマーがぁぁぁ!!!



「誰が変態ビキニアーマーだああっ!!」



ビキニアーマーは腰の剣を抜き、柄で俺の頭をぶん殴った。


「私の名前はフレイア・ラーゼ・シルフィード! ラーゼリオン皇国から命ぜられ〈侵略者〉を殲滅する、界渡りの魔法騎士だ!!」


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